第185話 大声で怒鳴る男 3
(前のエピソードからの続き)
「そもそも検察は控訴する気なんか全然ないでしょうね」
「そうみたいや。頭にくるけど」
「それに刑事事件なんで、罰金5万円が罰金100万円になったところで、こちらには一銭も入らないわけですから。そりゃあ面白くないでしょう」
「その通りや」
罰金は国庫に入るものであって、被害者の
ますますオッサンは落ち込んできた。
「だからね、もう刑事の方は諦めて民事でいった方がいいと思いますけどね」
そこに専門職が登場した。
隣の診察室に隠れていたはずなんだけど、この人。
「先生、刑事と民事はどう違うのですか?」
それが
「刑事裁判ってのは、国が悪い奴に罰を与えるってこと。だから被害者が
「なるほど!」
オッサン、専門職、非常勤医師の3人が口を揃えて納得している。
「民事裁判というのは当事者同士の争いであって善悪の話じゃないんだよな。だいたい双方ともに『自分こそ正義』と思っているしね。裁判所が間に入って、適当な金額で手打ちにするってのが民事だな」
「先生、よく知ってますね」
そのくらい知ってないと医者なんかやってられないだろう、普通!
いつ訴えられるか、いつ警察に引っ張られるか分からない商売なんだから。
「で、今回の場合、刑事裁判ではどうにもならないから、民事裁判を起こして加害者から治療費やら慰謝料やらをふんだくってやれば気分も晴れるってわけ」
「そうなんですよ、先生!」
それにしても、この人、怒鳴るかペコペコするかしかないのかね?
そりゃあ隣人とトラブルにもなるよな。
「なのでまずは弁護士さんに依頼してください」
「実は相談している弁護士さんがいるんですけど」
「じゃあ、その弁護士さんと私とで打ち合わせをして相手を追い込むための診断書やら意見書やらを書きますから、私に連絡してもらって下さい」
「わ、わかりました。よろしくお願いします。先生だけが頼りです!」
親切な医者を
でも、オレはそんな立派な人間じゃない。
そこのことは自分が1番良く分かっている。
まずは加害者に社会のルールって奴を思い知らせるか。
やっぱり5万円では甘すぎるとオレでも思う。
あと、弁護士との話し合いだったら時間がかからなくて楽だ。
お互い用件しか言わないから10分か15分ほどですむ。
というわけで、患者、専門職、非常勤医師が三者三様にオレに感謝して
いつもながらクレーム対応は疲れたけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます