第三話〜緊急事態〜
「ミナト、このゴミ捨て場には何かあるかな?」
「うんんん……どうだろうな。少し探ってみるか」
「私もやる……」
さらに太陽は落ちて、辺りはすでにロウソクの灯りがないと、街を歩けないほどまで暗くなっている。
しかし兵士達は夜にも関わらず、俺たちを探すため歩き回っている。
「骨付き肉だった時の骨ならあるな。あとはゴミばっか……そりゃあ、そうか」
「見てみてミナト……」
「どうした? って、よくそんなの落ちてるな……」
ユリが取り出したものを見るために横を向くと、少しボロボロの下着を持ち、自分の胸の前に持ってきた。
本人の前では言えないがユリの胸はそこまで大きくない。
この下着とユリのサイズは噛み合わず、三段階ぐらい下着の方が大きい。
「これ似合うと思う?」
「ユリには、そんな汚い下着なんかつけて欲しくない……故にその下着は元の場所に戻そうか」
「ミナト、エッチ……私の胸を覆うためには大き過ぎるところを想像してた……」
「まあ、多少は……」
俺はすぐに考えたことがバレ、頬を少し染める。
ユリは胸を隠すような動作をした後に、頬を俺の同じく染め、元の場所に下着を戻した。
「なんだ?」
「なにか見つけた?」
俺の踏んでいるところに違和感を覚え、下敷きになっているものを持ち上げると、それは……あれだった。
「ミナト……夜襲いに来そうで怖い……」
「襲わないし、襲おうとも思わない……しっかし、俺は何てものを引いたんだ……」
俺が手にしていたのは女性用のパンツだった。
先程、ユリが拾った下着の物と同じ色だったので恐らく同じ人物の物だろう。
「こんなに彩色センスない奴なんか、女子にいるんだな……」
「ちなみに私はあるから……」
まだ何も言ってないのに察したユリはいち早く、否定をした。
ユリの現在つけている下着の色なんか知らんが、こんなに早く否定するのは多少は自覚があるからだろう。
人間は少しでも思い当たることがあれば、すぐに否定してしまう。
「とりあえず、飯になるものはなかったな……」
「うん……骨しかなかった……次のところ行く?」
「今日はもう遅い。南側にある
「でも危ないよ、スラム街は……」
「心配すんな。あそこには、俺のじいちゃんがいたはずだ」
「あ、挨拶とかした方がいいかな?」
「挨拶嫌いなじいちゃんだから、しない方が身のためだぞ?」
「……分かった……」
ユリは俺が『じいちゃん』と言う単語を発した瞬間に、モジモジしながら恥ずかしそうに言う。
俺はそんなユリの仕草を見て、『どこで恥じる要素があったんだ?』と考える。
と、その時。王国の方で信号弾が放たれた。
上空で赤く花火のように爆発して、人々はその明るさに見惚れる。
「まずい……ユリ! こい!」
「どこ行くの!」
俺はこれを知っている。
牢獄生活で何度かこの音を聞いた時がある。
そして看守同士がこう会話していた。
『また始まっちゃったね』
『そうね。今回は無事だといいけど……今日は……
そう今日は王国誕生の記念日だ。
それと同時に
"ゾナス"、"ガル"、"アルバカ"、王の剣と呼ばれる三人が街の様子を観察に来る。
もちろん……スラム街にもだ。
ここからどうやってユリを守れる? こんなところじゃすぐに魔力感知範囲に入ってしまう。
「ユリ! 俺の言うことを聞いてくれ! スラム街に行く予定だったが、緊急事態が起きた!」
「どうしたの! ミナトらしくない! 王国誕生の記念日なんだよね!?」
「そうだ……でも、こんなのは記念日なんかじゃない! ただの……
そうユリに言ったそばから俺の知っている一個のスラム街の方から爆発が起きた。
俺はその方向を見て大きく目を見開いた。
すでに蹂躙が始まってる……これは……スラム街の殲滅を目的とした記念日だ。
王はこの爆発を花火として丸く収めているが、どこがこれの花火なんだ。
ただの……
「逃げろ!」
「待って! でもこれは花火なんでしょ!」
「花火を知らない奴はそう思うかもしれない……でも、俺は知っている……
「え……ならこれは……」
「失礼するよ……」
俺はユリを抱え、この場から本気で駆け抜ける。
今までにないぐらいの力を出して。
■■■
そして時は過ぎ、コフカ地域のスラム街は消滅した。
今回も花火と丸く収まり終わった。
そして俺は……この爆風に襲われ、危うく命を落とすところだった。
いや、ユリの方が命を落とす一歩手前だろうか……
「『恋の天秤』、死刑対象者の逃走劇」 ゆずりは @Akisyu
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