第三話 三つの呪い


 はぁ……はぁ……はぁ……。な、なんとか、撒けたか……。


 何も追って来ないことを確認した俺は、安堵の息を吐き出す。

 ふぅ。それにしてもしつこかったな、あのムカデみたいな魔物。


 交通事故で死んでしまった俺は、ある邪神に拾われた。拾われたといってもいい意味じゃない。もちろん悪い意味で。


 どうやら邪神は、勇者召喚を妨害しようと試みたらしい。が、結果妨害出来たのは五つある魂の一つだけ。それが俺である。

 どういった思惑があるのか、何故勇者召喚を妨害しようとしたのか。その背景は俺には判らない。ただ一つ判るのは、邪神にとって勇者召喚は好ましくないということだけだ。


 妨害し、手に入れた魂に邪神は呪いをかけた。それが「勇者スキル取得不可」、「勇者覚醒不可」、「下級魔物転生」の三つの呪いだ。


 余程勇者として活躍されては困るのだろう。徹底的に勇者としての力を削ぎに掛かっていることが判る。

 呪いをかけられた張本人としては、勇者なんて便利屋になりたくなかったし、前二つの呪いは別にいい。気にしない。

 だが、問題は最後の呪いである「下級魔物転生」だ。


 この呪いによって、俺は下級魔物であるレッサーバットという弱い魔物として生まれ変わってしまったのである。


 ふざけんなって話だ。そもそも俺には人として生きた記憶がある。だから蝙蝠なんかに転生してしまって嫌悪感が……あれ? 特に無いな。違和感も無いし。

「飛行」スキルがあるから移動にも便利だし……いやいやいや、問題はあるんじゃないか。それも特大の問題が。

 それが何かというと、〝圧倒的に弱い〟ということだ。これは由々しき問題である。


 俺が転生してしまった異世界は、普通に魔物が存在することが判っている。なにせ、さっきめちゃくちゃ追い掛け回されたからね。

 弱さは罪、とまでは言わないけれど、大問題だ。この弱肉強食の異世界においては。


 弱いなら助けを求めればいいじゃんと思うかもしれないが、そんなことは土台無理な話だ。まず誰に助けを求めるのかが問題。

 元人間だったとしても人間に助けを求めるなんて出来ない。意志疎通が取れないし、そもそも俺はレッサーバットという魔物だ。出会い頭討伐されるがオチだろう。


 なら魔物はというと……まぁ無理じゃない? 理性的な魔物もいるかもしれないけど、さっきの様子じゃあ、あまり期待は出来そうにないな。

 結論。誰も助けてくれないなら、自分が強くなるしかないってことだ。


 どうやって強くなるのか。そもそも強くなれるのか。それは判らない。判らないけれど、やってみるしかないのだ。おぉーやってやるぞぉー!


 さて。改めて気合を入れたところで、まずは目標を決めよう。

 第一に、強くなって生き残ることだ。最重要課題である。


 第二に、邪神をぶっ飛ばす。無理難題な目標だけど、必ず達成してみせる。それほどまでに俺は邪神に対して怒っているのだ。ふざけた呪いなんてかけやがって。


 第三に、この世界を見て回ること。折角異世界に転生――魔物にだけど――したのだから、この世界を見て回りたい。どんな景色が広がっているか。今から楽しみだ。ワクワクする。


 第四に、幸せになることだ。これが最終目標だな。前世が幸せでは無かったわけではないが、やっぱり生きるからには幸せになりたいし、幸福を追求するとこは生物にとって当たり前のことだしね。


 取り敢えずの目標はこんなところかな。大雑把すぎる目標かもしれないが、これでいいのだ、俺は。大体でいいのよ、目標なんて。


 兎にも角にも出来ることから始めよう。まずはスキルの確認及び習熟だな。

 もう一度ステータスを確認だ。ドドン!


名前:――

種族:レッサーバット

年齢:0歳

称号:邪神に呪われし者

技能:「吸血」「音波利用」「立体飛行」(NEW)「弱視」

呪い:「勇者スキル取得不可」「勇者覚醒不可」「下級魔物転生」


 おや? 少し変わっているな。「飛行」が進化(?)して「立体飛行」になっているぞ。

 飛びながら逃げ続け、只管ムカデ魔物からの攻撃を避けたことが、スキルが進化した理由かな? 不幸中の幸いとは、正にこの事。

 一先ず「立体飛行」は置いといて。順番に確認していこう。


 蝙蝠と言えば、吸血行動が真っ先に思い浮かぶ人は多いんじゃないだろうか。レッサーバットとなった俺にも「吸血」というスキルがちゃんと存在していた。

 この「吸血」スキルを試したいところだけど……周囲を見渡しても、岩、岩、岩。うん、無理だな。

 どこかにか弱い小動物がいればなぁ。どこかにいないかなぁー、いないよなぁー。

 あんな化け物じみた魔物がいる洞窟だ。か弱い小動物がいるはずも無かった。

 ならこの「吸血」スキルを試すには、魔物を狩るしかない。無理じゃね? そもそもムカデって血が流れてんの?

 保留だ、保留。次に行ってみよう。


「音波利用」スキルか。これも蝙蝠としては、まず思い浮かぶ能力だよな。

 確か蝙蝠は超音波を発し、その反響反射を聞き取って、物体の存在を把握しているんだったっけ。イルカとかもそうだったかな。まぁ要するに、ソナーの役割を果たしているってことだ。


 取り敢えず、早速スキルを使ってみよう。


「ピィィィー」


 ふむ。なるほどなるほど。へぇー、こんな感じなのね。

 発した音波が反射し、周囲の状況が脳内で構築されていく様は、なんだかちょっと不思議な感じがする。音波が届く範囲まで脳内マップが作られていく感じかな。

 音波が届きさえすれば、例え分かれ道だったとしても、その先が理解出来るみたい。すごく便利じゃね? 「音波利用」スキルって。

 なんとなーく、このスキルを使い熟すことがカギになりそう。色々使い道も思い尽くしね。


 次は「立体飛行」――の前に「弱視」から。このスキルに説明は要らないだろう。視力が弱くなるバットステータスです。はい、終わり。


「飛行」スキルがいつの間にか進化していた「立体飛行」スキル。今思い返してみると、魔物からの攻撃が避けやすくなった瞬間があった。あの時は俺も必死だったし、特に気にしていなかったけど、多分その時に進化したんだと思う。

 早速試してみよう。羽をパタパタパタ……。

 おぉぉ! すげぇ! 飛んでる、飛んでるよ、俺!

 羽ばたいて真っ直ぐことから始め、次第に縦横無尽に。そしてさらにはアクロバット飛行も容易に出来た。

 今なら、かの有名なライト兄弟の気持ちが判る気がする。人類は空を飛んだのだ! 

 うぉー、三回転半捻りぃ! ……決まったぁ! 慎二選手、堂々の優勝ですっ!

……あー、うん。ごめん、なんかテンションが上がっちゃって、えへへ。

とにかく! 「立体飛行」スキルは超有能なスキルだってこと。

ここが洞窟という限られた空間だから、空高く飛んで逃げることは出来ない。けれど、機動性が増したことで回避性能も上昇。生存率も格段に上がっていることだろう。


 以上で、スキルの確認作業は終了。結論を述べると、俺はどうやら索敵役が適任みたいだな。

「音波利用」を使って、索敵し。会敵しても「立体飛行」で飛んで逃げる。完璧な索敵役だな、おい。


 うん、決まった。今後の方針としては、スキルの習熟訓練をしつつ、「音波利用」で索敵。魔物を発見したら逃げるか、隠れてやり過ごす。そして出口を見つけ、この洞窟からおさらばする。

 これしかないな。何せ、攻撃手段を全く持ち合わせていないのだから。


 ただ問題は……ぐぅーと鳴るこのお腹だ。腹減った……。

「立体飛行」を試した後から感じる空腹感。調子に乗って飛び過ぎた……。


 蝙蝠の食事と言えば、生き物の血――だけなのかは判らないけれど――。そう都合よく食料になりそうな小動物はいないよなぁと思いつつも、音波を放って索敵してみると。


 ん? 反応がある? あーでもコレって大きさからいって、小動物の類ではないな。

 捕捉したのは、俺の何十倍もありそうな大型の細長いナニカ。形からいって蛇の魔物だと思う。つるっとしているからムカデ魔物では無さそうだ。


 とにかくそっち方面には行かないことにして――って、あれ? もう一匹?

 推定蛇の魔物の近くに、他の物体――四つ足の犬っぽいナニカを捕捉。徐々に蛇の魔物に近付いている様子。


 ここで俺はふと思った。もしかしてコイツら戦うんじゃね? と。


 このまま二匹の魔物が争い戦えば、いずれどちらが倒れ、決着が着くだろう。そしたら勝者は敗者を喰らうと思う。食べないかもしれないけど、それはいい。食べられて何も残らないかもしれないが、流石に地面に落ちた血液までは放置するはず。

 丁度この空腹感をどうにかしようと思っていたところだ。これは漁夫の利を得るチャンスなのでは? 隠れてやり過ごせば……いける!


 そうと決まれば早い。疲れるが「音波利用」を使って、様子を観察し続ける。

 俺の予想通り、二匹は遭遇し、戦いが始まった。


 んー。流石に「音波利用」では、詳細な戦闘風景は判らない。全てがコマ送りになってしまうんだな、これが。

 出来れば、この二体の魔物の詳細を知りたい。どんな姿なのか。どんな攻撃手段をもっているのか等々。この洞窟で安全に過ごすためにも、魔物の情報は些細な事でも欲しいところ。

 しかし、視認出来るまで近付くにはリスクが大きい。最悪、見つかれば短いコウモリ生となってしまう。が……。


 よし、決めた! 虎穴に入らずんば虎子を得ず、だ。戦闘中はちっぽけな俺の存在なんて気にもしないだろう。……言ってて悲しくなってきたわ。


 決着が付く前に、離脱して距離を取ればバレないと思う。相手を喰らうことに夢中になるだろうし。

 即断即決。俺は慎重に慎重を重ねて、息を潜めつつ、僅かな物音さえ立てずに現場に近付いていく。


 近付くにつれ耳朶を大きく打つ、激しい戦闘音。唸り猛る獣の咆哮。

 ゴクッと生唾を飲み込み、緊張で身が竦みそうになる。その度に己を叱咤して前へと進む。


 何故、危険を冒すのか。それは近付くにつれ濃くなっていく血の臭いのせいだ。さっきから腹の虫が収まらんのだ! 食欲は恐怖を凌駕すると知った。

「弱視」による視力低下で、かなり接近しなければならなかったが、身体がすっぽり収まる丁度いい窪みを発見。即座に身を潜ませる。

 見えた! おぉー、ヤベェ……大迫力だ……。


 相争い合う二体の魔物。蛇の魔物VS狼の魔物による怪獣大決戦が繰り広げられていた。

 狼の魔物が鋭い爪を振るえば、蛇の魔物が身体をくねらして回避。

 即座に尻尾を振るい反撃を試みるが、素早い身のこなしで軽々と避ける狼の魔物。

 両者譲らない一進一退の攻防。目を見開く俺は凄まじい戦闘風景に驚愕しつつも、心を躍らせ、見入ってしまう。


 いけ! そこだ! あぁ! 違う! そう! それでいい!

 迫力満点の熱戦を前に、いつしか恐怖は熱気として昇華し、夢中で見入る俺。まるで熱狂的なサポーターの如く応援し出す始末。因みに応援しているのは狼の魔物。理由はカッコいいからだ。


 そんな俺の応援が届いたのか、狼の魔物が仕掛ける。

 飛び上がった勢いを利用して、蛇の魔物の胴体に鋭利な牙を突き立てた。

 日々散る鮮血。大気を揺らすかのような絶叫。

 蛇の魔物は何とか逃れようと身体を波打たせ、身を捩り藻掻く。が、深く突き立てられた牙から逃れることは出来ない。

 さらに追い打ちを掛けるが如く、狼の魔物が鋭爪を振るう。

 幾重にも裂傷を刻む蛇の魔物。夥しい鮮血が身体の至る所から流れ、どうみても致命傷だ。

 もうすぐ決着が着きそうだと、俺は狼の魔物の勝利を確信する。


 そろそろ距離を取らないと、と思いつつ、そろりそろりと隠れていた窪みから抜け出し――なぁッ⁉ そんなバカなッ⁉

 予想外の光景に、目を見開き驚愕する俺。


 責め立てていた狼の魔物が、突然何の前触れもなく崩れ落ちたのだ。ドンッと音を立てて倒れ伏す狼の魔物。よく見れば小刻みに震えている様子。一体何が――。

 と、思考する暇もなく、突然硬直する己の身体。


 え? なななんで身体が動かない⁉ 恐怖で身が竦んだ……? いや違う! これは……。


 突然、一切の身動きが取れなくなり、パニックになる俺。そんな俺を一対の瞳がジッと見詰めていた。


 縦長の瞳孔。金色の瞳。

 穿たれた牙傷から夥しい鮮血を流す蛇の魔物の瞳だ。真っ直ぐ見詰めるその怪しく光る瞳から逃れられない!


 石化の魔眼……じゃないな、硬直系か? いやいやいや、分析している場合じゃねぇ!


 どうにか蛇の魔物の視線から逃れようと藻掻くが、全く動かない身体。


 おい、おいぃぃぃ! なんで俺の方を見るんだよッ⁉ そこに狼の魔物が横たわってんだろう。俺なんか放っておいて、そっちを喰えよ!


 チロチロと舌を出し、這いずるように蛇の魔物が迫って来る。


「ピ、ピピピィー!(く、来るんじゃねぇー)」


 堪らず叫ぶ俺。すると、蛇の魔物は一瞬クラッと頭を傾けた。その何気ない仕草に、俺は違和感を覚える。


 なんだ? 血を失い過ぎたのか? そうだよ、コイツも万全って訳じゃないんだ。狼の魔物との戦闘でかなり消耗しているはず。ならまだ活路はある!


 叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ俺。その度にクラッとする蛇の魔物。


 効いている! 効いているが……足りない。音波を放ち、蛇の魔物を晦ませることは出来る――ダメージを負っているからこそだと思うが――が、昏倒させる程には至っていない。威力が足りないんだ。

 威力が足りない。威力を上げる為には大音量で叫ぶ――いや、それはもうやっている。これ以上は喉が裂けて取り返しのつかないことになりそう。


「ピピピピィィィ!」


 これ以上、近付かせない為に定期的に音波を放つ。その度に動きが止まるからな。動けないなら足止めして時間を稼ぐしかない。他に魔物が寄って来る様子も無――そうかッ!


 瞬間の閃き。それを実行に移す。これで失敗したら……と弱気な一面が顔を覗かせるが、意思の力で無理やり抑え込む。

 腹に力の貯め、蛇の魔物が近付くのをジッと待つ。乾坤一擲の一発を放つ為に。


 ずりずりと這いずって近付く蛇の魔物は、俺が鳴かず抵抗しなくなったことを訝しむように首を傾げたが、気にしないことにしたらしい。そのまま無防備に近付き、大きく口を開いた。


 俺を喰い殺そうとする顎が迫る――その瞬間。


「――ッ!」


 腹に溜めたありったけの力を以って、音波――いや、超音波を放つ。

 全方位に放たれそうになる超音波を、「音波利用」スキルで無理やり指向性を持たせつつ収束していく。


 これでダメなら、俺はコイツの腹の中だな……。


 そう諦めに似た覚悟が決まったその時。


《スキル「音波利用」がエクストラスキル「超音波操作」に進化しました》


 脳内に響く謎の声。その謎の声に疑問を持つ余裕もなく、俺は格段に収束率が上がり、威力を増していく超音波を放ち続けた。そして……。


 ――グラッと傾いたかと思うと、そのままドサッと土煙を上げて、蛇の魔物は地面に倒れたのだった。


「ピィー、ピピピィー(うぉー、俺の勝ちだぁー)!」


 思わず勝鬨を上げる俺。拘束が解け、宙を舞う様に小躍りしてしまう。

 良かったぁ……マジで成功して良かったわ。まさかこんな危なくなるとは……これからは一層慎重に行動しなくては。

 ちょっぴり反省しつつも、頬がニヤけるのが抑えられない。やっぱり嬉しいものは嬉しいのだ。


 さて。一体何がどうなったのかと説明すると。まず俺がやったことは、音響兵器の模倣だ。

 音響兵器とは何ぞやと言えば、音波を投射することで、聴覚器官や脳にダメージを与えたり、または破壊することを目的とした兵器のことである。

 度々蛇の魔物が、クラッとしていたのはそういうこと。だが威力が足りず、ダメージを与えるまでには至っていなかった。

 そこで俺は閃く。音波を収束させたら威力が上がるんじゃね? と。


 そもそもその事を思い付けたのは、俺が放った音波は全方位に向かって放たれていた事に気付いたからだ。眼前に蛇の魔物が迫っていると言うのに、周囲の状況を無意識に把握していたからね。全く収束されていないと気付けたわけ。


 それに気づいてからは腹に力を溜め、蛇の魔物が近付いてくるのを待った。より効果的にダメージを与える為に、敢えて近付くのを妨害せず、機を窺っていたのだ。


 そしてこれ以上無い程、蛇の魔物が近付いた瞬間、「音波利用」スキルで無理やり指向性を持たせつつ、音波を収束して放った。

 その結果、「音波利用」はエクストラスキル「超音波操作」に進化し、その威力が増したことで、蛇の魔物を倒せたってわけ。まさかスキルが進化するとは予想外だったけど。


 ただ、倒したと言っても蛇の魔物は死んではいない。昏倒しているだけだ。いずれ目を覚ます……いや、それは無いかな。目覚める前に出血多量で死んじゃうだろうし。


 何はともあれ、危機的状況を脱することに成功したわけだし、当初の目的を果たすとしますかね。


 パタパタと羽ばたいて、昏倒している蛇の魔物に近付くと、そのつるりとした皮膚に牙を刺す。


「吸血」スキル発動! ちゅーちゅーちゅー。


「ピピィーピー(んまぁーい)」


 ねっとりと喉に絡みつく濃厚な旨味。だが、決してくどくはなく、すっきりとした後味だ。思わず恍惚としてしまう程の美味。

 何だコレは⁉ こんな美味しい飲み物、飲んだことない⁉ うーまーいーぞー!

 けぷっ。ふぅ、美味かった。大変美味しゅう御座いました。余は満足じゃ。

 美味い酒を飲んだ後に似た満足感。そして、身体の底から漲って来る力。

 ふむ。この充足感は一体何だろうか。力が湧いてくる気がする。


 試しに「超音波操作」で音波を収束させ放つ。すると、ガリッと岩壁から音が聞こえた。

 近付いて調べてみると、ほんの少し削れたような傷が付いているではないか。これは……威力が上がっている? 


 二、三、試してみると、ほんの微かだけれど、確かに傷を残す岩壁。


 もしや……俗に言うレベルアップじゃないだろうか。

 フフフ、フハハハ、ハーッハハハッハ。

 思わず笑いの三段活用が出ちゃったぜ。これならいける、いけるぞ!

 決まったな。俺がこれからすべきことは、この洞窟に棲む魔物から吸血をし、力を蓄えること。


「吸血」スキルの真価を実感し、俺は暫く高笑いを続けるのであった。


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