第68話 学期末
学期末のテストも終わり、数日後。
遂に魔法掲示板に一学期通算の学内ランキングが表示された。
序列上位者は長期休暇中に特別補講を受講できる。
ここまでそれを一つの目標にしてきたケントにとって、非常に重要な日であった。
(さて、今回はどうでしょうね。十位以内には入っていると思うんですが。)
一学期末校内ランキング
一位 ジョン
二位 マール
三位 ケント
四位 ギーク
五位 フリック
六位 トモヨ
七位 メグ
八位 キーン
九位 スティーブ
十位 ファム
・
・
・
「私は微妙ね。十位に入ったのは嬉しいけど、補講は何人まで対象なのかしら。」
躍進を遂げたファムがケントに声を掛けてきた。
「そうですね、年によって人数も変わるとか。最少で3人の時もあったようです。」
「あら、じゃあケントは確定なのね。おめでと。」
「ありがとうございます。」
(しかしこの序列を見ると、やはり対抗戦に出場していないだけでかなり不利になりますね。今回の補講がどんなものかはまだわかりませんが、内容次第では更に格差の拡大が顕著になりそうです。これもまた検討課題ですね…)
ケントは自分が恩恵を受ける側だというのに、新たな課題に頭を悩ませるのであった。
————————————————
「さてさて、一学期最後のホームルームはじめるよー!みんな席についてね!!」
相変わらず物理的に生徒と目線の変わらないミレーネ先生が、ホームルームの開始を宣言した。
「明日から長期休暇になるけど、みんな課題はちゃんとやるんだよ!
あと実家に帰る人も多いと思うから、忘れ物にも気をつけてね!
それから…」
魔法が使える世界であるが、このあたりはプリントを配布しての案内であり、ケントの前世とあまり変わらなかった。
(なんだか懐かしいですね。ラジオ体操は非常に有意義でした。)
ケントは長期休暇でもきちんと生活リズムを守る事、少しでも体を動かす事、陽の光を浴びる事、近隣住民との交流が計れる事などから、前世では小学校一年生の夏休みに始めたラジオ体操を、自主的に一年中やっていた。
そんな過去を思い返していると、ミレーネ先生からお呼びが掛かる。
「ケントくんとファムさんはこの後残ってね!補講のお知らせだよ!」
ケントがなんの気無しにファムの方を見ると、控えめにガッツポーズを取る姿が見えた。
「じゃあみんな!気をつけてね!これでホームルームを終わります!」
生徒達が次々に席を立つ。
「ケントくん!補講がどんなだったか、また聞かせてくれよ!!」
「はい。マイトもお気をつけて。」
「ケントくん、僕は長期休暇中に体を鍛えてくるよ。二学期を楽しみにしててね。」
「はい。とはいえまだ成長期なんですから、無理をしないでくださいね、イルマ。」
「ケントさん、長期休暇中に美味しいご飯屋さんを見つけたら教えてくださいね!」
「もし見つけたらお教えしますね。セレサも食べ過ぎにはお気をつけて。」
それぞれと言葉を交わし、やがて教室にはケントとファム、ミレーネ先生だけが残される。
「残ってもらっちゃってごめんねー!
じゃあ特別補講の案内をするね!
対象者は10名!
早速3日後から2週間、ヤネンの競技場で特別補講を実施します!
今回はあの冒険者パーティ、『野狼』が来てみんなを見てくれるって!!」
「野狼!?」
ファムが突然大声を出したせいで、ケントはビクッと肩をすくませた。
「そう!野狼!!良いなあ〜私も行っちゃおうかなって!あ、あと第六学院と合同になるんだって!!」
「そうですか…第六と…」
ケントは心なしか嬉しそうな表情を見せた。
「今回は戦闘に関しての補講になるみたいだから、事前準備は必要ないよ!それから…」
その後は持ち物や集合場所などの案内を受け、それが終わるとミレーネ先生は去っていった。
「ケント!なんでそんな落ち着いてるのよ!!野狼よ、野狼!!」
「ファム、落ち着いてください。
野狼とはそんなに凄いパーティーなのですか?」
「知らないの!?第一学院出身の人達の中でも、一、二を争う有名人よ!?」
ファムがこんな声を出すのは出会った時以来だ、とケントが感慨に耽っている中、ファムが一方的に語り始めた。
「野狼はね、エリートじゃないの。
第一学院でもあまり芽は出なくて、対抗戦に出た事のある人も一人しかいないし。でもね、卒業してから別々の道に進んで、それぞれ一流になったらパーティーを組もうと約束を交わしたの。それで再会してからは破竹の勢い。もうヤネン内には彼等と並ぶ者はいないわ。ちょっと、ケント聞いてる?」
「はい、聞いていますよ。」
「それでね、リーダーのボルクがね…」
ファムの新たな一面を発見したケントは、興味深いものの熱烈なファンのようなファムの雰囲気に、遠い目をするのであった。
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