第279話 睡眠薬の要らない男

オレは不眠とは無縁だ。

いつも布団に入ったらすぐに眠れる。


そればかりか日中の会議の時でも寝てしまうことがある。

会議が終わって皆が立ち上がりかけた頃に目が覚める事も珍しくない。

情けないと思いつつ、他にも寝ている同僚がいるので安心したりもする。


そんなオレだが、布団に入っても寝付けないこともある。

そんな時の秘伝、睡眠薬代わりはスマホで読む英語だ。


だいたいが3ページも読むと途轍とてつもない睡魔に襲われてしまう。

逆に10ページ読んで眠れなくても、それはそれでよしとする。

自分の勉強になったからだ。


最近読んでいるのは2つ。

"Shortcut to English Collocations" 「英語コロケーションへの近道」

"Rich Dad, Poor Dad" 「金持ち父さん、貧乏父さん」


前者の邦題ほうだいはオレが勝手に訳したものだ。

正式なものがあるかどうかは知らない。


コロケーションというのは「よくある単語の組み合わせ」という意味。

たとえば日本語では「将棋を指す、碁を打つ」という。

決して「将棋を打つ、碁を指す」とは言わない、これでも通じるけど。


そんなわけで英語にも「将棋」と「指す」みたいな組み合わせがある。

たとえば "answer the phone" だと「電話に出る」という意味だ。

医学関係だと "active ingredient" で「有効成分」ということになる。


この本のいいところは、説明が簡単な文章なので辞書なしで読めるということだ。

知らない単語は1ページに平均1個くらいしかない。

仮に知らない単語に出くわしたとしても、指で押さえれば和訳が出て来る。

だからスラスラ読む事が可能だ。

でも、すぐに眠くなって意識消失する。


もう1つの「金持ち父さん、貧乏父さん」の方はロバート・キヨサキという日系アメリカ人の書いたベストセラーだ。

邦訳が出版されたときにも読んだが、今はこの本の原書を読んでいる。

日本語版を読んだのはもう何十年も前なので、英語版を読んでも新鮮だ。


たとえばロバート・キヨサキはベトナム戦争から帰還したときにゼロックスに就職したそうだ。

というのも彼はすごくシャイな人間で、人に物を売るなんてことは恐怖でしかない。

が、ゼロックスは全米で最も優れたセールスマン養成プログラムを持っていた。

そこで4年間働くことによって自分のシャイさを克服したのだそうだ。


ゼロックスの話が日本語版にあったかどうか記憶にない。

あったけど忘れてしまったのか、邦訳の際に省略されてしまったのか。

いずれにしても英語版を読んでいると日々新たな発見がある。


しかし、いくら面白くても3ページくらいで意識がなくなってしまう。


というわけで「コロケーション」と「金持ち父さん」を睡眠薬代わりに使っている。


「眠れん、眠れん」と言っている人たち、睡眠薬以外にも工夫をしてみよう。


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