第083話『真子島効力作戦13・無貌の偽王』

「──あぁ糞ッ。思ったより痛いじゃないか」


 少し前の話だ──。

 そう言って彼女──柳田伊織は、ゆっくりと体を起こす。

 だが、彼女の状態は、決して万全の状態とは到底呼べない。

 何本かの骨折。今だ神経麻痺は続いているし、衝撃で平衡感覚すらも若干怪しい。

 事実当の伊織は、己の化物じみたスペック故に立っていると言っても過言ではないのだ。

 しかし、そんな代償を支払った伊織の姿は、かつての面影は何処にも存在していない。


「(ちぃっ。思ったより無理が祟った、か──)」


 一瞬の綻び。

 もう死に体である伊織の体勢が崩れる。

 本人の意思とは別だけど、本来ならば、ここまでの戦歴は称賛をされるほどのものだ。それこそ、伊織の歩んできた道がこれで終わったとしても、彼女の行いに感謝して、惜しむ声すらあるだろう。



 だが、──。



 たとえ肉体がすり減り。

 たとえ魂が消耗したとしても。

 それでも伊織の意思は、己の道半ばで終える事を許さなかった──。

 さながらそれは呪縛、或いは鎖でがらん締めされた呪い。

 けれど、他人が忌避するような呪いであったとしても、伊織自身の意思が折れないのであれば構わなかった。


 しかし、伊織だって、──人間だ。

 何事にも限界があり、限界の先へと行ったとなれば、後はただ破滅しかない。

 だが、破滅すると言っても、伊織の意思が消える事と同義ではない。

 動けなくて、遂行できなくて。──ある意味より恐ろしい境遇が待っている。それだけの話。


「──伊織。大丈夫ですか」

「……あぁ涼音か。まぁ大丈夫──とは言えそうにないな」

「一度、そこら辺のまだ大丈夫そうなところで休みましょうか」

「あぁありがとう」


 崩れそうになった伊織の体。

 そんな彼女の体を、先ほどの戦闘にて離れ離れになった涼音が支えてくれた。

 その事に対して伊織は、礼を言った。

 本来の伊織では、誰かに頼る事なんてまずないが故にあり得ない筈のお礼に、そんな危機的状態の彼女を助けた涼音は、驚愕と悲しそうな目をして彼女の事を見ていたのだ。


「……刀、は」

「えぇ刀ですか。それでしたら丁度、伊織の隣に落ちていましたので、ボクが回収しておきました」

「それを、……握らせて、くれない、か」

「……はい。どうぞ」

「ありがとう」


 虚ろな視界。

 その手に馴染む刀だけが、伊織が今彼女自身生きている実感の全て。

 そうだ。──伊織は目の前にいる彼女の事を涼音だと言っているが、それはでしかないのだ。


「……──ねぇ、伊織。貴女はのですか?」

「……なんだ。もう戦わなくて良いとか、言うんじゃないかと思っていたよ」

「心外ですね。私だって己の願いに命賭けている身。そんなボク自身が、を抱いている伊織の事を馬鹿になんてできる筈ないじゃないですか」

「そうかな、……そうかも」


 そして伊織は、答える事なく苦笑をした。

 笑い話にも、ほどがある。


「──ただ、"彼女にもう一度会うため”だ」

「本当に? 失礼ですけど、最愛の人というたかだか数年──十数年程度の愛で命を賭けられるものじゃないと、ボク自身は思うのですけど」

「でも、所謂『恋は盲目』と言うじゃないか」

「……」

「そう、だな──」


 言葉が消えた。

 静寂が辺りを包む。

 その中で当の伊織は、己の刀たる『絶海制覇』を手に、どうにか立ち上がる。




「──記憶が消えて。



 私自身の記憶の中に何も残らなくて、



 もう頑張る意味なんてもうないのかもしれないけど。



 ──でも、これはなのだから。



 私の燈火が潰える先がもしあるのなら、──それはが一番良い」




 ──カチリ、と扉の鍵が開く音。

 それはほんの僅かな時間。それこそ現実の時間では、ほんの瞬きの間でしかないのだろう。

 だが、伊織がいた時間はそれ相応のもの。

 数多の情報。それに照らされた当の伊織は、その全てを受け取り、そして理解をした。




 曰く、"三神の戦装束”──そのたる罪の王冠ギルティクラウンを──。




 ♦♢♦♢



「──ようやく、第七の王が目覚めた、か」


 玉座に座る彼女。

 曰く第一の王は、予定調和により、何を思うでもない。


「──ほぅ、愉快愉快! 破滅に向かう者を、これまで幾らでも見てきたものだが、その中でも彼女は一級品。停滞した世界故退屈しておったが、これは良い暇つぶしになりそうじゃな」


 特徴的な民族衣装を羽織る彼女。

 曰く第三の王は、愉快愉快と笑うのだ。


「──第七の王。いや、のか?」


 冷たい視線。そして、黒色の軍服を身に纏う彼女。

 曰く第四の王は、彼女を知る者からすれば驚愕に値する不思議そうな表情で、自身の疑問を口にした。



 ♦♢♦♢



「──三神の戦装束──装填セット──無貌の偽王」


 

 伊織の右手の先が、涼音の胸の辺り──およそ心臓の上の辺りに触れる。

 その行為と同時に、伊織の口がの言霊を告げるのだ。

 ──魔力が暴威となって、嵐となって吹き荒れる。

 そして、嵐が過ぎ去った後に残されていた伊織の姿は、


「……伊織さん。──いえっ、その姿は」

「一見動きにくそうだけど、案外動きやすいな、

「ではなくてですね──」

「──あぁコレか。何か付いてきたというか、付属品か何か?」

「いえ、凄そうなものを付属品なんて言わないでください!?」


 そう言って伊織は、を見せびらかすように、その場でくるりと一回転をする──。

 硝煙と銃弾巻き散る戦場の中で、可愛さというより綺麗な、一輪の華のよう。

 元々、上着にと着ている風だった羽織りは、そのイメージを損なわないようにしつつ、装束という言葉が似合うような立派なもの。

 下に当たるものは、元々動きやすいものだったが、武道用に袴に似た女袴となっている。

 そして、前まではなかった髪飾りは、絢爛に輝く華柄。

 そう、可憐な姿を以ってして、柳田伊織──魔法少女グレイは生まれ変わったのだった──。


「それで。伊織さんはどんなマホウを!?」

「……やけに食い気味だな」

「だって。前の姿でも十分強かったのに、更なる進化を果たした後が気になって気になって!」


 食い気味で詰め寄って来る蓮花。

 話が面倒くさくそして長くなるため、ある程度の余裕な時間を用意したいところだが、怪獣大戦争をしている今現在にそのような余裕はない。

 とはいえ、伊織自身のマホウを使わずして、この戦装束の力は引き出せない。

 故に、ぐらいは必要か──。


「──ちょっとカレン、こっち。……カレン?」


 それを行うためにも伊織は、自身を守ってくれていたカレンへとカレンへと声を掛けるのだが、……何故か反応はない。

 不思議に思って伊織は、辺りを見回すと、案外すぐに見つかった。

 そこには、何故か鼻を押さえているカレンが、地面に倒れ伏しているのだった。


「……ナイスです、伊織さん」

「……何がナイスか知らないけど。ちょっとこっちに来てくれ。いや私がそっちに行くか」


 一瞬で考えを改めて、伊織はカレンの元へと行く。

 時間がない。

 とはいえ、伊織のマホウを使用するためにはがある──。


「……あの伊織、さん?」

「えっとあの伊織さん?」

「──ちょっと待ってろ。すぐに終わるから」


 そう言って伊織が蓮花とカレンの目の前に手を突き出すと、自らの体から湧き出た     がふっと消えていく。

 不思議な感覚だ──。

 いやそもそも、これが伊織──魔法少女グレイのマホウなのか?

 疑問が尽きない。

 故に蓮花は、今彼女自身の目の前で起きた事象に対して、当の伊織へと問い質す事にするのだった。


「……──えっと、伊織さん、これって」

「本当は長々と話したいところだが、流石にそろそろ不味いし。──まぁ、出来るだけ簡潔に言えば、出来るものだ」

「「──っ!」」


「(前に興味本位で“乙女課”の資料室で読んだ時に、そんな記述、ましてやそれと似たマホウなんてなかった)」


 驚愕をする──。

 他人のマホウをコピーするなんて、自分の出来る事と蓮花が“乙女課”の資料室に入り浸っていた時にはなかったものだ。

 その上で。


「(──確かに、、それほど恐ろしいものはない。ですけど一方で、こういった特別なマホウを持つ魔法少女たちは、基本的にマホウ以外の戦い方が杜撰を書いてありましたね。……あ、かつての戦闘訓練の時の痛みが)」


 だが、伊織は違う──。

 ただでさえ、素の状態でも特異的な身体能力と技術を誇っているのに、魔法少女となった今では、身体能力系のマホウを所持している魔法少女でさえもその殆どを凌ぐ事だろう。


「(──そして)」


 蓮花自身のマホウをもコピーしたという事は、つまりはこういう話なのだろう。

 ──と、を、蓮花は眺めつつ思うのだった。


「──じゃ、先行ってるからな」


 そしてそんな他愛のない言葉を残して、伊織はこの場を後にする。

 加速──。

 ただでさえ、魔法少女となっただけの伊織の身体能力は、他の身体強化系のマホウ使用時の魔法少女ですら上回る。

 だがもしも、もしも身体能力に優れた魔法少女グレイが、身体能力系のマホウが使えたのならば、と。

 此処に、その例外が顕現しているのだ──。


「……まぁ私のマホウって、対象によって違って、だけど。改めて知ると、こう、何かくるものがあるな」


 そして、物凄い勢いで姿が見えなくなる伊織の後ろ姿を、当の蓮花は見ていた。


『……──。……──。……──。』


「……──こんな時に通信、ですか?」


 突然、蓮花たち──この場にいる魔法少女たちが所有する通信機から声が聞こえる。おそらくは、この場にもういない伊織の通信機にも届いているだろう。

 そして、言葉が紡がれる。



『──これより、最終ミッションを発令する。仮称標的【Σ標的】。これの討伐によって本作戦は達成をされる。我々の方でも援護はするが、無理のない任務の達成を祈っているよ』



「──私たちも、伊r──失礼。魔法少女グレイに負けないよう頑張らないと!」



「他に人いないですから、別に取り繕わなくても良いと思いますけど。──ですが、伊織一人に背負わせるのは何か違うと思いますしね」



「──えぇ! 私の見せ場はあまりなかったですけれども、伊織さんの見せ場、私が見事舗装仕上げますとも!!」



「拙が手を貸すのだ。精々、負けるなんて愚行を犯してくれるなよっ」



 ──森を抜け、駆ける伊織の視界に、歴種の"ケモノ”の姿が目に入る。

 先ほどまでとは、明らかに違うその様子。

 先の戦いにおいて"ケモノ”は傷を負ったものの、その傷口が異様な様模様を映し出している上、その凶暴性は極限にまで上がっている事だろう。

 その上その体躯、伊織が見た時よりも明らかに大きい。


『──菟、ォォォォッ!!』


 だが、問題はない──。

 今までとは違う、伊織自身の体がまるで別物と思えるほどに軽やかで力が入る。

 駆ける速度は、疾風迅雷で。

 鞘から抜いた『絶海制覇』を手に、伊織は立ち向かうのだった。



「──この胸に抱くは、誠の心。さぁっ、を始めよう!」



/14



 驚異的な速度を以ってして、駆ける伊織──。

 そんな伊織を狙うようにして放たれる、赤熱した石槍。ソレは、前に見た時よりも明らかに加速した速度を以ってして、射出をされた。

 だが──。


「──はっ、遅い遅い! それでは私を捉えきれんぞ!!」


 伊織の方に軍配が上がった。

 圧倒的な速度によって生じる致死的な衝撃。

 死地と化したまるで雷雨の中を、伊織は駆け抜けていく。

 ──捉える事叶わず。

 その伊織の姿は、残像をはためかせているように速かったのだ──。


『──菟、ォォォォッ!』


 であれば、範囲攻撃をすれば良いだけの話。

 歴種の"ケモノ”は、赤熱した石槍を展開しつつ、溶岩が地表を割るようにして、当の伊織へと襲い掛かる。

 きっとその景色は、伊織にとってを大量に映し出している事だろう。

 事実、一人相手にその物量による攻撃は、やりすぎだというもの。

 だが、目の前で駆ける魔法少女相手に不足無しと判断をされるほど、歴種の"ケモノ”は伊織の事を、命奪われるほどの危険視をしているのだ──。


 爆発による衝撃。

 地表から吹き出る溶岩が、視界を塞ぐ。

 ──完全に、当の伊織の姿は見えなくなっていた。


『菟、ゥゥゥゥ……』


 だが、警戒を緩める事はない。

 感覚ではない。

 ただまだ生きていると、そう告げているのだ。


「危ない。危うく焼き鳥になるところだった……」

「──ですけど! 私が来たからにはもう安心ですわっ!」

「いや、守ってくれたのは有難いけど、もう出るからね」

「何……ですとっ!?」


 煙が晴れた先──。

 そこには、五体満足な姿があった。

 炎による壁。それは噴出する溶岩を防ぐと共に、射出された石槍を完膚なきまでに燃やし尽くした。

 あまりにも法外じみた、終焉の炎。

 しかして、これを操るカレンが味方である事の、どんな幸福な事か。

 ──もっとも伊織自身、そんな浮ついた言葉を言うつもりは、先にも後にもないのだけど。


「──そう言えば伊織さん。炎の使い方について、ご教授のほどは必要ですか?」

「いや、なんとなくだけど伝わってきたから。へー、皆こうやって使うんだ」

「愚問でしたね。──であればその不名誉は、私自身挽回してみましょう!」


 "ケモノ”の口腔から放たれた焔。

 あらゆるものを消し炭にする、終焉の炎。

 先ほどは完全に防がれたのだから、カレンの操る炎と拮抗している今回の方が、明らかに強力なものの筈だ。


「──レッドカーペットの用意、ご苦労さん」


 そう言う伊織の振るう『絶海制覇』に、先ほどカレンが操っていたものと同等な炎が纏われる──。



《柳田我流剣術、焔裂き》



《柳田我流剣術、朧》



 切り裂かれ、レッドカーペットの道は出来た──。

 駆ける。

 駆けるのだ。

 迫りくる赤熱した石槍を、当の伊織は回避するまでもなく、焔纏う刀を振るうだけで処理をしていく。

 そして、後ろで爆発するソレを見向きをせずに、伊織は再度その間合いを詰めに掛かるのだ。


「──っ、ちぃっ!?」


 だが、それほど上手く行く筈もない。

 吹き荒れる、赤熱した石槍と吹き荒れる溶岩と。

 そして、満を持したタイミングでの振り下ろされる"ケモノ”の剛腕。

 回避、出来た筈なのだ。──しかし、完璧なタイミング、伊織が処理遅れたのも相まって、最悪なタイミングを掴まされた。

 圧倒的な──。

 明らかに、伊織限定の対策だ。


「(──思っていたよりも早い。知能が高そうだったから、その可能性は危惧していたが。まさか、私に対して独自の対応をしてくるなんて)」


 死に体となった伊織へと突き出される、即死に至る鋭き爪──。

 回避受け流しは、到底不可能だ。

 それでも伊織は、無理矢理体勢を整えると同時に、その歴種の"ケモノ”の一撃を受け流した。彼女の背後の木々が、見るも無残な姿に薙ぎ払われる。


「──はぁっ!!」


 そして、更なる躍動を以ってして、伊織は反撃と云わんばかりの。──それを、歴種の"ケモノ”の死に体へと持っていかれた腕に、鋭き斬り傷が刻まれる。

 ──噴き出す血飛沫。

 悲鳴を上げ、痛みによって怯む"ケモノ”。

 罠かもしれないが、それでもこの大きな隙を見逃す訳にはいかないのだ。


「(──取った!)」


 闇雲に振るわれる、それだけでも暴威の塊に満ちた歴種の"ケモノ”の、最後の悪あがき──。

 それが何だと、──伊織はその真正面から、回避し受け流し。

 そして最後には、伊織の間合いにして、絶殺の一撃が見舞える境地へと足を踏み入れた。






『──■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!」






 言語体系に属さない、その意味すらも読み取れない。


 世界すらも歪ませる暴威或いは権威が、戦場の空気を一変させる。


 嗚呼、いずれにせよ──。






「──おいおい。今からと言う訳かよっ!?」


 珍しく冷や汗を流す伊織が、そう呟いた──。

 あり得るだろうか。

 少なくとも、これまで歴種の"ケモノ”が受けた傷は、そう浅いものではない。今までの"ケモノ”だったら、消し炭になっていてもおかしくはないのだ。

 その上で、歴種の"ケモノ”が、ブチ切れた様子でそこで暴威を撒き散らす──。

 流石は、一国家をも相手取る事の出来る"ケモノ”と言うべきか。

 その圧倒的で覇気すらも感じさせる様模様は、──。


「──な!? 早──!」


 標的を見定められて、そして伊織は迎撃態勢へとすぐさま移行をした。

 流石と言うべきか。

 それでも、伊織の予測を遥かに超える速度、内包するであろう威力を以ってして襲い掛かってきた。

 他の人よりか頑丈な作りである伊織の肉体も、これは受け切る事は不可能だと、そう危機感知が告げている。直撃をすれば、そこに残るは意識亡き肉の塊だけだ──。


「──伊織っ!」

「──ちぃっ! 間に合うかァ!」



《黒澤流弓術、



 ──済んでのところで、伊織に対して援護射撃が入る。

 涼音の弓術、魔法少女デスガンによる使い捨てなマスケット銃による射撃。

 ほんの一瞬、たかが一瞬。

 それでも、伊織が体勢を整えた上で回避するに、そしてその余波を碌に食らう訳でもなく、伊織にとって十分な時間と呼べた。


「──伊織さんに手出しをするなんてっ!? その行い、万死に値しますっ!!」



《柳田流鉄糸術、死縛転陣》



 そして、カレンの言葉と共に、当の歴種の"ケモノ”の足もとから、巨大な炎の槍が突き出される。

 その数、甲種であろうとも消し炭にするであろう火力を以ってして、その三倍。

 更に炎の渦が、暴威へと対抗するべく、その傷だらけの肉体を焼き焦がす。

 その上でカレンは追撃と云わんばかりに、鋼糸によって"ケモノ”の体へと巻き付けると、そのまま引き抜いた。


「──ぐっ、がぁっ!!」

「──カレン!」

「やっぱり、その、名前を呼び捨てで呼んでくれるのは嬉しいのですが。残念ながら、もうこれ以上は


 そう消えるような声で呟くカレンの体は、所々焼け焦げていて、その白魚のような指先も幾つもの生々しい傷が刻まれていた。

 無理もない──。

 途中参加だったとはいえカレンは、甲種と乙種の援軍を壊滅させた上で、こうして歴種の"ケモノ”と対峙しているのだ。他の魔法少女だったら、とっくの昔に死んでいた筈の困難の連続であったあろう。


「……あぁ。ゆっくりと休んでいろ。──後は、が何とかするから」


 そう言って伊織は、カレンに対して後退するように指示をする──。

 戦力低下が致命的な伊織たちにとって、これ以上の離脱者は避けたい。

 故にカレンには、厳しくとも自力で後退して貰う必要があるが、それくらいの体力などが残っていて嬉しい話だ。


「──さて」


 思考を切り替える──。

 どうしたものと、思考回路が加速をする。

 圧倒的な格上。少なくとも、では太刀打ち自体はできるが、勝つ事は難しい。

 確かに伊織は、魔法少女として当たり前なマホウを身につけた。

 だがそれは、所謂に過ぎない。

 抜本的、根本的。

 伊織自身


「……」


 しかし、はある──。

 切り札へと切り札の重ねがけ、或いは乗算方式な切り札の展開。

 だがそれには、相当な後遺症を覚悟しなければならない。──数ヶ月に渡る、身体能力的な欠損。或いは、治癒する事のない罪禍か。


「(──でも、此処で朽ち果てる──死ぬよりはマシでしょ)」


 覚悟なんて、罪禍を背負った時から決めている。

 『絶海制覇』を握る手が熱く、そして寒くなる。



「──まさか、私以外に無謀な奴がいるなんてな」



「──それが何かなんて、私にとって知る良しもないのだけど。──それでも伊織さん、貴女だけではないんです」


「──蓮花に負けるなんて業腹ですが。むしろ、ボクたちに手伝わせてください」


「──あァ、乗り掛かった舟を途中下車するのも、あまりにも忍びないしなァ」


 覚悟を決めた伊織を追い抜かして行く、国家防衛を担う魔法少女な彼女等──。

 戸惑いはない。

 希望もない。

 そんな逆境の中、生き残ろうとした訳ではない。



「……──たっく。私なんか放っておいていれば、もう少し生きられたしれないのに」

「──別に、死ぬつもりなんてないですよね」

?」

「ですから、その勝ち馬に乗ろうとするのは間違い?」



「──はっ! 精々、私の足を引っ張るんじゃねぇぞっ!!」



 その伊織の言葉と共に、彼女等は駆け出した。

 奇しくも同時に、歴種の"ケモノ”は、真子島全土に届くほどの雄叫びと共に、戦闘状態へと再度移行をする。

 ──此処に、真子島攻略作戦、その最終段階が開始された。



 /



 吹き荒れる溶岩と、飛来をする赤熱した石槍。

 対するは、銃撃と拳撃と、そして剣戟。

 その様模様は、誰一人として入る事を許さぬ、激戦舞台のようであった──。


「──私に続けっ!」


 そのの中で、一際突出しているのは、『絶海制覇』を振るう伊織。ただでさえ、素の状態でも恐るべき身体能力を維持していたというのに、親和性の高い身体能力強化も相まって、単騎で一国家をも相手取る事の出来る歴種の"ケモノ”と互角の立ち回り。


『──菟、ォォォォッ!』


 だが、侮る事なんて出来る筈がない──。

 全方位に突き出した赤熱した石槍。

 それを回避した伊織に向けて、螺旋状を以ってして加速をした赤熱した石槍が、彼女に向けて撃ち出される。


「何のこれしきっ──って!?」


 殺意込められた絶殺の一撃。

 だが、それはだと、伊織は数瞬の遅れがありつつも気付いた。

 迎撃する伊織の足もとが割れ、そこから意思を持った溶岩が溢れ出ようとしている。たとえ、魔法少女であろうとも、一撃で消し炭になりかねない。

 その上、伊織が対応が遅れたのも、彼女目掛けて飛来をした赤熱した石槍が、予想以上の威力と速度を以ってして放たれたからだ。

 そして伊織は、足元から吹き出た溶岩の中へと消えていった。


「──っ、伊織さん!?」

「……──あぁ、大丈夫だ。さっさと前を向け」


 何処からともなく聞こえてくる伊織の声。

 そしてその数瞬後、噴き出した溶岩を切り刻むように、そこから伊織が姿を現したのだ。

 その手に握られるは、──燃え盛る『絶海制覇』。カレンのマホウによってエンチャントをされた、魔刀であった。


「──さて。私もそろそろ戦線復帰しないとなぁっ!!」


 そして、伊織は再度駆け出した──。

 迫りくる赤熱した石槍、吹き荒れる溶岩。

 それらをものともせず縦横無尽に、伊織は更に歴種の"ケモノ”との間合いを縮める。


「──いざ、無法にて」

『──尾、ォォォォ』



《柳田我流剣術、朧》



 縦横無尽に、爪と刀が切り結ぶ──。


「──よっと!」


 時には、刀の間合いではなく徒手空拳蹴撃の間合いへと変化させ、千変万化と戦闘形態を変えていく。

 確かに伊織の戦い方は、基本柳田流に属する剣術。

 だが、この手のが都合が良い──。


「──ちぃっ!? やっぱり早々に対策されるのか、よっ!!」


 それを、想定内と言うべきか──。

 地中から生えるようにして出現をする、赤熱した石槍。確かに、噴出をする溶岩をも処理できる伊織相手にするならば、より彼女に対して爆発的負荷を掛けられる石槍の方が合理的だ。


「さて。──後は任せたぞ、!」

『──菟ッ!?』



《柳田流体術、膝脚》



 伊織は、歴種の"ケモノ”の頭部を掴むと、そのまま膝蹴りをぶちかます。

 そして、その体勢を維持すると共に力を溜め、伊織はそのまま蹴り飛ばすように、全長50メートルはあろう巨体を吹き飛ばすのだった。

 その巨体が吹き飛ばされた直線は、まるで削られた荒地と化す。


「──まったく。頼ってくださいとは思っていましたが。相変わらず、人使いが荒いですねっ!!」


 木々の合間を抜け、黒鋼の輝きを放ちし腕を構える蓮花の姿──。

 曰く、甲種の"ケモノ”をも粉砕するほどの剛撃を内包せし、鋼の義手が機械音と共に起動をする。

 だが、そんな見え見えな迎撃を、歴種の"ケモノ”が見逃す筈もない。

 すぐさま、伊織によって蹴り飛ばされた際の威力と地面を何度もバウンドする自身の体を、砂煙を上げて無理矢理にでも立て直し、その蓮花の一撃に備え迎撃態勢を取る。


『──菟、ォォォォッ!!』

「役不足?かもしれません、が! 頼られたい人からの信頼ならば、答えてみせるというのが、私の本懐! ──冥土があるかは知りませんが、せめて土産となるを輝きを見せましょうぞ!!」



《柳田流体術、黒式蒼撃・改》



 迎撃態勢を取る蓮花に向かって振り下ろされる絶死の一撃──。

 蓮花はそれを紙一重にて回避すると、そのまま歴種の"ケモノ”の懐へと拳を引き締め潜り込む。

 ──力を溜め、そしてショットシェルと排莢音と共に、蒼炎が黒鋼の義手から漏れだす。

 そして、蓮花の渾身の一撃が"ケモノ”の胴体を直撃し、一際蒼炎が輝きを増し、爆発をもするのだ。

 あまりの暴威的な威力。事実、一連の蓮花による渾身の一撃が直撃した"ケモノ”の巨体は、そのまま宙を舞う。


『──菟、ォォォォ』

「──っ、伊織さん!」

「あぁ。溶岩が地面からの出現による限定的な攻撃ならば、使!」


 そう、これを伊織は待っていた──。

 強化をされた伊織に対して妨害となるのは、赤熱した石槍と地面から吹き出る溶岩。確かに後者は対策はされても、それに対応する時間はなるべき縮めたい。

 故に、この場──この

 残る妨害策は、爪による斬撃と赤熱した石槍のみだ。

 だが。



 此処に例外が存在する──。

 


「──え!? マジですか!!」


 蓮花が驚くのも無理ない──。事実、伊織自身もとても驚いている。

 だが、よく考えれば当たり前な話だ。

 赤熱した石槍や溶岩を操る能力に目が行くだけで、があったところで

可笑しな話ではない。


『尾ォォォォッ!!』


 溜めに溜めた暴威の奔流が、人類防衛の最前線に立つ彼女等に向けて放たれた。

 ある種、プラズマ兵器とも呼べる塊──。本来ならば、全てを破壊し尽くさんとする暴威そのものであっただろう。

 だが、生憎と──。



《柳田我流剣術、焔裂き》



「──私に斬れないものなんてない! なんて壮言言うつもりなんてないが、──生憎とソレは、私が斬れるものだ」


 ──此処に、人類防衛の担い手一人。

 伊織が刀を振り上げるようにして振るえば、その暴威の暗雲は、切れた蒼天の如く晴れ渡る。

 だがしかし──。

 故にこそ伊織は、に気付く。

 それはまるで──まるで──。




「──クソがっ!? 凶星の流星とでも言うつもりかよっ」




 ──その伊織の言葉の数瞬後、伊織の見ている未来の景色が具現化されようとしている。

 それは流星だ。

 いや、比喩や妄想の類だったらどれほど良かったか。

 人──魔法少女でさえも容易に殺す事の出来る赤熱した石槍だが、込められている力は前のとは比べ物にならない。そしてその数──にも上る大規模破壊兵器は、これまで以上に歴種の忌み名に恥じぬものであった。

 もし放たれる事があれば、少なくとも真子島消滅。その上で起こる一次二次災害は、死者総数数万はくだらない。軽傷者なども合わされば、その数は桁すら上がるであろう。


「……──伊織さん」

「まぁ焦るなって。別にこのくらい、私でもどうにかなるでしよ。もしかして、蓮花でも上手く行ったり」

「……」


 と言う伊織であったが、事実蓮花の思う通り、この状況は危機的なものだ。

 それこそ、伊織が全力で当たらなければならない窮地。

 しかして──。




「──ま。ここは、さ」




《黒澤流弓術・奥義、四天流星》



 夜空より降り注ぐ、凶星抱く流星群──。

 破滅。暴威の塊となって大地を平定す。

 星を斬る、射貫く数多あれど──。



「……──少しは、伊織に近づけたでしょうか?」



 ──。



 涼音の一射によって、砕かれた赤熱した石槍が、戦場たる地上へと降り注ぐ。

 無効化された──。

 だが何も、この戦いに勝利した訳ではない。


『菟、ゥゥゥゥ──尾ォォォォッ!!』


 未だ戸惑いこそあれど、次手と云わんばかりに、歴種の“ケモノ”のあぎとが開く。

 先程の竜咆を再度放つつもりらしい。

 だが、この絶好の機会をが見逃す筈ないし、そんな高度を取っていたとなればされてもおかしくないのだ──。



『──菟我ァ!?!?』



 雷光が如き砲弾が発射をされる──。

 遥か遠くから発射された砲弾が、歴種の“ケモノ”の胴体を撃ち抜く。苦悶の声。

 だが本来、この距離の狙撃を可能とする砲身と設備と、使用する砲弾があるのか。

 そもそも、規格が合う砲身があるかどうか怪しい。


 だが、見覚えある筈だ──。

 その発射された方角──海岸から数キロ離れた地点。

 そしてその、規格外な砲身を積めるだけの大きさ。


「──かと思っていたけど。案外、やる時はやるもんだな」



 ♦♢♦♢



「──電磁対応89式徹甲弾、仮称【Σ標的】への着弾を確認しました」

「次弾及び砲身の冷却を急げ!」

「──了解ぃ!」

「今の狙撃のデータを残しておけ。それと、誤差についても調整!」

「了解しました!」


 艦内が激しく動き回る──。

 艦長でもある賀状の号令と共に、彼ら乗組員はそれぞれの仕事、役目を果たす。

 だがそれは、艦長である賀状の独断である。

 今は、現場にいる彼らが必要と思っていたからであって、もし上の将校や役員などにバレようものなら、相応の処分を覚悟しなければならない。


「我々も。──総員、今回の不備の責任は、この俺──皆森賀状が引き受けた! 国家を守る防人は俺たちだと、その証を示せっ!!」


 だが、それはあってはならないことだ──。

 しかしてそれは、何も憐敏の類いではない。

 彼女等だって、それ相応の覚悟を以てして、この戦いに挑んでいる筈だ。その覚悟を無下にはできない。

 だが、たとえ何と言われようとも──。



 ──そこに確固たる意思があるならば、と。



 ♦♢♦♢



 高度を落とし墜落をする歴種の"ケモノ”──。

 腹部を狙撃された事で、大量の血が流れ続けている。

 致命傷──。しかして、十分な休息と栄養があれば復活できるという、その驚異的な生命力は、流石は歴種と言わざるを得ない。

 事実、致命傷だというのに、その瞳はまだの燃え盛る感情が収まる様子はないのだ。


『──菟、ォォォォ』


 彼等──"ケモノ”にとって、種族の存命という無意識集合体は存在しない。

 意思や思考も、ただ効率面を考えた結果に過ぎない。

 だがその雄叫び。──己の命を燃やし尽くさんとする意思と殺気だけは、離れた位置にいる伊織と蓮花にも届いていた。


「……伊織さん」

「──あぁ、


 そう静かに呟いた伊織は、一歩前へと進む。

 恐れる必要なんて、ない──。

 そもそもこれは、生存競争そのものだ。

 勝ったものが繁栄をし、負けたものが死滅する。歴史上、どこにでもありふれた、極々当たり前の事象に過ぎない。


「──……ふぅっ」


 故に、恐れる必要なんてない──。

 としても、それでも生きたいと思う意思に、優劣なんて俗なものは存在しない。



 ──ただ勝ちたいと、願いを叶えたいと。



 伊織が一歩前へ出るには、些細で当たり前な、その程度のもので十分だった。



『──菟、ォォォォッ!!』



 伊織への警戒心が最大に達した歴種の"ケモノ”──。

 撃ち出すは、赤熱した石槍による連続掃射。

 満天に舞う星月。

 祖は流星となって落ちて来るのだ。


「──伊織さん。あの一番大きいのは私に任せて下さい」

「見ておいてやるから、さっさと片付けてこい。だが、まだ私がいるから、最悪どうにかしてやるからな」

「……そう言われては、──姿!!」


 力を溜め、そして跳躍。

 その姿は、かつての歴史書にも書かれたが如く。



「──はぁぁぁぁああああぁぁぁぁっ!!」



《柳田流体術、覇脚迅拳》



 加速をした蓮花が、一際巨大な石槍へと近づく。

 後戻りなんて、今更する気なんて更々ない。

 そんなもの、この一か八かの展開において、致命的な雑念に成り下がってしまう。

 ──いや、一か八かなんてこの際どうでも良い。


「──絶対勝ってみせるっ!!」


 黒鉄の義手と巨大な赤熱した石槍が、互いの威力を余す事なくぶつかり合う。

 燃える。──蓮花の体が燃え出す。

 だが、そんな些細な事どうでも良いとでも言わんばかりに、その信念を抱く黒鉄の義手を振り抜いた。


「──これで、終わりですっ!!」


 その直後、細かな罅が巨大な赤熱した石槍へと入る──。

 それはまるで、伝播するかのように全土へと広がる。

 そして、自身のエネルギーに耐えきれなくなったのか、蓮花によって刻まれた罅によって自壊を始める。


「──ぐっ、がぁっ!?」


 だが、その偉業を成し遂げた蓮花だったが、何も無傷とは言えなかった。

 そもそも、先ほどの衝撃をまともに受けた蓮花の体は、動かなくなんてもおかしくはない。

 その上で、巨大な赤熱した石槍が自壊した際に漏れ出した膨大なエネルギー。そして、大爆発をもろに食らった蓮花の体、魔法少女としての心象礼装が既に機能を停止するほどにボロボロだった。


「……──、あ」


 動かない。

 ただ、自由落下を繰り返す蓮花自身の体。

 そして、蓮花の曇った瞳の先には、まだ五体満足な歴種の"ケモノ”の姿があって、彼女自身を仕留めようと、その顎を開く。

 竜咆──。

 ボロボロになった蓮花自身のこの体では、即死は免れないと言えた。



 ──だが、その曇った蓮花の瞳は、



《柳田我流剣術、焔裂き》



「──後は私に任せておけ!」



 他の赤熱した石槍を足場にしつつ、ここまで登ってきた、頼もしき伊織の姿──。

 そして伊織は、再度竜咆を己の剣術によって無効化、霧散させた。

 戸惑う歴種の"ケモノ”。

 ──嗚呼、英雄とは斯く言うものだ。


「──伊織さん。後は任せました。──っやっちゃってくださいっ!!」


 伊織からの返事は一切なかった。

 だが、その伊織の後ろ姿が物語っていたのだ。

 ──勝ってくる、と。



「──」



 その直後、伊織の駆ける速度が加速をする──。

 影すら置いていくと云わんばかりの加速は、その瞳では捉える事は叶わず。ただ、伊織によって置いてかれた影の痕を捉えるだけだった。



『──菟、ォォォォッ!!』



「──っ!」



 伊織が歴種の"ケモノ”との間合いを潰した瞬間、その強靭な爪が振るわれた。

 待ち伏せ。

 その加速した伊織の姿を捉えられないと判断を下した"ケモノ”にとって、それはと言えた。

 だが──。



「──私も随分と舐められたものだな。で、この私に勝てると思うなよっ!!」



 吼える伊織は、その渾身の歴種の"ケモノ”の一撃を吹き飛ばした──。

 体勢が崩れる"ケモノ”の姿。

 そして伊織は、無様な隙を晒した"ケモノ”の急所──喉元を狙って、加速したその絶殺の一刀を振るうのだった。



《柳田我流剣術、第二秘刀・極星一世》




『──!』



 時間すらも斬られたと云わんばかりの静寂と鋭き一撃──。

 その一撃は、確かに歴種の"ケモノ”の頭部を切り飛ばした。

 切り離された頭部又体は、もう動く気配はない。

 その事実を咀嚼した伊織は、自由落下をしつつも笑っていたのだ。



「……──ははっ、ははっ! ようやく倒せたかっ!」



 そんな彼女の表情を、地平線の向こうから顔を出す朝日が、静かに照らす──。

 笑っている

 笑っているのだ。

 伊織自身の願いへとのもあるが、これほどまでの気持ちの良い勝ち方は何時振りだろうか。

 本来は、こういった戦場では素顔を見せぬのが通例。

 だが不思議と、伊織自身の微笑は止まらなかったのだ。



「──ぁあっ! 最高だ」



 孤高の天使は翼を折る──。

 だがそれは、何も悲哀を抱く洛陽ではない。

 ただ、姿は、どこまで行っても普通の伊織の姿──『鹿』──だった。



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 お疲れ様です。

 感想やレビューなどなど、お待ちしております。


 ようやく鬱も収まりましたので、頑張っていきたいと思います!

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