第73話 リーグ

「はい、そこまで!!」


ボルクの良く通る声が競技場に響き渡った。


「ひとまずここまでにしましょう。そろそろご飯が準備できた頃だからね!」


まだ立っている者も多いが、一部の者は地面にへたり込んでいた。


ケントもそのうちの一人である。


(ボルク…本当に強い。年配者だから、と言うだけでは説明できないほどの差があるようですね。この2週間でその強さの要因を突き止めて、今後の強化方針を決めたいところです。)


結局、誰も野狼のメンバーに土をつける事はできなかった。


しかも明らかに本気を出していない。


今後どんな指導が行われるのか、生徒達は期待と不安の狭間で揺れ動く事となった。



————————————————



昼食と食休みを挟んで、午後の指導が開始されようとしていた。


野狼メンバーを中心に、生徒達がキビキビと集結した。


「さて、さっきワタシ達で話し合った結果、それぞれ分かれて訓練する事になったの。チーム分けはこっちで勝手にやらせてもらったわ。」


ボルクはその後、班分けを発表した。



ボルク班

マテウス

ジョン

チェンバロ

ケント


ゲイル班

フリック

トモヨ

クリス


ガリウス班

グライザ

キーン

ドッセーナ

ロッシ


タリア班

ナンナ

マール

メグ



班分けを発表され、それぞれ担当の野狼メンバーの元に向かっていくが、不平を唱える者達がいた。


「嘘だろ、ボルクさん!俺はもう良いって!!」


「何言ってんのよ、チェンバロ。アタシがアンタを放っとく訳ないじゃない。またたっぷりしごいてあげるわ!」


「嘘だ…」


チェンバロは絶望感を漂わせていた。過去に面識があったらしい。



「イヤだあああーーーー!!!!

なんでこの僕が筋肉リーグに属さなければならない!!」


ロッシもチェンバロに追随した。


「ガッハッハ!!大丈夫だ!俺がお前に筋肉の良さを教えてやろう!!」


「そんなものはわからなくて良い!わからなくて…ぐあああ!!!」


なおも口答えしようとしたロッシは、先程と同じように頭をガリウスに掴まれ、引きずられていく。


「じゃあ、各班それぞれ訓練を始めてちょうだい!時間は限られてるからね!みんな期待してるわよー!」


ボルクの声で、各班移動を開始した。


競技場から出て行く班もある中、ボルクはそれに構わず4人の前に立ち話し始めた。


「さて、この班は武術も魔法も同程度にこなせるオールラウンダー型の子達を集めた班よ。さっき見たところ、アナタ達は今冒険者に混ざってもある程度はやっていけるわ。」


確かにマテウス、ジョンはもちろん、ケントを破ったチェンバロもそれに当てはまる。


しかしケントは自分がその域に達しているかと言うと、正直なところ疑問であった。


(私は武術に関してはそこまで修められたとは思えませんが…なにか意図があるのでしょうか。)


「ただし!冒険者の中でも上位には今のままじゃ絶対になれない。なんでかわかるかしら?」


「…ボルクさんより弱いからですか?」


ジョンが答えるが、ボルクはかぶりを振った。


「事実ではあるけど違うわ。そういう事じゃない。もっと具体的な理由があるのよ。

チェンバロには前に言ったことがあるかもしれないわね。」


「………格ってやつのことか?」


チェンバロが自信無さそうにボルクに答える。


「そう!良く覚えてたわね!偉いわ!!」


ボルクがチェンバロを抱き締めた。


「いってててて!!ボルクさん、痛いって!ボルクさん!ボルクさーーーん!!!!」


「もう、チェンバロは大袈裟なんだから。減点対象よ?」


「うるせーな、なんの採点だよ!」


「ワタシの好感度!」


「ばんばん下げてくれ!!もう全っ然困んねーから!!」


「んもう、照れ屋さん!」


(…私達は何を見せられているのでしょうか…)


ケント、ジョン、マテウスは置いてけぼりにされ、所在なく立ち尽くしている。


「まったく、チェンバロのせいで話が逸れちゃったじゃない!話を戻すわね。」


「あんたのせいだろが!!」


「格についてなんだけどね…」


「聞けや!くそっ…急にシカトかよ!!」


ケントを破ったのと同一人物とは思えないほどに良いようにあしらわれているチェンバロを見て、ケントは複雑な思いを抱きながらボルクの話に聞き入るのだった。


「格ってのはね、自分で訓練をしたり、対人の経験を積んでも上がっていかないのよ。

実は、このメンバーの中で一番格の高いメンバーって、ケントくん?あなたなのよ?」

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