第410話 ChatGPT を使う男

 YouTube を見ていると、ChatGPTチャットジーピーティー についての色々な評判がある。


 画期的な人工知能AIだ。

 人類は新しい局面に立った。

 これからはどのようにAIを使いこなすかが重要だ。


 そういったポジティブな意見がある一方、ネガティブな意見もある。


 仕事を奪われる。

 学生がレポート作成に悪用して手抜きする。

 進化が速すぎる。


 そして、当初は資金提供していたイーロン・マスクが「半年間、開発を停止しろ」とまで言い出した。


 おいおいおい。


 オレが使ってみた限りでは、コイツはまだまだ駄目だ。


 たとえば、ChatGPT の得意分野とされる要約。

 試しに「1999年の韓国映画『シュリ』のあらすじを教えてくれ」と入力してみた。


 すると、こんな嘘八百の「あらすじ」が出て来た。


 物語は、悲しい運命を背負った男女の愛を描きます。主人公のジュンヒョク(スン・ソク)は、幼い頃に家族を亡くし、孤児として成長しました。彼は天才的なピアニストとして、世界的な名声を持つようになりますが、内面には深い孤独を抱えています。

 一方、ジュンヒョクの前に現れるヨンシル(チョン・ジェヨン)は、明るく元気な性格を持つ女性で、彼女もまたピアニストを目指しています。彼女はジュンヒョクと共に音楽を学ぶうちに、彼に惹かれていきます。二人は互いの音楽や人生に対する情熱を通じて、深い絆を育みます。


 全く違うじゃないか。


 オレは「韓国に潜入した北朝鮮工作員と、韓国諜報部員との悲恋を描く」映画だとウィキペディアの文章をそのまま入力した。

 そうするとその線に沿ってもっともらしい「あらすじ」が出て来た。


 スリは北朝鮮の指令の下、韓国での工作を行っていたが、ある事件をきっかけに彼の正体がバレてしまいます。一方、チャンヒョクは、スリを追う韓国諜報部のエリート諜報員であり、スリを捕まえるために追跡を始めます。


 はあ?


 北朝鮮から潜入した女性工作員と韓国諜報部の男性が、お互いの正体を知らないまま恋に落ちる、というのが正しいんだぞ。

いい加減にしてくれ。


 そこでオレは映画の属性を入れてみた。


「1999年公開の韓国映画で、 監督はカン・ジェギュ、出演はハン・ソッキュ、キム・ユンジン、チェ・ミンシク、ソン・ガンホなど」


 そう書いたら飛んでもない「あらすじ」が出て来た。


 物語は、主人公のヒョンス(ハン・ソッキュ)が、刑務所で出会った男たちとともに、強盗を計画し実行する姿を描いています。ヒョンスは、かつては高い社会的地位を持ち、名声を求めていたが、現在は経済的に苦境に陥っています。


 一体、何を言い出すんだ!


 もう駄目だ、コイツは。


 ChatGPT の駄目っぷりというのは、いかにも正しそうな嘘を出力してくるところだ。

 口調だけは丁寧なので、つい信じてしまいそうになる。

 自分がよく理解できていない商品を売り込もうとするセールスマンみたいなキャラだ。

 決して意図的に騙してやろうという詐欺師ではない。

 コイツにはそこまでの脳みそはついていない。


 オレは「シュリ」を見たことがあるから間違いに気づくことができた。

 でも、全く知らない人がコイツの「あらすじ」を読んだら間違いに気づかないだろう。


 それにしても、ChatGPT には、もう少し進化してもらう必要がある。


 コイツに仕事を奪われるって、ちょっと想像ができないな。

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