第212話 燦然と輝き続ける男

ある日のこと。

看護学校に授業に行くと、1人の女子学生が待ち構えていた。


「見ましたわよ、先生!」

「ギクッ」


何かまずい事がバレたのか。


「愛人を目撃されてしまったとか?」

「先生、愛人なんているんですか?」

「いやいや、おらんけど」


他に思い当たるフシもないしなあ。


「この前、トップガンを見たんですよ」

「おお! 見たか、トップガン マーヴェリック」


若者と熱く語り合える映画があるというのもいいもんだ。


「ええ、先にトップガン マーヴェリックを見てから、昔のトップガンを見たんです」


そうか、元祖トップガンまで見たとは!

やけに熱心じゃないか。


「トム・クルーズって、凄いイケメンだったんですね」

「おいおい、今もそうだろう……と言っても、もうお爺ちゃんか」


トム・クルーズといえばイケメン俳優の代表だ。

オレの在米中も雑誌なんかで "Beautiful People" とかいう特集があったら、かならず登場していた。


が、もはや時代は令和。


かつてのイケメン俳優たちもバケモノしている。

ケビン・コスナーしかり、アンディ・ガルシアしかり。

皆、マフィアの親分みたいな風貌になっちまった。


なんてこったい!


そんな中でもトム・クルーズは年齢を感じさせない。

60歳になろうかという年で自らスタントシーンをやっているのだから恐れ入る。

そして「ミッッション:インポッシブル」シリーズを始め、色々な分野の映画にも挑戦を続けている。


彼のようなイケメンを見れば、誰だってあの顔に生まれたかったと思うに違いない。

でも、人をうらやんでばかりのブサメンが彼ほどの努力を重ねているだろうか。

お菓子ばかり食べてブクブク太っているようでは話にならない。


……って、オレの事じゃないか!


人々のお手本となり、空高く燦然さんぜんと輝くトム・クルーズ。

スターというのはこうあるべきだと思う。


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