改革編
第66話 宣戦布告
対抗戦が終わり、ケント達は日常に帰っていった。
対抗戦が行われていたのは2日間だけだったが、しかし短いとはいえ濃密な時間を過ごした生徒達は、暫くの間浮き足立っていた。
大活躍を見せた代表者達は当然注目の的となり、常に人に囲まれる事となった。
しかしそんな高揚も、時が経つにつれ急速に薄まっていく。
現実的な理由だ。
対抗戦を終えた生徒達を待っていたのは、2週間後に期末テストが待っているという事実であった。
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普段から予習復習を欠かさないケントは、元々持っている知識も相まって、テスト前だからといって特段対策の必要は無い。
それは前回の定期テストで把握している。
しかし、それでも後ろに座る食いしん坊よりは学習時間を取っていた。
「セレサ、起きてください。もう授業は終わりましたよ。」
「ケントさん、起きてますよ。お腹が空いちゃって力が出ないだけですぅ…」
「相変わらずですね。先程お昼ごはん食べてましたよね?」
「そんなのもうとっくに消化しちゃいましたよ!うぅ…エネルギーが足りない…」
そう言って机にもたれかかるセレサ。
「セレサは食べ過ぎよ。まったく、食べた物はどこに消えてるんだか…」
いつの間にか仲良くなったらしいファムもやってきた。
「もちろん私のエネルギーになってますよ!そしてそのエネルギーでまたごはんを食べるのです!!」
「アホな子ね…そんな状態で期末テスト大丈夫?」
ファムは呆れながら言う。
「今回はバッチリです!来年の対抗戦には私も出たいですし!!」
「あ、そう…。マイトとイルマはどう?」
ファムはセレサの言葉を鵜呑みにはしていないような表情を浮かべながら、近くで話していたマイトとイルマにも声を掛けた。
「僕達もバッチリさ!対抗戦が終わってからは毎日イルマと勉強会をしているからね!!」
「うん、前回よりは良い成績出せると思うよ。」
相変わらず元気なマイトと、対抗戦前から少しずつ笑顔を見せるようになったイルマが自信を持って答えた。
「そうですか。皆さん順調なようですね。」
ケントはそう言うと席を立ち、教室後方に向かった。
周囲からは、またか、と言う目が向けられるが、ケントは意に介さず声を発した。
「今回のテストに向けて準備はどうですか?レードルフさん。」
「うるせえ。お前には関係ねえ。」
レードルフもいい加減ケントの相手をするのに慣れてきたようで、端的にケントを跳ね除ける。
「いえいえ。レードルフさんには頑張って頂かないと。来年には一緒に対抗戦に出るのですから。」
「お前に何を言われようが、俺の行動は俺が決める。俺を変えようなんて思うな。」
「そんな傲慢な事は考えていませんよ。ただ今のままでは差が開いていってしまうので、それを危惧しています。」
ケントの言葉に、レードルフは青筋を立てて席を立った。
「てめえ舐めてんのか?ぶち殺すぞ!!」
レードルフは顔を近づけて威圧するように言うが、ケントは眉ひとつ動かさない。
「私は対抗戦で実感しました。私やレードルフさんよりも強くて賢い人間は多い。文武共に研鑽を続けなければ、置いて行かれてしまいます。」
「そうかよ。あーあ、対抗戦出場者サマの言う事はもっともらしくてスバラシイなあ。」
レードルフは鞄を持って歩き出したが、振り返ってケントを睨みつける。
「だが、俺は俺のやり方でやる。口出しすんじゃねえよ。」
底冷えするような低い声で言い放ったレードルフは、そのまま今度は振り向かず、教室から出て行った。
(相変わらずですね…しかし彼が闘技部門で出場した場合、大抵の相手には勝利できるんですが…これはやはり、ジョンのいる内に動きますか。)
ケントは兼ねてからの計画を実行しようと決意を新たにした。
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「シルバさん、習得が早いですね。やはり皆さん筋がいい。」
「おう、ケント。まあ俺達は学生と違って生活が懸かってるからな。必死さの度合いが違う。」
ケントはテスト前であろうと、週末のシルバ達との特訓は欠かしていなかった。
「そういや、対抗戦は大活躍だったらしいな。うちの女どもが騒いでた。おめでとう。」
「いえ、敗北もしましたし、大活躍というほどでは。良い経験はできましたが。」
「そうか。」
シルバは相槌を打つと、顎に手をやって何やら考え始めた。
「ケント。」
「はい。」
シルバが真剣な表情でケントを見つめ、口を開く。
「俺と戦え。」
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