第033話『二番弟子』

「まさか、虫刺されの薬がもうなかったなんて、………痒い」


 あの後、伊織は今になって痒みが再発したのだ。

 それで、痒みを止めるために虫刺されの薬を何とか探し出したのだが、まさか空だったとは、伊織もそう思わなかった。完全なる予想外なのである。

 しかも、先ほど伊織が行った薬局なんかは、虫刺されの薬がなんと売り切れだったのだ。まさか、彼女の身に起きた事が、もしかして他にもあったのだろうか。

 ただまぁ、何件か通った末に、伊織は虫刺されの薬を手に入れる事ができたのだ。


「……これって、完全に……。いや、何も言うまい」


 これを言ったら、自分が惨めな気持ちになると、伊織は思ってしまう。


 ──梓ヶ丘の夜景は相変わらずに綺麗だ。

 そう、夜の梓ヶ丘を歩んで伊織は、そう思うのだ。

 ネオン色に照らされたけばけばしいほどに照らされた街灯風景ではなく、仄かに照らされる温かみにある焔日のような街灯風景。一体どれだけの金額が継ぎ足されて売るのか伊織には知る由もなければ、また知る興味もないが、それでも息をのむほどにソレは綺麗であった。

 もっとも、この光景に慣れたいつかは、──日常となることだろう。


「相変わらず、夜中だというのに人が多い事で。……人々が寝静まっている最中に“ケモノ”が襲ってきた時は、一体どうするつもりなのだろうか?」


 伊織の聞いた話だけにはなるが、“ケモノ”が日中に活動するという話は聞いたことはない。夜行性という事もまた。

 そもそもの話、伊織が最初に“ケモノ”と遭遇した上に魔法少女となったあの日は、丁度夜中であった。また、いつも彼女が戦っている時間帯は、日が昇っている時間帯だ。


 つまるところ、野良の魔法少女ではなく、正式な魔法少女が“ケモノ”を討伐をしているという事なのだろうか。

 そんな深夜などにご愁傷様というべきか、それとも同情からありがとうとお礼の言葉を言うべきか。

 と伊織もそう思うのだが、彼女は気付いているのだろうか。

 ──伊織は決して例外ではなく、むしろ当事者になるのだと。


「……。こんなところに、石畳の階段なんてあったっけ?」


 思いつかないふりをして、伊織は帰路に付こうと少しだけ遠回りをしようとしたのだが、そんな時に見つけた見知らぬ道。

 別に見知らぬ道ぐらい、そう珍しいものでもない。

 例えば、地元民であるのなら見知らぬ道なんてないのかもしれないのだが、それは長い年月その土地で過ごした故の話だ。もしも、片手で余裕で数えられる年月なのだとしたら、それは可笑しな話ではないのだろう。


「まだ時間に余裕があるし、少しだけ行ってみるかな。……どう考えても今日は、あまり運がよくないからな」


 そう言う伊織の目の前に連なる石畳の階段。別に何があるとは書いてはいないが、それでもある程度の察しは付くというものだ。


 ──石畳を叩く音が、微かに聞こえる。

 昼もまた神秘的な趣があるのだが、夜はまたがらりを表情を変える。

 そこはまるで、世界から隔離された神域のようであった。

 もっとも、すぐそばの壁を越えれば繁華街が広がっているので、人が容易に踏み込んではならない神域と、そう呼称するのは無理があったが。


「……やっぱり神社だったか」


 石畳の階段を登り終えた伊織の目の前に広がるのは、古びて小さな、存在感が失われつつもある祠。

 その周辺には何もなく、そこだけがぽっかりと空いた空間だった。


「よし、準備はできた。柄杓はだから使えないのだとしても、此処に来る前に賽銭は用意したし、一応お参りの仕方は合っている筈だ。……って、あれ?」


 なんとなく察していた伊織は、石畳を登る前に賽銭用の小銭を用意していたのだ。勿論、五円玉という、幸運とのご縁がありますようにと。

 それに加えて、柄杓で口と手は今が夜中なのだから仕舞われていて使えなかったが、それでもお参りの仕方はちゃんとした筈。

 しかし、伊織はそこで気付くべきだったのだ。

 ──夜中だという事は、賽銭箱は仕舞われている事に。


「……」


 これを、当然の事と言うべきなのだろうか。

 それとも、伊織の不運が重なった結果なのだと言うべきなのだろうか。


 そもそも、繁華街が近くでこうも人気がない境内だと、賽銭泥棒に狙われてしまう。

 しかし、この梓ヶ丘は比較的お金持ちが多く、賽銭泥棒をしないといけないほどの金銭的な理由だとは考えづらい。

 なればこそ、お小遣いを稼ぎに来た恥れじ者か、それとも盗み癖がある上に小心者かのどちらかなのだろう。

 という訳で、盗られた実績があるか防犯目的故か、賽銭箱が仕舞われているという事実は、間違ったものではない。


 さて、対して伊織はというと、最近は不運に恵まれている。とは言っても、比較的軽度な出来事ばかりなのだが、そろそろ本体が来そうなのだと、そんな予感が彼女は感じ取った。

 まぁ、感じ取っただけなので、もしかしたら外れていたという線もある訳で。

 しかしながら、その予感というのがどのようなものか。それが分からない以上は、少しぐらい神様とやらに願う程度ならば、さして問題はないだろう。


「ま、……帰るとするか」


 だが、使えない以上には、そのような問題は些事であろう。

 渋々と、神社を後にする他ない。

 そう結論付けた伊織は、神社を後にするために石畳の階段がある方向へ歩を進める。少し躊躇があるが、それは問題ないと、足は止めなかった。


 ──そんな時だった。

 最近、伊織がよく聞くようになったが、梓ヶ丘中を駆け巡った。




『ケモノノ災害。危険度は丙種。近くの避難場所に避難してください』




「……。いや、もしかしたら夜中に“ケモノ”が出るかもしれないという話を、独り言で言っていたのだけど。どう考えても都合よすぎないか?」


 主に、悪い方面での話ではあるが。


 そんな自らの不運を少しだけ呪いそうになる伊織なのであるが、それでも自らの願いのために“ケモノ”を狩っておきたい。それが彼女自身の本心だ。

 しかしながら、第二次試験の前半というかその際にて、一応野良の魔法少女としての活動を自粛するように言われている。これは、正式な魔法少女になるための試験を万全の状態にて、受けさせる魂胆故の事だろう。

 だが、自粛という言葉遣いなのであった。

 幸いにも、“ケモノ”が出現した場所と伊織が今現在いる神社とは、目と鼻の先だ。

 故に、偶然通りがかって人を助けた上で“ケモノ”を倒した──。そんな、筋書き辺りが、ちょうどいいか。


「よし、そう言う事ならどうにかなりそうだな──あ゛」


 その瞬間、伊織はつい忘れていた事を思い出す。

 いつも伊織が何処かへ出かける時には、竹刀袋に隠した日本刀を持ち歩いているのだが、それは少し離れた以上の場所に限る。

 勿論、今日みたいに近場へと出かけた時なんかは例外だ。たとえ、その後に寄り道をしたり遠回りをした時も同様に。


 それが、何気ないいつもの日常内なら、特に問題はなかっただろう。いや、剣術道場に顔を出す際に取りに帰る必要があるにはあるが、それでも取り返しの利く問題でしかない。

 だが、他の魔法少女に獲物を獲られる可能性の事を考えると、そうも言ってられない大問題だ。


「しょうがない。“ケモノ”がどれくらい強いのか分からない以上は、手を出したくないし。今回ばかりは見送るしかない、か……」


 流石の伊織も、相手取る“ケモノ”の強さも分からない以上、下手に手を出すことは憚れる。そもそも、徒手空拳で勝てるかは怪しいし、それに正式な魔法少女に獲物を横取りされた上で説教とか、あまり考えたくない事だ。

 確かに、急いで家に獲物を獲りに帰る事も十分可能なのだが、その時は広大な畑での収穫後の如く、途方に暮れる事になるだろう。


「……?」


 ──ふとした瞬間、伊織は背後が気になった。

 別に、後ろから自然の音に紛れた人為的な音が聞こえる訳でも、何かしらの気配がある訳でもない。むしろ、先ほどまでと何ら変わりない、そんな清廉なまでの空間であった。

 状況的、感覚的な異常は、何も指し示さない。

 けれど、勘が何かを伝えているようで。伊織は、ついつい背後に振り向いてしまう。

 ──それが、果たして正解だったかどうか。






「」


「」






 そこにいたのは、──可憐さ今だ残る、一人の彼女がいた。

 白い装いをした、まるで巫女服と云わんばかりの服装。けれど、その佇まいに違和感の類などはなく、ただただこの場所との相性や彼女の立ち振る舞いがそれらを消していた。

 そして、腰に携えるは、一振りの日本刀。刀身は今だ見えずにいるが、それでもその存在感は静かでありつつも圧倒的だった。


 別に衣装と小道具だけなら、この梓ヶ丘においてはさして珍しくもない。そもそもの話、伊織だって単衣の着物なのだから。

 しかし、そんな彼女の雰囲気というか、──その周囲に存在する空気ががらりと変わったかのように違うのだ。


「──ははっ。マジ──かよっ!?」


 その言葉を残して伊織は、その場から動けなくなった。

 別に、少女の殺気が凄まじ過ぎて一歩も動けないという、不甲斐ないものではない。伊織の体から筋肉の弛緩が抜けて、最大限のパフォーマンスを発揮しようとしている。


 だが、少女は伊織に、不用意な動きを許さなかった。

 伊織の見立てなのだが、恐らく彼女の得意とするのは刀身を鞘に納めたままな居合術。それも、日本刀を持ったままな伊織と同じぐらいには、鍛錬を積み重ね、実力も備えている。少なくとも、伊織が今までであって来た武芸者の中でも、トップを争うぐらいには。


 彼女の実力を知っている。

 だからこそ、伊織の瞳に映る|未が、彼女を動させないようにしている。

 そう例えば、伊織が時折見せる、神がかった未来視。それは、《マホウ》という不明慮なものではなく、による、予測の未来視。

 それを伊織は、自らが死ぬ可能性の高い事象、──“死線”とそう捉えているのだ。

 その死線を、気のせいだとか、少女が見せた気迫によるまやかしだと、そう断ずる事は可能だろう。

 だが、伊織が視た死線の感覚が、幼い頃にジジィに日本刀を振り下ろされた時に感じた、あのチリチリとした軽い痛みに似ているのだ。


 であるのならば、此処から逃げ出すのも一興か。

 しかしならば、このまま彼女を引き連れて家に帰る訳にもいかず、そも逃げ切れるかといった点も不明慮。それに加えて、先に視た死線が伊織自身の背後にも映されていて、おそらくは伊織のバックステップ分ぐらいには、今だ彼女の間合いなのだろう。


「(いや、どうすることも出来ないよな、これ。下手に動こうものなら、手か足か、それとも直接首を狙われかねないし。どうにか木の枝でも拾えないだろうか)」


 ──そんな時だった。

 伊織の予想外な事に、彼女の瞳から未来の死線が消え去った。

 そもそもの話、前触れなく突然に伊織の瞳から死線がなくなるなんて、まずありえない話だ。

たとえ、目の前の彼女が此方への敵意がなくならない限りは。


 そして、伊織の元へと投げ出されたのは、一振りの日本刀。先ほど、少女が携えていた二振りの内の一つだろう。


「──私を侮辱する気か?」

「」

「いや、そんな気はない、か」


 恐らくは、彼女は何もしてこない。

 この場から脱兎の如く逃げ出したのなら即座に刀身が宙に舞う事になるだろうが、伊織が日本刀を拾うぐらいは猶予がある。


 そして、伊織が手にした日本刀は、まるで鋼板かのような無骨な一振り。

 目の前の少女のように少しだけ華美なまるで宝刀を思わせる太刀ではなく、無骨で削られに削られた、伊織の好みの太刀であった。


「──心象投影インストール──開始スタート




 ──静寂に包まれる。




 ──奇しくも、仕掛け時は同じタイミングであった。




《柳田我流剣術、第五秘刀・雷光》



 踏み込んだ伊織は、まるで雷光の如く。

 そして、その刀身の切っさきは、それ以上を以って。

 それは伊織が持つ、最高速度の技。

 しかし、──。



《■■■■、■■》



 ──伊織が最大限の警戒をした彼女が、その程度技で落ちる筈がなかった。

 伊織と向かい合った時も対峙した時も、その鋼の煌めきを見せなかった刀身が、一瞬にして軌跡を舞う。

 先ほど伊織が繰り出した突きの、その合間を縫うように、斬り飛ばすかのように。切り上げるように、軌跡を描いた。

 だが、──。


「──そう来るよなぁ! なぁ、!!」


 瞬きの間に現れた、鋼の煌めき。

 ソレが現れた瞬間に伊織の刀身は、まるでこうなることを予想していたかのように、切り返しの如く併せに掛かる。

 そして、鍔迫り合いへと持ち込んだ。


 確かに、あの瞬間無理矢理にでも伊織は、回避行動を取る事も可能だったのだろう。それで、そこから反撃の一撃を加える事も。

 だがそれは、悪手だ。

 まだ間合いを取られるのならいい。再度、伊織が間合いを詰める事ができれば済む上、来栖とやらが抜刀状態であればまだ伊織の方が早い。

 だが、来栖が納刀状態であれば話は別だ。戦況は伊織の方が分の悪い振り出しに戻り、対応は更なる混迷を極める。

 ──そう伊織は、自らの技を攻略してくるのだと、そんな来栖を信頼しているのだ。


「──っ」

「──」


 鍔迫り合いから牙城を攻略しに掛かる伊織と、鍔迫り合いから仕切り直しを狙う来栖。

 ──今現在、状態は膠着状態だ。

 ある程度の高名な武術家ならば、話は別だった。

 しかし、来栖と呼ばれた彼女は、あのジジィの二番弟子だ。少なくとも、一番弟子たる伊織が顔を覚えるぐらいには、その腕は卓越している。


 ──血飛沫が微かに舞う。

 それは、鍔迫り合いで劣勢気味な伊織の肌が切れた、それによる軽い切り傷だ。


「(思ったよりも強い──! 単純な身体能力は私の方が上だけど、技のキレが半端ではないな)」


 高い身体能力というものは、それだけで脅威になりえる。何しろ、戦場で自分の出来る事が増えるのだから、高い身体能力というのはその言葉以上に重い。

 だがその一方で、その身体能力の差を埋めるのが、───技。身体能力が常人のそれとは違う伊織も、それを認めている。


「(しかし、このままだとジリ貧だ。を使えば勝てるだろうが、その時じゃない。そもそも、反動がかなりきついからな)」


 と伊織は思うのだが、そうも言っていられない。

 少なくとも、伊織は今だ劣勢状態なのだ。

 これが主人公だったら、未知の力というか《マホウ》に覚醒したり、突如として劣勢のまま見逃してくれる展開だってあるだろう。それが、運命力を持ちえた、主人公とやらの特権なのだから。

 だが、柳田伊織は主人公ではない。それは、彼女自身が一番、よく、知っている。

 だからこそ、──自らの道は自らで拓くべきなのだ。


「──」


 覚悟を決める。




「──基本術理、解析。


 ──身体操作、投影。


 ──使用武装、投射。………失敗。


 ──積載経験、憑依」




 四つある項目の内、叶えられたのはその内の三つ。

 本来は、四つの項目全てを成功させた時が一番能力を発揮できる。しかし、今現在伊織の持つ刀が愛刀クラスの名刀でもなければ四つの項目全ては難しく、それでも三つの項目だけでも十分と言えよう。

 問題は、──ない。


 しかして、導火線に火が付けられたのもまた、事実なのである。

 ある程度のタイムリミットは、伊織も周知の事実。それが過ぎれば、伊織の体はまるで他人の体のように動かなくなる───程度で済めばいいなぁ。

 


《柳田我流剣術、鎧通し》



「──!」


 ほんの少しだけ開いた隙に技をねじ込みつつ来栖を弾き飛ばすと、伊織は一息つく。

 不完全な状態な今では、たとえ伊織が魔法少女の体であっても、一回限りの技で複雑骨折は確定だ。そして、それ以上の回数の技を重ねたともなれば、もう原型のつかないほどにその腕は使い物にならなくなるだろう。

 そう、──それが伊織が獲得した


「──」

「──」


「──」

「──」


 互いに緊張が走る。

 伊織も、来栖も。お互いにある程度の手の内を知っている。

 そして、伊織が切り札を切ってきた以上は、そう簡単に来栖も踏み込んでこれない。下手をすれば、携える宝刀ごと自らの首を断たれかねない。


 ──そんな時だった。

 先ほど、“ケモノ”が出たと警報で聞いた方から、尋常じゃないほどの砂煙が舞う。

 それだけならば、さして問題はない。何しろ、“ケモノ”との戦闘は、種類によってはかなり激しい戦闘になるからだ。


「……。まだ、“ケモノ”を仕留められていないのか。──いや、あれは涼音か?」


 不信に思った伊織が遠目に凝視してそちらを振り向くと、砂煙からまるで逃れるようにして、涼音は飛び出してきた。

 そして、砂煙の中から飛び出した涼音を追うように、まるで大樹の枝の如くソレが彼女目掛けて伸びる。

 それに対して涼音は、自らの体を誘うと伸びる人間の胴体以上に太い枝を弾き飛ばすその勢いで回避すると、着地と同時に三本の矢が放たれる。しかし、何処からともなく現れた数本の枝が、その全てを絡めとる。

 涼音がそんな消極的な手しか取れていないとなると、その枝自体の量や強度が異常で、彼女は攻めあぐめているといった辺りか。


「──、仕切り直し、か」


 初めて言葉を発した、来栖が──。


「それじゃぁ、オレは帰るからな。じゃぁなぁー」

「……。それを、私が見逃すと思うか?」


 唐突に帰ろうとする来栖の歩を止めたのは、伊織の挑発とも呼べる、そんな言葉。

 実際、先ほどまでは伊織の方が劣勢であったのだが、彼女が切り札を切ってきた以上、伊織の方が優勢へと大きく傾いた。そしてその大きな傾きは、そう簡単に覆られないほどに凝固であるのだ。

 だが、違和感を覚えるのは、まるで伊織ではなく来栖の方が、見逃してやると云わんばかりのその表情や態度が気になる。


「おいおい、これでもあのクソジジィのだぜ。一緒に鍛錬を積み重ねてきたお前の事だって、少しは分かるさ」

「……」

「──そう例えば、“かつての剣豪の技をその身に降ろす、その越権行為”はまだ使っていない様子だが、それは後何回まで持つだろうな」


 ──気付かれた。

 伊織はこうして自らの強さを振りまいてはいるが、それでも全力とは程遠い。愛刀未所持も含めて、全盛期の5割ほどか。

 それはとある事情が関わってくるのだが、それは今は何処か彼方へ。

 そんな、今現在五割程度の力しか出せない伊織からすれば、彼女が行使する切り札とやらは、使えても二回。後遺症などの、今後の事まで考えたともなれば、今現在使える切り札の回数は、一回限りのものとなるだろう。


「あぁ、畜生。私の降参だ降参。行くならさっさと行け!」

「──ふっ、そう言うと思ったぜ」


 そう言い残して来栖は、まるで知人にでも会った帰り道のような、軽やかな足取りで踵を返すのだった。


「ああああぁぁぁぁ、畜生がぁ!!??」

「はっはっは。お姉ちゃんは、妹の事何でもお見通しだぞ♪」

「てめぇ……、私のお姉ちゃんじゃないだろう」




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