第200話 深夜テンション
祝!200話!(∩´∀`)∩
「景一、着替えは持ってきてる?」
「ない! 通学バッグとプレゼント持ってくるだけで荷物大量だったからさ~。というわけでジャージかスウェットを貸してくださいお願いします」
「いいぞ。いますぐコンビニでジュース買って来てくれたらな」
「俺いまパンイチなんですけど!? 凍えて死んじゃう!」
「寒さより露出のほうを心配しろバカ」
男二人になって気分も落ち着いてきたので、今日の出来事を振り返り、小日向関連で弄られた腹いせに景一をからかわせてもらった。スウェットのレンタル代ということにしておこうか。
しかし景一と二人で泊まるのは随分と久しぶりだな。小日向と遊ぶようになってから、あまり男同士の泊まりは無くなっていたから、懐かしい気分になる。
景一にスウェットを着てもらって、だらだらと喋りながら歯磨きやら景一の分の布団を敷いたりしていたら、時刻はあっという間に夜の十一時半。明日の授業は寝てしまわないように踏ん張らないといけないなぁ。あと、どこかの誰かさんがサボらないように後ろから見張っておかねば。
「女子たちはまだ起きてるのかね?」
オレンジの微かな明かりが部屋を照らすなか、あくび混じりに景一が聞いてきた。小日向の『ふぇー』と比べると随分と野太くて可愛くない声である。
そういえば小日向のあくびって聞いたことないなぁ。いつもより就寝時間が遅いのはたしかだし、明日聞けることを祈っておこう。絶対可愛い。
「さぁ……小日向は基本夜の十時あたりには寝るからな、さすがにもう寝てるんじゃないか? 冴島はいつもどのぐらい?」
「野乃はだいたい十一時ぐらいかなぁ。でも普段ないお泊まりなんだし、夜更かししてそうじゃね?」
俺の視線は天井を向いているので景一の表情は見えないけれど、たぶん楽しそうな顔してるんだろうなぁ。声のテンションが高めだ。
「智樹、小日向にチャットしないの? だいたい夜はチャットしてるって言ってなかった?」
「別に毎日ってわけじゃないから」
ウキウキで聞いてくる景一に、俺は対照的な声音で対応する。
小日向が俺の家に泊まる日はしていないからな。嘘はついていないぞ。
「じゃあ送ってみようぜ!」
「『じゃあ』ってなんだよ。というかなんだその修学旅行の恋バナみたいなテンションは。そもそも、そういう『チャット送ってみよう』っていうのは、普段送らないからこそ楽しめるもんじゃないのか?」
「智樹が小日向のチャットを見てどういう反応してるのか見てみたいから」
ほほう……しかしお前もその提案をしたからには、対岸の火事じゃ済まされんぞ。
「オーケー。景一がその気ならお前も冴島に送れよ? 言っておくが、俺は普段からあいつに嫌というほど鍛えられているんだからな? 小日向にお願いして、冴島のパジャマ姿を景一のスマホに送って貰うからな?」
「じゃあ表情変えたら負けにするか!」
「罰ゲームはもちろん――」
「「特定食の奢りで」」
俺たちが寝落ちしてしまっては元も子もないので、まず部屋の明かりをつけた。
それから小日向に「起きてる?」とチャットを送信してみたところ、すぐに「起きてる お目めパッチリ お姉ちゃんだから」と相変わらずの姉ムーブで明日起きれるのか心配になりそうなチャットが飛んできてしまい、早くも苦笑してしまったが、まだ試合前なのでノーカウント。
今回の勝負では、一切の表情の変化は禁止。
クスリと笑ってもいけないし、ムッとしてもいけないし、もちろんニヤついてもいけない。
最近になって、俺が無意識に小日向へ微笑みを向けていることを知ったし、なかなか難しい勝負になりそうである。
じゃんけんで景一が先手に決まったので、さっそく小日向にお願いして、冴島のパジャマ姿を景一に送ってくれないかと頼んでみた。
「小日向からオッケーのウサギスタンプがきたぞ。景一のスマホに通知が来たらそこから表情の変化は禁止だからな」
「ははは、たしかに野乃のパジャマ姿は見たことないけど、それぐらい我慢できらぁ!」
べらんめぇ口調で強がっているけれど、いつもの余裕のある態度ではなくて、明らかにそわそわしてスマホに視線を向けているのが面白い。もうこれを見れただけでも俺の負けでいいかなと思えるぐらいには珍しい光景だ。
そしてそれから一分も経たずに、ピロンと景一のスマホが鳴る。俺は景一がスマホを手に取る様子を、密かに動画で撮影。まぁ内密に小日向経由で冴島から依頼されたからなのだけども。
画面を見た景一は、無言。頬も動かしていないし、眉もピクリとも動かしていない。
だけど、残念だったな。
「――く、くくっ。景一、めちゃくちゃ顔赤くなってるぞ」
暖房のせいだからと本人は否定しているが、しっかりと顔色の変化は動画に収まっている。いったいどんな写真が送られてきたのやら。
さて、俺は景一が悶えている隙にこの動画をさっさと冴島に送ってあげるとしようか。
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