ニート、歌い手になる。

柊優

第1話 当たって砕けろ

「うわー、こんなに請求来ちゃったよ・・・。どうしよ・・・。」

そう呻く男の名は、優。ネットが大好きなニートだ。今までポイントサイトで生活費を補っていたが、もうそろそろ限界のようだ。

優が唯一嫌いなもの、それは請求書。何もいいことなんかない(会社側にとってはいいかもしれないが)紙切れに苛立つ。もうそろそろニートも卒業しなければいけないのかと思うと、気が重い。

「せっかく働くならネットで働きたいなぁ・・・。」

そう言いながらベッドに倒れこむ。でも、このネット全盛期の頃にネットで稼ぐなんて到底無理だ。当たって砕けろと言われても、無駄になるのは時間とお金というダブルパンチだ。勇気なんてない。だが、このまま放っておくわけにはいかない。何か解決策を考えなければいけないのだ。

「なんかあるかなぁ・・・。」

その時、メールの着信音が部屋に響いた。どうせ役立たずの関係ないメールだろう。面倒臭いなぁと思いながらも電源を入れる。件名はー。

「あなたも今日から歌い手になってみませんか?歌い手ユニットの作り方!」

「これだぁ!」

最近出していなかった大声を久しぶりに出し、咳を数回ほどした。ユニットを組んだら有名になれる確率が上がると聞いたことがある。それなら無駄になるものも少なくて済むかもしれない。おまけに成功すれば自分のファンがつき、応援してくれ、当然お金もどんどん入る。正直高校時代には結構モテてたし、顔も声もぶっちゃけいい感じだと思う。やってみるだけ価値があるのではないか。それから考え方は一変した。

「やってみたら結構うまくいった人とかいるし!やってみよう!」

と思ったものの、どうやってメンバーを集めたら良いのやら。既に活動している人たちを捕まえてこようか。そうしよう。心の中の自分と会話し、決めた。

優は早速、某大手動画投稿サイトで調べまくった。いた。

思ったよりいた。その中から有名ユニットのメンバーのバランスを見習い、候補が絞られた。これで入ってくれればユニットの完成だ。

一人目→のらる 二人目→愛羅 三人目→ぽーる 四人目→ナナ 五人目→ゆーくん。(優)

といった候補が上がった。優が入るのはもう決まっている。それでないと稼げない。

そして、ここからが問題。OKを出してくれるのか。そのためには文面に気を使わなければいけない。緩すぎるとだめだし、堅すぎてもだめ。敬語を使いつつ、顔文字も入れるようにしよう。意識して打っていたら、四人目のナナに送り終えるまで一時間弱かかっていた。

「よし、送り終わったことだし、寝よう!」

すぐ眠りに落ちたが、寝落ちするまでの時間がいつもと違うことを感じた。いつもはネガティブなことばかり考えていたが、今日はなぜかワクワクしていた。お金だけ稼げればいいと思っていたが、心ではそう思ってないのかもしれない。

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ニート、歌い手になる。 柊優 @hiiragiyuu9125

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