第398話 毎日投稿する男

前回は日々の手術練習を語った。

ある名人は毎日40針の吻合ふんごう練習をしているとも。


40針といえば速い人でも1時間かかる。

3時間かかったと言う人間がいても驚かない。

普段からそんな修練を積み重ねるなんてオレには到底無理だ。


が、考えてみればオレの「40針」は別にあった。

カクヨムの投稿だ。


この1年余り、毎日書いては投稿している。

1編が約1000文字なので平均して毎日2時間くらいかけているだろうか。

本業に匹敵するくらいの熱意で書いているのには自分でもあきれてしまう。


残念ながら、オレは多くの読者を獲得しているとは言い難い。

メジャーデビューなんて夢のまた夢だ。


が、「無意味かもしれない」という投稿にも1つだけ良い事がある。


それは人が死なないということだ。


書いたものが鳴かず飛ばずでも、オレ自身がガッカリするだけだ。

誰かを死なせたり寝たきりにしてしまう事なんかない。

その事だけは神様に感謝している。



ちょっと想像して欲しい。


例としてはメンタルスポーツと言われるゴルフなんかが良いだろう。


このパットが入らなかったらスコアを落としてしまう……なら気楽だ。

でも、もし外したら誰かが処刑されるという状況ならどうだろう。

いくらトレーニングを積んでも何百回に1回はパットを入れ損なう。

そして人が死ぬ。

それが医療行為の本質だ。



だからといって文筆業が医療に比べて軽い存在だとは思わない。

小説には人の一生を変える力があるとオレは信じている。


オレは自分の書いた物を通じて若者たちに良い影響を与えたい。


「人の命にかかわる厳しい仕事だからこそ挑戦し甲斐がある。医療訴訟で裁判所に呼び出されたり業務上過失致死で警察に引っ張られるくらい上等! そのくらいは覚悟の上で医師になってやる」


そういう心意気を持った若者が読者の中から出てきて欲しいと願う。

たとえ1人でも2人でも。

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