第三章『鳥ノ謳』
第055話『意味のない朝食』
──朝に起きた。
いやもう、昼間辺り、か。
しかして、部屋に備え付けてある窓全土にあるカーテンが閉まっており、今現在時刻を知るには家に同じく備え付けられた壁時計か、それともスマホなどのデジタル時計しか知りえない。丁度、午前十一時ぐらいだろう。
その荒れ切った煤けた水色の髪を垂れ流して、まるで生きる屍の如くその瞳でそう独白する──。
「……」
目が覚めた雫は、かなりの遅めとなってしまったが、朝食を取る事にする。
一日の初めというには些か遅すぎる朝食であるが、そもそも朝食という行為は一日のエネルギーの初期補充だ。補充なくしては、任務を遂行する事はできない。
──ぐぅっ。
お腹の音が鳴る。
食べたい気持ちどころか、三大欲求たる食欲すら湧かない現状。
それでも、ここ数日まともに食事を取っていない雫の胃は、己の精神に反して自己主張を続ける。──私はまだ生きたいのだと、見当違いな意見を述べ続けて。
「……」
今日の朝食は、お粥とコンソメスープ。
いつもは、凪と雫としては朝はパン派であったのだが、胃が碌に機能してくれない現状では、朝食を戻す事だろう。そんな事を雫自身は知る由もなく、ただただ本能に付き従って選んだ結果なのだが。
お粥は、基本的なお湯に付き浸したお米。スーパーなどで販売されている物の中には、具材が入っていたり出汁で味付けされている物もあるが、そんな些細な心遣いでさえも雫の体は拒絶をしている。
コンソメスープは、先と同じように具材が入っていない質素過ぎるほどの汁物。汁に浸した野菜でさえも胃は受け付けておらず、ベーコンなどの肉類なんてもってのほか。
「──っ」
──肉類。
その頭の中に浮かび上がったワードだけでも、胃の中を駆けあがる嘔吐感。しかし、今頃雫の胃の中は空っぽで嘔吐する事はないのだけど、幻惑でも体感させられているかのような、疑似的な嫌な感覚であった。
それでも雫は、──朝食を食べる。
食べたくなくても、──朝食を食べる。
このまま餓死しても良いと思うのだけど、──朝食を食べる。
「──嗚呼。コンソメスープが冷たいなぁっ……」
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お疲れ様です。
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