第39話 強者達
昼休憩を長めに挟み、闘技部門の第二回戦が始まる。
まずは一回戦がシードであった第五学院対第六学院の第一試合、続いて第一学院対第四学院の第二試合である。
第五学院と第六学院は似て比なるチームの争いだ。
まず、両チームとも美男美女揃いというのは同じ。
しかし内実が大きく異なる。
それは今の両チームを見れば明白だ。
第五学院は代表者5名が円陣を組んでいた。何か声出しをしているようだが、内容までは聞き取れない。
対して第六学院は、個別に試合に向けた準備をしている。
柔軟をしている者もいれば、ランニングをしている者、魔法の試運転をしている者、果ては軽食を取っている者までいる。
(第六学院のメンバーはやはりオーラがありますね。常勝チームの雰囲気を感じます。まだ若いというのにどんな修羅場を今まで潜り抜けてきたのでしょう。)
誰かにケントの内心が覗ければ、お前が言うなと指摘する所だが、生憎そんな能力を持つ人間はいない。
(さて、どんな順番で出てくるのか…第六学院の生徒は才能の宝庫ですからね。
一年生のスピードスター、クリス。
四年生で無詠唱使いのチェンバロ。
五年生で膂力が魔獣級のグライザ。
そして六年生のナンナとマテウス。
どの生徒も他校であれば大将級ですが、マテウスはその中でも一線を画すと聞いています。
普通ならまず間違いなく大将で出てくるでしょう。
ただ、中堅まででナンナとマテウスが出てくる場合、警戒レベルを更に上げなければなりませんが…)
ケントが思案に耽る中、いよいよ第二回戦第一試合の火蓋が切られようとしていた。
まずフィールド中央に出てきたのは、第五学院からはパルムという小柄な男子生徒。チームメンバーからの激励が飛び、観客もそれに呼応している。
第六学院からは唯一の一年生、クリスが出るようだ。こちらは激励などはなく、チームメンバーはクリスを見てすらいない。
(噂のスピードスターですか。同学年として見逃せませんね。)
出場者2名が礼をして、先鋒戦が始まった。
と、同時にクリスがパルムへと迫る。パルムが詠唱をしている間に懐に潜り込んだ形だ。
そのままの勢いでクリスがパルムの腹部に肘を突き立てると、パルムは苦悶の表情を浮かべながらも衝撃を利用してクリスから距離を取った。
その後も同じ展開が続く。
パルムは走って距離を取りながらなんとか詠唱を完成させようとするが、それよりも早くクリスが追いついてしまう。
無表情で相手を追い込んで行くクリスに、その美貌も相まって背筋が凍るようだ。
クリスは結局、その攻撃だけで勝利した。
脚部に疲労が蓄積されたパルムが、バックステップ中にフィールドのギャップに足を取られてしまう。
そこを見逃さなかったクリスがパルムへ渾身のショルダータックルをぶつけ、仰向けに吹き飛ばされたパルムが動かなくなったところで決着となった。
「第六学院の勝利!」
凍りついていた時が再び動き始め、会場内は歓声に包まれた。
(単純とはいえ厄介な戦法ですね。スピードに対応出来なければ戦いようがない。対処できるのは第一学院では、私とメグ、ジョンですかね。フリックさんとキーンさんは短いとはいえ詠唱が必要ですし…これは私達が勝ち上がれるようであれば、私が先鋒なのは固そうです。)
戦慄の先鋒戦が終わり、次鋒戦が始まろうとしていた。
しかし会場内は騒然としている。
それは当然の反応と言えるだろう。
副将と予想されていたナンナが中央へと歩みを進めたのである。
(これは…やはり…厄介ですね。)
しかし会場内の雰囲気とは裏腹に、対戦相手のプラーナは快活な笑顔だ。
ケントは聴覚を強化して2人の会話を聞き取ることにした。
「嬉しい。6年目にしてやっとアナタと戦える。ずっとお相手してみたかったんだよね。」
「あら、そうでしたか。それは良かったですね。貴女は本当に運が良い。」
「運?」
「ええ。
ここで当たらなければ、私が次鋒で出るなど有り得ませんから。
明日の決勝戦に向けて、戦闘の勘を取り戻しておかなくてはなりませんので今日は出てきましたが。」
ナンナの言葉に、プラーナの表情が強張る。
「どういう事?」
「分かりませんか?ウチは誰が出ても中堅までで3勝してしまうではありませんか。
大事な決勝戦を前に、私とマテウスが一戦もしていないのは不味いでしょう?」
「…私達を舐めるんじゃないわよ。」
「あら。私は貴女達を買ってますわよ?ただ私達の方が強いだけで。」
「…もう良い。ぶちのめす!!」
ナンナは心から言っているのだろうが、それが逆にプラーナの神経を逆撫でした。
怒髪天を衝く勢いのプラーナに合わせたように、審判の号令で次鋒戦が開始された。
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