第881話 イジメられる男 3
(前回からの続き)
悲劇は国際イジメ大会ではなく、国内で起こった。
先に背景から説明しておかなくてはならない。
脳外科の元上司に淡路島出身者がいる。
彼女の名前を
淡路島と言っても大半の人は玉ねぎが名産だくらいしか思いつかないだろう。
兵庫県の一部で瀬戸内海の東の端に浮かんでいるという事が分かっていればかなりの淡路島通だ。
オレは卓球をやっていた関係で淡路島にはちょっとばかり詳しい。
今は昔の事になってしまったけど、淡路島の中学はやたら卓球が強かった。
確か1970年代に始まった全国中学校卓球大会の第1回優勝者も淡路島出身だ。
なんで淡路島の中学が強いのかは謎だけど、なにしろ強かった。
他にやる事がなかったのかもしれない。
ただし中学を卒業すると選手たちは京阪神の高校に散ってしまうので、もう淡路島のスペシャル感は薄まってしまっていた。
さて、元上司の
京都にある2つの医学部のうちの1つ。
何と言っても彼女が京都で困ったのは敬語だったそうだ。
そもそも農業と漁業が主たる産業の淡路島には敬語という概念がない。
だから淡路島の小学生は先生に対してもタメ口で喋る。
そのため、神戸から赴任してきた教師はいつも怒っていたそうだ。
逆に京都の人は必要以上に敬語に
「ネコが歩いてはる」と普通に言っているのだとか。
大阪が敬語に拘っているというのは意外だけど。
確かに大阪の人が「お父さんがパチンコに行きはる」と言うのを聞いたことがある。
オレなんか「父がパチンコに行く」ってのが正しい日本語だろ、と思ってしまう。
それはともかくとして。
敬語で苦労しながらも
ところで京都人の性格に「いけず」というのがある。
「いけず」というのは、ほぼ「意地悪」という意味だ。
単なるじゃれ合いみたいな
さて、淡路島の後輩に
なんといっても司覧先生は故郷の英雄だ。
まさか憧れの司覧先輩が敬語で苦労しているなんて想像もしていなかっただろう。
ところが、京都に出てきた後輩はうまく敬語が使えないのを苦にして自殺してしまったのだそうだ。
いくらいけずな京都人でも死ぬまで相手を追い込むはずもなかろう。
淡路島出身の純朴な少女が、軽いじゃれ合いを
今となっては何が自殺のキッカケになったのか、分かりようもない。
何十年も前の事だけど、その話をする
さて、次回は国際イジメ大会の分析だ。
(次回に続く)
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