第315話 婚活を頑張る女 3
今回こそ恋愛におけるトリレンマを説明しなくてはならない。
読者もいい加減に待ちくたびれた事と思う。
婚活を頑張っているという女性患者にオレは告げた、
「イケメンでリッチで
「ええーっ! それ、あんまりじゃないですか」
この患者は思った事がなんでもそのまま口から出てくる。
だからこんなストレートな表現になったのだろう。
でも、婚活をするならそのくらいの事は知っておかないと。
「だからイケメンのリッチマンを捕まえたら浮気されまくりん、だし」
「そんなあ」
当ったり前じゃん、そんなの!
「浮気を許せないというんだったら、顔は岩石で我慢することだな」
「駄目です、岩石は絶対に駄目!」
おいおい。
さっきは「収入300万円あったら他は望みません」って言ってたじゃないか。
顔面岩石くらい受け入れろよ。
「いやいや、3条件のうちの2つも満たしていたら立派よ、それは」
「そうなんですか?」
「世の中で1番多いのは、ブサメンで
「ええーっ!!」
そう言いつつ具体的な顔まで浮かんできた。
オレの外来に通院しているおっちゃん。
顔はブサメンなのに浮気をしまくっている。
何でオレがそんな事を知っているかって?
別れた奥さんもオレの外来に通院しているからだ。
だから散々、そのテの話を聞かされた。
熱心に子供の保育園の送り迎えをしていると思ったら、ママ友と浮気をしていたとか。
元奥さんによれば相手が自分より年上というのが特に許せなかったのだそうだ。
でも、それが現実の男ってもんだ。
高望みをせず、ほどほどで満足しておくのが1番。
「まあ、フツメンで300万円の収入があったら良しとしようよ」
「でもぉ」
「1番大切なのは性格が
「えっ?」
「前に会社で怒ってガラスを割りそうになるって言ってたよね」
「そんな事を言ってましたか、私……」
「何でもカルテに書いてるから」
「ちょっと恥ずかしいです」
「だから君がガラスを割っても『いいよ、いいよ。僕が片付けておくから』と言ってくれる人だよ、探し求めるべきは」
「うーん、そうかなあ?」
いやいやいや。
「僕が片付けておくから」なんて言ってくれる人は10人に1人くらいでしょう。
もしかしたら100人に1人かも。
物事を客観的に見ることができないと婚活も前途多難になってしまう。
それはそれとして、無味乾燥な外来診療の楽しみが1つ増えたぞ。
患者に親切な医師を装いつつ婚活の進行状況をチェックしてやろう。
イヒヒ。
(「婚活を頑張る女」シリーズ 完)
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