オカン、時を駆ける
マフユフミ
第1話
ユミコは兼業主婦である。
朝は弁当を作り洗濯をし家族を食べさせ、ドタバタと職場へ駆けてゆく。
夜はダッシュで職場を去り、込み合うスーパーで買い物をし、夕飯作りに洗濯物たたみ、風呂の掃除とフル回転だ。
「女性の社会進出」とか、「自己実現」とか、そんなことはどうでもいい。
働くのはただ単に、暮らしのためだ。
少女の頃ユミコの将来の夢は、専業主婦だった。
もともとが器用でもなんでもないユミコは、自分が仕事と家庭の二刀流をこなせるとはとても思わなかったのだ。
家庭のことに専念し、誰よりも立派な主婦になってやる!そんなことを考えていたなんてことは、夢か幻か…
しかし現実は甘くない。
夫の予期せぬリストラは、ユミコを仕事社会へと放り出す。
必死に働いて、家事もこなして。
不器用者ながら、様々な手抜き方法を会得してなんとか家を回す。
適当な性格ゆえか、適当な家事を夫子供に伝授して、皆でなんとかまるっと過ごす。
なかなか家事を手伝ってもらえずブチ切れたり、動きたくないとブー垂れてみたり、小さな衝突を繰り返しながら、なんとかかんとかユミコ中心で家庭は回っている。
あー、動きたくない。
ユミコの本音は常にそんなグータラなものだ。
夜の22時を過ぎたころ、ユミコは突如「一歩も動きたくないモード」に陥る。
ここで本能のままグータラしたい。
そしてそれが出来ればどれだけ気持ちいいだろう。誘惑がユミコの心を埋め尽くす。
それでも現実は甘くない。
やらねばならない家事はまだあるし、夜更かししがちな子供を寝かせなければならない。
時間との闘い、サボろうとする甘い誘惑との闘い。闘い闘いの連続だ。
「このクソッタレ~!!」
汚い言葉で無理やり自分を奮い立たせ、ユミコは今日も一日を駆け抜けるのだ。
オカン、時を駆ける マフユフミ @winterday
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