第485話 奄美大島から来た男 2
(前回からの続き)
「大学病院も動物園も他人事としか思ってなくて。これといった有用なアドバイスも貰えなかった」
「それ、困りますね」
「そしたらオッサンが『脇の方まで痛くなってきた』って言うから袖をまくって脇を確認したら」
「……」
「上腕から胴体の方まで絵が描いてあって」
「刺青が入っていたんですか!」
「こりゃあ下手したら指を落とすのはオレの方か、と思ったね」
もはや現実の出来事とは思えなかった。
そこにフラッとやって来たのが院長先生。
日曜日の個人病院だ、用事が無くても顔を出すこともあるだろう。
で、院長先生の言われるままに減張切開をした。
その時のオレは医学部を卒業して半年くらいしか経っていなかったと思う。
2週間後に再びアルバイトに行ったときにハブオヤジの消息をスタッフに尋ねてみた。
あの後、野球のグローブみたいに手が腫れあがったけど減張切開のお蔭で助かったらしい。
とにかく恐ろしい経験だった。
「大変な経験をされたんですね」
「だから南の島に住もうと思っても、島を選ばないといかんぞ」
「えっ、島を選ぶって関係あるんですか?」
「あるね。南西諸島の中にもハブがいる島といない島があるんだ。確か1つおきだったかな」
「知らなかった!」
再び、医学生とレジデントが驚いている。
ハブの生息地が飛び石状になっているのは有名な話だ。
その原因としては諸説ある。
島の土との相性の良し悪しがあるという説。
海面上昇時に水没した島でハブが全滅したという説。
だからオレが住むならハブのいない島にしたい。
「ところでマングースはまだ残っているのか?」
「だいぶ減りましたけど、残っていますね」
「もうマングース
そう言ったら再び女性レジデントに呆れられた。
「先生は島民でもないのにマングースに詳しすぎですよ」
「行動経済学に通じるものがあるからな、知っておいた方がいいぞ」
「ハブやらマングースやらと関係があるんですか」
「あるね。ノーベル経済学賞をとろうと思ったら知っておいた方がいい」
行動経済学は2002年にノーベル経済学賞をとっている。
(次回に続く)
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