第723話 英語を習得する男
今朝の救
救急室も常時忙しいわけではなく、暇な時もある。
そんな時はカルテを書くか雑談するか……
雑談といっても「どこそこに新しいレストランができた」みたいな話ではなく、仕事に関係した事が多い。
たとえば茨城くんは最近、英語を習おうと思っているそうだ。
「AIを使った英会話アプリがあって、今度それをやってみようかと思っているんですよ」
「ほほう、アプリの名前は?」
AIを活用していると
そのうちのいくつかはオレも試してみた、もうすっかり忘れてしまったけど。
オレが続けていないと言う事は、なんか違和感があったんだろう。
おそらくは一生使わないだろうという場面の練習が多かったんじゃないかと思う。
当時の自分に訊いてみないと分からないな。
今、チラッとネットで調べてみると、納入業者との価格交渉とか週末の出来事とか好きな食べ物とか。
オレにも茨城くんにも関係ないよ、そんな会話は。
「とりあえず診
オレは2人に提案したが、あまりピンと来ていないみたいだ。
「たとえばアメリカの診療看護師がやってきたとしよう」
「えっ、ええ」
いきなり言われるわけよ、「やあ、日本での診療看護師の活動っていうのを教えてくれ!」とか。
オレはアメリカ人風に言ってみた、もちろん日本語だ。
「急にそんな事を言われても答えられないです」
「日本語でも難しいですね」
2人に口を揃えて言われた。
「じゃあ、オレが代わりに言ってみよう。『日本では診療看護師の制度が導入されたばかりなので、まだ手探りなんですよ』とか」
「確かにそうですね」
「じゃあ君たちは何をしているんだい」
オレはフレンドリーな外国人になりきって尋ねた。
「救急をやっています、日中の1~2次救急です」
だんだんいい感じになってきた。
「診療看護師にどの程度の裁量があるのか、日本では問題になったりしないかな?」
「なっています。その部分が1番問題なんですよ!」
茨城くんも幸村さんも食いつきがいい。
「じゃあ、診療の流れはどうなっているのかな。たとえば回転性めまいの患者が救急車で搬入されてきたとして」
アメリカ人診療看護師を演ずるオレは次々に質問する。
「ドクターが患者を診ながら『バイタルの測定をしてくれ』とか『採血だ』とか言って、キミたちが手足となって働くのかな?」
「最初の頃はそうでしたけど。今は、回転性めまいの患者さんだったら、ほぼ自分たちだけでやっています」
「じゃあドクターが君たちに張り付いているというわけでもないのかな」
「そうですね、救急外来にいない事もよくありますよ」
これは実際、その通りだ。
「でも、ドクターの監督のもとに活動するというのが診療看護師の制度じゃないのかな?」
「先生が同じ建物の中にいて5分以内に駆け付けられるという状態だったら許容範囲だと私たちは考えています」
だんだんいい感じに盛り上がってきた。
こういうやり取りをすべて英語で行うことができれば申し分ないはずだ。
(次回に続く)
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