第293話 ポーランドの3人に負けた男

 学会誌を読んでいると、時に息抜きのようなエッセイなどが書かれていて面白い。

 10年前だか20年前だか。

 オレが憶えている話の1つがポーランドに関するものだ。


 ある日本人医師が国際学会に出席していた。

 たまたま隣の席に座っていたポーランド人学者と話がはずんだ。


 ところがつい上から目線で「ポーランドももっと頑張った方がいい」みたいな事を言ってしまったらしい。

 ポーランド人学者はムッとして「なら、有名な日本人を3人あげてみろ」と言った。


 そんな事を急に言われてもなかなか答えられないのは当然だ。


 困ってしまった日本人医師がポーランド人学者に言ったそうだ。


「じゃあポーランドはどうなんだ。誰かいるのか?」


 するとポーランド人学者はこう答えた。


「まず、ショパン。そしてキュリー夫人。さらにコペルニクスがいる」


「ぐぬぬ」


 言葉に詰まった日本人医師にポーランド人学者がとどめを刺した。


「ちなみにコペルニクスは私にとってはワルシャワ大学の先輩でもある」


 誰がどう見ても日本人医師が完敗だ。



 ここまでがオレの記憶になる。

 だが、記憶にしか過ぎないので正確かどうかは分からない。

 なので調べてみた。


 すると、この話にはいささか事実に反する部分があった。

 日本人医師の勘違いか、オレの記憶違いか、それは分からない。



 大抵の国では首都の名前のついている大学はその国で1番の名門であることが多い。

 ただ、コペルニクスはワルシャワ大学と並び称せられる名門のヤギェウォ大学の卒業のようだ。



 それなら、キュリー夫人はどうか。


 彼女はポーランド人だがフランスのソルボンヌ大学の出身になる。

 当時のポーランドでは女性に対する高等教育への道が閉ざされていたからだ。

 フランスに渡り苦労して大学を卒業した彼女のその後の活躍は言うまでもない。


 本人が2回、夫が1回、娘が1回、娘婿が1回と、1家4人で合計5つのノーベル賞をとったわけで、空前絶後の離れ業としか言いようがない。



 今回はポーランドに負けてしまった。

 こうなったら日本も3人ばかり有名人を準備しておいた方が良さそうだ。

 でも、思いつかないなあ。


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