第483話 撮影・録音する男

 年を取ったせいか、何でも忘れてしまう。

 もう今さら脳トレとか数独すうどくとかで頭を鍛えようという気にはならない。


 だから役所に提出する書類とか、広大な駐車場に停めた車の位置とか。

 色々なものをスマホで写真に撮っている。

 何を忘れるか予想ができないので、深く考えずにとにかく写真に撮ることが大切だ。


 最近は写真だけでなく録音もしている。

 たとえば、損害保険会社での面談だ。

 オレは交通事故とか医事紛争などの揉め事の相談に乗ることがある。

 損保会社の担当者に医学的なアドバイスをするのだ。


「運転中のドライバーが脳出血を起こして事故を起こしたのだろう」とか。

「手術中に硬膜下腔に挿入したドレーンが脳実質に刺さったのだろう」とか。

 そういった話をした後に、帰りの車の中でスマホ相手に録音をしておく。


 面談の席上では普通の話であっても、時間が経つと忘れてしまう。

 こんな時に役立つのが録音だ。

 必要があって後で聞き直すのは半年とか1年ほどしてからになるけど。


 先日は自分が入っている生命保険会社に行ってきた。

 ちょうど今回が見直しの時期だった。

 本体である死亡保険の部分をそのまま続行するのはいい。

 でも、入院や生活習慣病などの医療保険の部分が複雑怪奇だ。

 何度も質問しないと理解できなかった。


 これまた帰宅してから記憶に残っているうちに録音しておく。

 たぶん1ヶ月もすればすっかり忘れてしまうだろう。

 ましてや1年も経つと、そういう話をした事すら忘却ぼうきゃく彼方かなた


 試しにこの記事を書こうと思ってスマホの録音をランダムに聴いてみた。

「なるほどそういう事もあったわい」というものもある。

 でも「自分が言いそうなことだけど、すっかり忘れているぞ」というのもあった。


 そういう込み入った話をメモ代わりに録音しておき、必要に応じて聞き直すのはいいアイデアだと思う。


 考えてみれば、毎回ネタを探しているのがこのカクヨムだ。

 何を書くか思いついたら即座に録音しておくのもいいかもしれない。


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