第26話 姉妹が似るとは限らない

その後も平日は授業と生徒会活動、休日はシルバ達との魔法の訓練とケントは充実した日々を送っていた。


その中でいくつか分かった事がある。


まずケントはクラスメイトの得意・不得意を把握した。


マイトはオールラウンダー。ケントが異常なだけで、他の学年であれば間違いなく首席だっただろう。


しかしケントを恨むような素振りは全く無く、日々研鑽を続けている。


またクラス内に問題が起こりそうになると率先して解決しようと動くので、まだ授業開始からひと月足らずにも関わらず、すっかりクラスのまとめ役になっていた。


ファムはやはり入学前の学力テストでこそ解答ミスをしてしまったらしいが、魔法も学力もトップクラスだ。


空き時間はセアナ領の改革に尽力しているようで、今のところは部活動などには参加していない。


セレサは意外にも優秀な生徒で、特に魔法に関してはマイトにも迫る実力者だった。


そして驚くほど良く食べる。


小さな体のどこにそんなに入るのかと不思議になるが、女性にそんな事を聞くのは恐ろし過ぎた。


未だにケントは不思議に思っている。


逆にイルマは学力に秀でていて、魔法もそこそこ使える。


ただ攻撃魔法はあまり得意では無く、障壁や回復など補助魔法がメインのようだった。


かなり優秀なのだが気が弱く、自分の意見を表明する場面は今のところまだ無い。


そしてレードルフ。


ある意味クラス内でケントが最も注目している生徒だが、彼は魔法に関してはケントにも迫る実力者であった。


元々恵まれた体躯と今まで培ってきたであろう格闘技の技術と相まって、今では実技の相手になるのはケントしかいなくなっていた。


しかし読み書き計算にかなり手こずっており、入学前テストでも学力が足を引っ張ったのだろう事が明白だった。


しかしそんな優秀なクラスでも、無詠唱の魔法使いは一人もいない。


(これは問題ですね。どこかのタイミングで無詠唱のコツなどを伝授出来れば良いのですが。)


ケントは問題だとは思いながらも、自分のミッションが増えた事に笑みを浮かべた。


続いて、ケントは年間のスケジュールを把握した。


ひとまず直近では、1週間も経たない内に定期テストがある。


とはいえ入学したばかりで基本の確認となるだろう事から、ケントはいつも通り授業の復習のみに留めていた。


定期テストが終わると、対抗戦のメンバーが選出される。


自薦他薦は問わないが、候補者の学力と魔法の力を併せて総合的に判断するようだ。


ここでは魔法の力を判断する為に模擬戦のような事をやるらしいのだが、実技の授業でやっている事とそう変わらなさそうなので、特別な対策は不要だ。


そしてメンバーが選出されひと月後には、対抗戦が行われる。


そして対抗戦が終わるとひと月後に期末テストがあり、それが終わると長期休暇だ。


しかし、序列上位者はその限りでは無い。長期休暇が始まるのに合わせて、特別補講が開始される。


ゲストと補講の内容によって人数も期間も変わるらしいが、場合によっては長期休暇をまるまる使う場合もあるそうだ。


(なんとか特別補講を勝ち取りたいのですが…現状では難しそうですね。)


未だテストや対抗戦が行われていないにも関わらず、既に序列上位者とのポイント差は圧倒的だった。


(ジョンが126ポイントで1位、マールさんが107ポイントで2位ですか…ジョンはどうやってこんなにポイントを貯めたのでしょうか?)


ケントの疑問は深まるばかりであった。



最後に、最も驚くべき事実が判明した。

担任のミレーネ先生は、母マリーナの双子の妹らしい。


事の発端は、生徒会でクラス担任の話になった際、メグがミレーネ先生の事を「ミレーネちゃん」と呼んだ事だ。


ケントはいつも通りメグを叱責しようとしたが、逆に不思議そうな顔をしたメグから「家族なんだから良いじゃん!」と謎の弁明をされ、問い詰めたところ先の事実が判明した。


そう言えば入学手続きで初めて登校した日に、メグがそんな事を言っていた。


また、赤い髪と暴れ出した時の雰囲気に母の面影を見出したケントは、深く納得すると同時に、何にとは言わないが、ミレーネに深く深く同情するのであった。

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