第40話 絶対王者
次鋒戦はプラーナの先制で始まった。
「日の光よ、我が敵を穿て！」
プラーナの叫びにも似た詠唱に、収束した光が光速で打ち出された。
ナンナが強敵であるとはいえ、致死性の魔法だ。本来人間に向けて放って良いレベルでは無い。
そんな渾身の一撃だったが、ナンナの目前で大きな音を立てて発散される。
「ふふ、良いわね。やはり貴女は強い。私の目に狂いは無かった。それでこそ私の調整相手に相応しい。」
「まだ言うかああ！！」
激昂したプラーナはナンナがどう防いだのかに気付かないまま、接近戦に持ち込もうとした。
「ああ、そこ危ないわよ。」
「何を…グ、ァァアアア！！！！」
プラーナが血塗れになって地に伏す。
「あらあら、だから言ったのに。もしかしてもう終わりかしら？」
「…ま、まだだぁああ！！！」
本来なら意識を失ってもおかしくないダメージを受けたプラーナだったが、膝に手をつき荒い息でなんとか立ち上がった。
「そうでなくちゃ。じゃあ次は私から行くわね。」
そう言って猛スピードで動き出すが、クリスのように直接的な打撃はしない。
プラーナの周囲で撹乱するように、不規則に移動する。
もし撹乱が目論見なら、大成功だろう。プラーナは明らかにナンナの動きを追い切れていない。
「ふう。こんなものかしら。」
しかし、ナンナは突如動きを止めた。
そして、足を止めた状態から両手を天に掲げ、無数の光球を作り出した。
「なっ…」
「動かないでね。」
またもやナンナが走り出しながら天に掲げた両手をプラーナに向けると、無数の光球はプラーナ周辺のフィールドに着弾していく。
着弾の衝撃だけで吹き飛ばされそうなプラーナであったが、意地でその場に残り続ける。
光球が全てフィールドに着弾し、しばらくして土煙が薄くなって来たところで、プラーナの姿が視認できた。
洋服はボロボロで、立っているのもやっとの状態だ。しかしその目はまだ死んでいない。
「クソッ…ナンナ…」
「終わりよ。付き合ってくれてありがとう。」
そう言うと、ナンナのハイキックが綺麗にプラーナの顔面を襲い、プラーナは数メートル吹き飛ばされると、そのまま動かなくなった。
「第六学院の勝利！」
「ありがと。」
そう言ってナンナがフィールドを去ると、騒然としていた会場内は大きく沸いたのだった。
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（ふむ、隙が見当たりませんね。
光線を打ち消して突進してきた相手をも血塗れにした防御力、相手を撹乱できるほどのスピード、無数の光球を無詠唱で扱える魔法力、その両方を走り続けながら実行できる体力と精度、それに加えて最後の蹴り技は何か格闘技を修めた者のそれでした。
しかもこのフィールドが初めてなのか、足運びや速度の調整と確認も兼ねていたようですね。
この完成度で副将ですか…）
「相変わらず強いな、ナンナさんは。」
「フリックさん。目が覚めたんですね。」
「ああ、弟よ！一回戦は最高だった！二回戦も共に勝利して第六学院と戦おうじゃないか！」
「そうですね、楽しみです。」
そう言いながら上の空なケントは、ナンナとの戦いをシミュレーションし続けるのだった。
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第一学院の教師達が魔法でフィールドの整地を行った後。
本日最大級の歓声が会場を襲った。
マテウスの登場である。
短い金髪はツンツンに立てられ、目はきつい印象で非常に整った顔立ちだ。
背が高くすらっとしているが筋肉もしっかりついている。
そして何よりこの大歓声に全く動じていない。
逆に第五学院の中堅、シャルマンは可哀そうなぐらいに緊張していた。チームメイトからの激励が飛んでいるようなのだが、歓声が大き過ぎて聞こえていない。
そして歓声が少し落ち着いてきた頃合いを待って、審判の号令で両者が礼をする。
両者が改めて距離を取ったところで、中堅戦が始まった。
と、同時にシャルマンに複数の土柱が伸び、身体を拘束した。
「な…！？」
戸惑っているシャルマンを余所に、マテウスはすかさずシャルマンに接近し、腹部に右拳を突き立てる。
重い一撃を受けたシャルマンは、それだけで沈黙した。
「だ、第六学院の勝利！
３勝した為、第二回戦第一試合は第六学院の勝利とする！！」
こうして、戦慄の第一試合が終了したのだった。
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