第214話 当たり前の二人
~~作者前書き~~
ついに!!小日向さんお披露目!
表紙絵はもう少しお待ちを、といった感じなのですが、メロンブックスさんから
有償特典のタペストリーが出るため、そちらの画像が公開されております~!
私のツイッターか、メロンブックスさんのページでご確認くださいませ!
めちゃくちゃ可愛いぞ!!
マフラーを外したくない小日向パワーにより、岡島先生に『隣の席で授業を受けなさい』と言われたのだけど、彼女は授業が終わってからもその机の位置を動かそうとはしなかった。俺が「戻さないと、次の授業の先生に怒られるぞ」と注意しても、彼女はフルフルと首を横にふり、机にしがみついて動かない意思を周囲に示す。
もう彼女がこうなってしまえば、俺には動かすことは不可能。周囲に人がいなかったらまだどうにかなったかもしれないが、彼女の味方が大多数のこの教室では、俺の嘆願は彼女の我儘に跳ねのけられてしまう。
「まったく……先生に注意されたら、ちゃんと言うこと聞くんだぞ?」
「…………(コクコク)」
俺の言葉に小日向はいつものように二度頷くと、スマホをポチポチ。すぐ隣で操作しているものだから、入力中の画面もしっかり見ることができる。指がちっちゃくて細いのに、動きは俊敏。さすがに手慣れたものだなぁ。
『先生が良いって言った』
「それは岡先だけだろ?」
『次の先生も、たぶん許してくれる』
どうだろうなぁ……。
難しいところだけど、俺も小日向によりそう結果になってしまいそうな気がする。
普通ならこの問題で『難しい』なんてことはないのだろうけど、なんといっても小日向のことだからな。
普通の結果は待っていまい。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
昼休みがやってきました。
小日向の願望空しく、俺と小日向に巻かれたマフラーはちょこちょこ外している。しかしその理由は先生に注意されたからではなく、お互いがトイレにいくために仕方なくであり、結局誰も小日向のことを注意する先生はいなかった。
まぁ真面目に授業を受けていなかったらさすがに先生も注意をしたのだろうけど、俺が小日向がお絵かきするたびに「授業を聞きなさい」と口にするものだから、きっといつもより小日向の学習は捗っていたと思う。
俺も小日向にちょこちょこ教えながら授業を受けていたからか、いつもよりはっきりと授業内容を記憶できた。その点と、小日向が大変満足そうであるということだけを見れば、小日向の隣で授業を受けるも悪くないと思える。
しかし、しかしだ。
「もう景一も冴島を教室に呼んで隣で受けろよ……それかお前があっちに行け」
そんな行動をとるのが自分たちだけであるという状況が、俺を苦しめる。特別扱いされており、優遇されている現状に俺はまだ慣れていないのだ。
「あははっ! 授業内容が違うから無理だよ~。三年生になって、みんな同じクラスになれたらありうるかも?」
「いや、やめてくれ野乃。俺が恥ずかしさで死ぬ」
「その恥ずかしい行為を行っている俺の目の前でそれ言う?」
「智樹と小日向はいいんだよ。もう当たり前になってるから」
「良くないよなぁ!?」
いったいどういう学校生活を送れば教室内でマフラーをお互いに巻きあって過ごしているのが当たり前になってしまうのか……フシギダネ。
さすがに今は食事中だからマフラーは外させてもらっているが、おそらくお互い食事を終えたらまた巻くことになるのだろう。もうこれに関しては小日向の気が済むまで継続するしかなさそうだ。なんだかんだ、やっぱり俺も小日向には甘いよな。
「それよりも、イブはどうすんの? 何時ぐらいから【憩い】に集合する?」
小日向があーんとしてきたウインナーを口に入れて咀嚼していると、景一が話題を変えて話しかけてくる。
「いちおう夕方から夜にかけて――って話しだったから、店長には四時から行くって話してるよ。それまではそれぞれで過ごすってことでいいんじゃないか?」
たぶん夜は七時か八時ごろに解散って感じだろう。
その後、景一たちがどうするのかは聞いていないけど、もしそのまま帰宅ってことになったら景一たちが二人で過ごす時間が無くなってしまうから、夕方までは敢えて一緒に行動しないことにした。
俺の提案に、景一と冴島はそれぞれ「了解」とか「オッケー」と返事をして、小日向はふすふす鼻を鳴らしながら頷く。
『私たちはお泊まり』
「わかってるよ。一回着替えとか準備するためにお前の家に寄ってから行こうな」
そう言うと、彼女は親指と人差し指で丸を作りオッケーのサインをする。それから、その小さな丸の穴を覗いて俺の目を見てきた。見られたので、俺も顔を近づけて覗き返してみる。
吐息のかかりそうな至近距離だったが、俺はそれよりも小日向の楽しそうでキラキラした目に気をとられていた。
だから、傍から見たら俺たちがいまどういう状況なのか、客観的に理解できていなかった。
「お、おおう……智樹、それはさすがに二人きりの時にするべきじゃないか?」
「え? キスしちゃう? キスしちゃう!?」
そんな二人の声が聞こえて初めて、俺は顔を真っ赤に染め上げるのだった。
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