対抗戦編
第35話 お前の筋肉を見せつけてこい
対抗戦当日。
青く澄み渡る空に、白い雲が優雅に漂う。
好天に恵まれこの季節においては強い陽射しを浴びながら、綺麗に刈り揃えられた緑のフィールド上に各校の代表者が整列していた。
「それではこれより、ヤネン対抗戦を開催する。」
ヤネンの領主、コレアが明朗と宣言すると、会場内は大歓声に包まれた。
第一学院だけでも約1200人の生徒がいるのだ。
観客と他校の生徒も含めると、この会場内の観客は10,000人を優に超える。
そんな中、ケントは横に立ち並ぶ各校の代表者を注視していた。
(第二学院は外見的な特徴は見当たりませんが、第一学院のメンバーを凄い形相で見ていますね。過去に何かあったのでしょうか。)
第二学院は人数においてヤネン随一の学院だ。
入学テストが無い為、第一学院の入学テストに落選した生徒は漏れなくここに所属している。
その為、入学後に才能を開花させる生徒が多く、第一学院に対して強いコンプレックスを抱いている。
(第三学院の代表者は漏れなく体格が良く、並び方や立ち姿勢を見ても規律がしっかりしています。軍隊のような雰囲気ですね。)
第三学院はいわゆる脳筋である。
厳しい規律と訓練で鍛え抜かれ、卒業後は魔獣討伐の軍隊に入る者がほとんどだ。
女子生徒も混じっているが、男子同様短髪で凛と立っている。
(第四学院は第三学院と対照的に、華奢な生徒が多いですね。賢そうな生徒ばかりです。)
第四学院は魔法に秀でている者が多い。
その為体格には恵まれていないが、魔法や学術においては特別な才能を持ち、卒業後は研究所や教育現場に携わる者が多い。
(第五学院は…なんというかメグが沢山いるような感じですね。とても仲が良さそうです。体育会系、というのでしょうか。団結力では敵わないでしょうね。)
第五学院は自由と自立を標榜する学院だ。
そのため生徒達は互いに高め合い、結束を強める。
また教師の介入が少ない為、生徒間での恋愛が多く発展している。
応援に応える生徒が多いのは、恐らく恋人が応援に来ているのだろう。
(そして、前回覇者、第六学院…やはり貫禄が違いますね。そして美形の方が多い。華がある、と言うのが正しいでしょうか。場慣れしていますし、緊張が微塵も感じられませんね。)
第六学院は最も新興の学院だ。
逆に最も歴史と伝統を持つのがケント属する第一学院である。
この学院は学院長が特徴的だ。
教育者というより経営者と呼ぶのが正しく、世界中から広告塔となる生徒を引き込み、内外へその活躍を発信している。
その為美形で文武に優れた才を持つ生徒が多く、常に他校からの羨望の眼差しが向けられている。
(なかなか強敵ばかりのようですね。しかし昨日の誓いを守る為にも、負けられません。ああ、年甲斐もなくわくわくしてきてしまいました。)
ケントは高揚を抑えながら、選手の集合場所である大きな木陰に移動した。
「まずは闘技部門からじゃ。第一試合じゃが、準備は良いか?」
ベアムースの問いかけに、漲る闘志を抑えながら、5人が頷く。
メグなど、餌を前にして待たされている犬のようだ。
尻尾があったら凄いスピードで振っていたに違いない。
「では、行ってこい。期待しておるぞ!」
————————————————
ベアムースに見送られ、フィールドの中央で第三学院の代表者5名と向かい合う。
(こうして改めて見ると、本当に大柄ですね。同じ学院生とは思えませんが…ウチにもジョンがいますし、人の事は言えませんね。)
ケントは内心クスリと笑うが、そんな事はお構い無しに審判の号令が入った。
「それでは、闘技部門第一試合、第一学院対第三学院の試合を始める。
勝負は片方が戦意を喪失するか私が継続不可能と判断するまでとする。
お互い相手を尊重し、過剰に傷つけたりはしないように。
一同、礼!!」
一斉に代表者が礼をし、前にいる相手と握手をする。
学院全体を揺らすような歓声が響き渡った。
そんな周囲の喧騒の中、ケントの相手は力強くケントの手を握ってきたが、ケントは涼しげな笑顔で言った。
「よろしくお願いします。」
相手は驚愕した様子だったが、すぐに気を取り直して踵を返した。
しかし位置に戻る前にメグの方をチラリと見やり、苛立たしげに肩を怒らせた。
(………?メグとなにか因縁でもあるのでしょうか?)
そんな疑問符を浮かべたケントを他所に、審判により試合の進行が為される。
「それでは先鋒、前へ!」
会場のボルテージがもう一段階上がったところで、ケントが前に出た。
「ケント、勝つぞ。」
「ケント、頑張ってね!」
「ケントくん、兄は君を見守っているぞ!」
「ケント!お前の筋肉を見せつけてこい!」
「はい。」
チームメイトに見送られ、再びフィールドの中央に立った。
対戦相手は先程ケントの手を握り潰そうとした生徒だった。
「それでは…試合開始!!」
遂に試合の開始を告げる審判の声に、会場のボルテージは最高潮に達するのであった。
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