キミがスキ。

篠宮玲

キミがスキ。

「はぁ~、今日も瑛音 えいと先輩カッコイイ~」

この日、姫花 ひめかは親友の夏希 なつきと共に瑛音 えいとのバスケットボールの試合を見に来ていた

「瑛音先輩、来週卒業式があるのに、試合に出るなんてすごいね」

夏希が瑛音を見ながら姫花に言うと

「うん…なんか、試合に出るはずだった2年生がケガをしたから、助っ人にどうしてもって頼まれたらしいよ」

姫花もコート内でパスを受け取った瑛音を見ながら答えた

「ふ〜ん。姫花、住んでる所、近所なんだよね?」

「う…うん」

「良いなぁ~。あんなにカッコイイ人と幼なじみなんて。羨ましい。」

夏希は、私と瑛音先輩…いや、いと君が幼なじみだと知っている数少ない親友だ

姫花は瑛音の事を小さい頃から、いと君と呼んでいた


「姫花は瑛音先輩の事、どう思ってるの?」

姫花は夏希に問われて

「えっ?どうって?」

と聞き返した

「好き…?とか?」

夏希がニヤニヤしながら、姫花に聞いた

「はっ?!ないない!だって幼なじみだよ!小さい頃から一緒にいるお兄ちゃんみたいな感じだもん。」

姫花はかぶりを振りながら、答えると

「ふ~ん、、そうなんだぁ…」

夏希が残念そうに言った

「なぁに?その疑ってる感じは…?」

「いや…正直じゃないなぁ…って」

「だから…」

その時、パスを回された瑛音がゴールを決めた

「「キャー!!瑛音先輩!!」」

瑛音がフッと振り向くと姫花を見付けて、手を振った

「キャー!!瑛音先輩が手を振ってくれた!今の絶対、私にだよね?!」

姫花の前で盛り上がっているのは、瑛音のファンの子達だ。校内でもイケメンで有名な瑛音にはファンがいるのだ

「姫花…今のは明らかに姫花にだよ?」

夏希が姫花の耳元で囁いた

「…だよね。」

「瑛音先輩は、やっぱり姫花の事が好きなんじゃないの?」

夏希がなおも呟く

「瑛音先輩って、スポーツも出来て、勉強も出来て…まさに!二刀流っていうの?すごく素敵だよね 」

「いや…そうなんだけど…」

「ねぇ、姫花。瑛音先輩が卒業する前に告白しちゃいなよ!」

夏希が言うと、瑛音を見つめていた姫花が

「えっ?あっ…うん。(話聞いてなかった…)」

と夏希の方を振り向く

「良し!応援してるね!」

話の内容を理解していない姫花は「ん?」という顔をしていると

「姫花が瑛音先輩の彼女かぁ。憧れる〜」

と笑いながら言った

「報告楽しみにしてるね!」

姫花は、なおも「ん?」という顔で

「えっ?ちょっ…彼女って…」

夏希に聞き返そうとした時

"ピーッ"

試合終了のホイッスルの音がしたのだった



---------------



試合から数日が経ち、瑛音の卒業式の日が近付いてきた

「ひ〜めか!」

夏希がニヤニヤしながら姫花を呼んだ

「夏希〜!どうしたの?」

姫花か不思議そうな顔で答えた

「どうしたの?じゃないよ〜!いつ告白するの?」

姫花は、きょとんとした顔で夏希を見ると

「え〜?!姫花、瑛音先輩に告白するって言ってたじゃん!」

「告白?何の話?」

と夏希に聞くと、"も〜!"と言いながら、試合の時の話を"もう一度"丁寧に姫花に教えた

姫花は夏希の話に、ポカーンだった


その時、クラスの子達がザワつき始めた

「姫花いる?」

瑛音が姫花の教室を覗きながら言うと

「姫花!ほらっ!彼氏が来たよ!」

と夏希が姫花の耳元で呟きながら、姫花の背中をポンッと押した

「もう〜!そんなんじゃないよ〜」

姫花がそう言いながら、瑛音の元へ行くと

「姫花、ちょっと来て!」

と瑛音が姫花の手を取って廊下歩き出した

"キャー"

と、ところどころで声が聞こえたが瑛音にはそんな事は関係なかった

やがて、人気のない音楽室へ姫花を連れてくると姫花の手を離し

「…あのさ…」

と振り返ったのと同時に

「…いと君」

姫花が呟いた

「あっ…突然こんな所に連れて来てごめん」

瑛音が言うと

「…ううん。いと君だから、嫌じゃなかったよ」

と姫花が笑顔で答えた


「…」

「…」

しばしの沈黙の後、瑛音は姫花に近付き手を取ると…

「いと君?」

姫花はビックリして、自分より背が高い瑛音の顔を見上げた

瑛音は姫花の目を見つめて

「姫花、オレ…お前が好きだ」

と告げた

「えっ?!」

姫花は

(ずっと幼なじみだった…いと君が私を好きって言ったの?)

と頭の中で自分自身に問いかけた

「…姫花?」

姫花が無言になった事が不安になり、瑛音が声をかける


「…オレさ、先生とかクラスメイトとか…勉強もスポーツも出来て、二刀流だとか言われるけど、オレ…そんなに器用な人間じゃないから…」

瑛音が独り言のように語り始めた

「小さい頃からずっと姫花が好きで、以前テストで上位になった時、お前が…」


-----回想-----


瑛音がテストで上位になった事を姫花に伝えると…

姫花は瑛音の手を取って

「いと君、スゴいね!本当にスゴい!いと君、天才だよ!憧れちゃう。私の自慢の幼なじみだよ!」

と自分の事のようにスゴく喜んだのだった


----------


「あの時、姫花が自分の事のように喜んでくれたのが、スゴく嬉しくて…オレが頑張れば姫花が喜んでくれるって思って…ってごめん」

そこまで話して、姫花の手を離した瑛音は後ろを向いた

「…いと君?」

姫花が瑛音の名前を呼ぶと

「姫花…ごめん。今の忘れて。オレ、お前の気持ち何も考えてなかったな」

(いと君…)

と音楽室を出ていこうとする、瑛音の背中に姫花が

「瑛音!」

と叫びながら

"ドンッ"

と抱きついた

「姫花?」

瑛音が振り返りながら呼ぶと

「私も瑛音が好き。大好きだよ!」

と瑛音に抱きつきながら答えた

「!!本当に?」

瑛音が信じられないというふうに、姫花を見ると

少し背の高い瑛音の頬に

"チュッ"

と姫花がキスをした

「姫花…オレも大好きだ」

瑛音も姫花を抱きしめたのだった


---------------


迎えた卒業式

「姫花!でっ、先輩とどうなったの?」

夏希が興味津々に聞いてきた

「ふふ…秘密だよ~」

「なにそれ~」

と笑いながら話していると

「姫花!」

と呼ぶ声がした

「瑛音先輩!」

姫花はみんなの前では、瑛音先輩と呼んでいた

瑛音の前まで行くと

「卒業おめでとうございます!」

と笑顔で伝えた

「ありがとう!姫花、これやるよ!」

そう言って瑛音は自分のネクタイを取ると姫花に渡した

「お前、明日からこれをしろよ!」

瑛音と姫花が話していると、少し離れた所から見ていた夏希が

「え~やっぱり、そういう事だったんだね~」

へ~!とニヤニヤしながら近付いてきた

「瑛音先輩!姫花!おめでとうございます!」

夏希が2人に笑顔で伝えたのだった


「あっ!瑛音先輩はどちらの大学に行かれるのですか?」

夏希が聞くと

「オレは、ここの大学だよ!」

それを聞いた姫花が

「え~!!!」

と絶叫した

「あれ?オレ、言わなかったっけ?オレは器用じゃないから、勉強とスポーツの二刀流はムリだって。だから、勉強と姫花を選んだ」

瑛音がニコニコしながら姫花に言うと

「そんなの聞いてないです。私はてっきり先輩は遠くの大学に行くと思って…」

照れながら…でも、泣きそうな声で瑛音に伝えた

「ごめん…姫花と一緒に居たかったから…来年、待ってるから!お前が大学に来るの…」

そう言って姫花を抱きしめた

「…はい。必ず合格しますから!」

姫花が瑛音の耳元で呟くと

「当たり前だろ…オレが勉強を教えるんだから…」

瑛音も姫花の耳元で呟いたのだった

END

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