第98話 既視感
予選は各会場で順調に推移し、日が落ちる前に無事終わりを迎えた。
やはりというべきか、ケントと面識のある生徒達は順当に勝ち上がってきている。
例外は得意分野が異なるギーク、スティーブ、イルマ。
彼等はこういった競技では強みを活かしづらいのでやむを得ないとケントは考えていたが、想定以上にイルマが悔しがっていた。
訳を聞くと、「さすがにメグさんは無理だよ!くそーー!!」との事。
ケントは上手い言葉を発せず、静かにイルマに同意を示す事しかできなかった。
かくして闘技戦初日は終了したのだった。
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翌日。
未だ草木に雫が残る早朝に、予選を通過した128名は、魔法掲示板の前に殺到していた。
トーナメント表が表示された為である。
(面識の無い方も多いですが、順当に行くと…ふむ。あの二人が当たる事になるのですか。完全ランダムの筈なんですがね…)
ケントは複雑な表情を一瞬浮かべたものの、割り当てられた会場へ歩みを進め始める時には目に力がこもり、足早に移動をするのであった。
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2日目は4箇所に分かれて試合を行う。
ケントが移動した広い試合会場に、知人は一人しかいなかった。
「おはようございます。」
「ああ、ケントくん。おはようございます。」
礼儀正しく挨拶を交わしたのは、トモヨ。
ケントと同じく生徒会メンバーの4年生で、大和撫子然とした外見とは裏腹に野狼のメンバーに堂々と挑みかかる胆力を併せ持った少女だ。
特別補講の際にはケントと共に訓練をした訳では無いが、あの野狼メンバーが普通の訓練を課す訳がない。
このブロックの中では最も警戒すべき相手だ。
とはいえすぐに当たる訳でも無い。
ケントとトモヨは第一試合が始まるまで、世間話に終始した。
「ではそろそろ、準備を始めます。」
「そうですね。ではお互い頑張りましょうね!」
トモヨに笑顔で見送られ、ケントは既に恒例となった全力ダッシュを開始するのだった。
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(そろそろですかね。試合の様子を見ながら柔軟体操でもしましょう。)
今行われているのは、ケントに面識の無い男女の対決。
共に魔法を得意とするようだが、小さな女子生徒の方が明らかに魔法扱いに長けていた。
「よいしょ、よいしょ、、はい!」
「うわああ!!!!」
なんだか気の抜ける掛け声と共に女子生徒が手を振り上げると、先程まで男子生徒が立っていたところに巨大な蔓が突如生えた。
良く見ると、蔓の間に生徒が巻き込まれて身動きを封じられたようだ。
「勝負あり!ピオニーの勝利!!」
「ふふん!まあこんなところですかね!!」
フンスと胸を張っている小柄な少女を見ながら、ケントはなおも試合の準備を続けていた。
(なかなか威力が高かったですね。ピオニーと言いましたか…覚えておきましょう。)
ケントは新たなライバルの存在を胸に刻み込むのであった。
その後も試合は続き、ようやくケントの出番が訪れた。
予選の時と同様、同会場の他生徒からの注目を集めての第一試合は、まさかの面識のある相手であった。
「??あなた、どこかで…」
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