第20話 《聖リエック女学院》のボス魔物(1)
----スキル《テセウスの船》。
それはダブルエムが持っているスキルであり、その効果は代替交換。
自分の身体の欠如を、別の物によって補うというスキルである。
そんな彼女は花子の弓矢を頭に受け、三言の蹴りで身体の真ん中に穴を開けられようとも、普通に立っていた。
「いや、だから私を倒せる訳ないって #諦めろよね」
頭に矢、身体の真ん中に穴を開けられている、まさに重症という感じのダブルエムは、この場の誰よりも冷静にそう口にする。
対して、無傷で、どころか攻撃されてないはずの花子と三言の2人は、身体が重く、限界を感じ始めていた。
「かっ、身体が……」
「なんじゃん、これ」
彼女達はいつものダンジョンのように、それぞれの役割を全うしていた。
花子は弓を射る、そして三言は自分の歌の力で攻撃力を上げての攻撃。
普段通りの、ダンジョンでの行動。
しかしながら、いつもよりも身体の調子が悪い。
一発一発の攻撃がいつもより弱く、なおかつ体力の減りが大きい。
「#当然です 本当に、勝てるとお思いで?」
と、ダブルエムはガシッと、
「ここはダンジョンであって、ダンジョンではない。#ダンジョンに似た何か ですね。
言うなれば、生徒会長の【天・青魔導士】によって生み出された仮想ダンジョン。体育館にある仮想ダンジョン発生装置に干渉して生み出された、模擬ダンジョン」
生徒会長の足元からは青い霧がどんどん生み出されて、それは学校中に広がっていく。
「この模擬ダンジョンでは、
#右向け右 とか、#自殺して見せろ など、行動の全てを管理することは出来ないけれども、あなた達がいつもよりも弱くなるように設定しましたので」
----さて、止めを刺しましょう。
ダブルエムがパチンと指を鳴らすと共に、彼の背後にくるくる回転する緑色の歯車が生まれる。
「行けっ、我らが歯車攻撃ぃぃぃぃ!!」
と、ただでさえ調子が悪そうな2人に、回転する歯車が襲い掛かる。
「"
そして、その回転する歯車は大きな青い手によって防がれたのである。
大きな青い手はそのまま回転する歯車を防ぐと、電脳データたるホログラフへと変わり、生徒会長の青い霧を上書きしていく。
「ななっ?! 【天・青魔導士】の力によって上書きされた世界が、さらに別の力によって上書き?!
#ヤバそう な状態なのでは?!」
----あいたっ!!
そんな彼女の眉間に、花子の弓矢が炸裂し、吹き飛ばされるのであった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「----ふっ、やはり我の力が必須だったようだな」
と、今先程、ホログラフによって領域を塗り替えた蒼穹ヶ原紅葉が現れた。
当然、彼女と行動を共にしていたオレも、だ。
「紅葉、あなたの力でしたか……あぁ、刀祢君も居たんですね」
「ふっ、【厨二病】の力は自らが使いやすいように世界を書き換える力! この程度、造作もあるまい!!」
「あぁ、オレ達も犯人は屋上に居るんじゃないかって思って来たところだ」
人々を襲っていた魔物達は、何とか倒せたが、犯人を追い詰めない以上はこの事件は解決しないと思った。
なので、こうして屋上へと足を運んできたわけだが----どうやら丁度、ピンチの所に駆けつける事が出来たようだ。
「(しっかし、ダブルエムはまだ生きていたようだな)」
てっきり、前回の戦いで、メカと共に爆死したと思ってたのだが……。
まぁ、吹き飛ばしたし、後はこのダンジョン化の要石の役割を果たしている生徒会長をなんとかすれば良いだろう。
『ピピピッ……自動撃退モード、始動します』
そんな中、不気味な音と共に、十字架がゆっくりと上空へと上がっていく。
いや、正しくは----十字架の下の床から、魔物が現れたのである。
そいつは、顔が緑色の河童を模した
頭にお皿、鳥のくちばしのような三角の黄色い口、そして真っ赤な瞳。
水かきを持つその化け物は、"フリフリの魔法少女ドレス"と共に、オレ達の前に現れたのであった。
『我は、このダンジョンのカンリシャ---その名も【《魔法少女》河童メカ】なり』
===== ===== =====
【《魔法少女》河童メカ with 高宮渚】 レベル;? 《聖リエック女学院》維持担当ボス魔物
女の子は今を時めく魔法少女となれる世界を閉じ込めた【世界球体=魔法少女世界=】の力を取り込んだ、ダブルエム作成の機械型魔物。倒すと、マナ系統職業の1つ、【魔法少女】を使用することが出来るようになり、《聖リエック女学院》のダンジョン化が解除される
心のときめき、力に換えよ♪ 愛の心を魔力に換えて、大きな力で敵をずきゅんっ♡ 愛する力が消えない限り、魔法は不滅、パワー全開☆
===== ===== =====
「(これまた、なんとも……《蟹》の時と言い、味が濃そうな敵だな)」
だが、この河童メカさえ倒せれば、この変なダンジョンも解除されるらしい。
なんとも、分かりやすくて助かる。
オレが頷くと、3人も同様の事を考えていたのか、頷いてくれた。
----さぁ、戦いの始まりだ。
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