第202話 SS 会長『全、KCC会員に告ぐ!』


~~作者前書き~~


本編の流れぶったぎりのスペシャルショートストーリーです。

メタな感じですが、お楽しみいただけると幸いです。

それではKCCの皆さま――――


 お ま た せ


~~~~~~~~~




『二年C組杉野智樹くん、小日向明日香さん、放課後生徒会室へお越しください。繰り返します、二年C組――』


「うっそだろおい……」


 六限目の授業が終わって教室の掃き掃除をしていたところ、校内放送で俺と小日向の名前が呼ばれてしまった。しかも行き先は小日向たんちゅきちゅきクラブ――通称KCCの拠点であろう生徒会室である。生徒指導室や職員室よりも行きたくない。


 黒板消しをパタパタとはたいていた小日向もスピーカーから聞こえてきた言葉に気付いたようで、キョトンとした表情を浮かべてから、こちらにテコテコと歩いてきた。


 相変わらずの可愛い動きで歩く小日向が俺の元に辿りつくよりも先に、俺と同じく教室の掃き掃除をしていた景一が声を掛けてくる。


「これは何の呼び出し? 心当たりはあるの?」


「まったくわからん……俺や小日向に直接関わらないようにしているみたいだから、今回みたいなのは珍しいんだよな。なんだか嫌な予感がする……」


「悪い人たちじゃないんだけどな……」


「害があるかどうかは別問題だろ」


 景一にそう答えたのち、俺の元にやってきた小日向を見てみると彼女も不思議そうに首を傾げていた。どうやら小日向も心当たりはないらしい。

 ちなみに教室にいる他のクラスメイトも、俺たちと同じように首を傾げていた。



☆ ☆ ☆ ☆ ☆



「急に呼び出してすまない、杉野二年、小日向た――小日向二年」


 放課後。

 生徒会室に訪れると、前回来たときと同様、斑鳩生徒会長と白木副会長がいた。

 そしてこれまた前回同様、会長は部屋の中央に置かれているデスクの奥に座っていて、副会長はホワイトボードの前で背筋をピンと伸ばして立っている。


 長机の前に置いてあるパイプ椅子に腰かけるよう促されたので、俺と小日向は言われた通りに座った。彼女たちの鼻に嵌まっている赤い詰め物に関してはいつものことなので無視することにする。


「とくに用事があったわけではないですけど、友人たちを待たせているので手短にお願いしますね」


「承知した」


 会長は俺の言葉にそう返事をすると、椅子から立ち上がって白木副会長に目配せをした。会長の視線を受け取った副会長は、コクリと頷いたのち、くるりと真っ白なホワイトボードを回転させる。


 そこには、目を疑うような文字列がでかでかと書かれており、折り紙やシールなど、カラフルな飾りつけが過剰なほどに施されていた。小学生の誕生日会かよ。


「……意味がわからないんですけど」


 ホワイトボードに書いてあったのは、『祝、書籍化決定』という文字。

 もしかしてこの人、小説でも書いていたのだろうか? しかしそれをわざわざ俺と小日向に報告する意味がわからない。


「杉野二年と小日向二年によるラブコメ小説を出版することになった」


「本当に意味が分からないんですけど!? あんたら勝手にそんなことやってたのかよ!」


 はいそこに座ってるうさちゃん! 前のめりになってウキウキしない! 君は俺と一緒に抗議する立場の人間なんだからな! 怖いもの見たさでちょっと読んでみたいけども!


 いやまてよ……冷静に考えると、さすがに本屋さんに並ぶってわけじゃないだろう。きっと身内だけで回し読みするような冊子的なやつのはず。それでも十分恥ずかしいけども。


「ちなみに出版社はKADOKAWAだ」


「めちゃくちゃ大手だった!? 冗談ですよね!? 季節外れのエイプリルフールとかですよね!?」


「レーベルはスニーカー文庫だ」


「より具体的になってきてる!? それ、本気で言ってます!? というかなんでそんな大事になっちゃったんですか!?」


 全くもって意味が分からないし、話が大きすぎて現実感がなさすぎる。

 つまり会長が言っていることを真に受けるのであれば、俺と小日向の――ラ、ラブコメ小説が、スニーカー文庫さんから出版されるということ。うん、本当に意味がわからん。


「我々KC――コホン、私たちの仲間の一人がそこで働いていてな、彼女――編集S氏の協力によって書籍化が決まった。まぁ杉野二年や小日向二年に直接の害はないから安心してくれ、本の販売は別の世界線で行われる」


 …………おぅ。


 このKCC会長、とうとうやばいこと言い出したぞ……なんだよ『別の世界線』って。

 もしかして鼻血の噴出のしすぎで頭になんらかの問題が発生してしまい、夢と現実が良く分からなくなってしまっているのだろうか? だとしたら、もう少し優しくしてあげたほうがいいのかもしれない。なんだか強くツッコみをしてしまって申し訳なくなってきたぞ。


 まぁ冷静に考えると、そんなことありえないもんな。小日向と俺の小説が本屋に並ぶなんてこと。


「あはは……そうですか。まぁ、俺たちに害がないんであれば好きなようにどうぞ。小日向もそれでいい?」


 俺がそう問いかけると、小日向は返事をすることなくジッと会長の目を見ていた。

崇める神にガン見された会長は、「うっ」と苦し気に呻いたのち、額に手をあて蹲り、どこからか取りだした酸素スプレーを口に当てた。過呼吸にでもなってんのかこの人。


「こ、小日向二年が欲しいのなら、もちろん本は準備しよう。小日向二年も杉野二年も、可愛くカッコよく描かれているぞ」


「…………(コクコク!)」


「「うぼぅあっ」」


 小日向の笑顔の頷きによって、会長はもちろん、今日一言も発していなかった白木副会長も仲良く血だまりに沈んだ。


 さて、さっさと養護教諭を呼んで俺たちは帰宅することにしようか。

 ここであった会話は全て、忘れてしまっても問題はないだろう。




~~作者あとがき~~


というわけで、小日向さんが角川スニーカー文庫様で書籍化します!マジです!


ご感想で「小日向さんの写真を俺にもください」という声が多数ありましたが、皆様の応援のおかげでその願い、叶えることができました! あなたのスマホに、パソコンに、小日向さんがついに写ります!


続報は近況報告やあとがきなどで流す予定ですが、私のツイッターでも随時告知しようと思います~。


まだ作品フォローやレビューをしていないという方がいらっしゃいましたら、この機会に是非応援のほどよろしくお願いいたします!


KCCの皆さん、ありがとう!!

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