第24話 小火山爆発
生徒会室で先輩達と話した結果、入学手続きの時から続いていた奇異の目の原因が分かった。
ジョン、メグは共に生徒会メンバーで序列も高く、更に抜群のルックスも相まって兄妹揃って周囲からはアイドルのような認識をされているらしい。
そこにメグが末っ子が入学してくると言いふらしたこともあって、かなり話題になっていたようだ。
しかもケントは髪と顔立ちはメグ、体格はジョンの入学時にそっくりだった為に即特定された結果が、例の奇異の目だったようだ。
また、生徒会と部活動は両立できるらしい。
現所属の生徒会メンバーもほとんど部活動にも籍を置いていた。
マールとメグはチア部、トモヨは剣道部、そしてジョンは筋肉愛好会。
ジョンに至っては愛好会の創設者らしく、名誉会長のような立ち位置だそうだ。
とはいえ生徒会が忙しく合間を縫っての参加となる為、ジョンのような特別な場合を除いて役職はつかないらしい。
多くの収穫を得たケントは、自室に戻りランプの灯りの元で、ノートに書き出しながら今までの情報を整理していた。
(急に色々な事がありましたね…
まず、私は学年首席、隣の席のマイトが次席。他の知り合いはファムが6番、セレサが7番、イルマが8番。レードルフ君は何番目だか覚えていませんが、なかなか面白そうでしたね。
そしてコレアさんやファムのお父君、ベアムース学院長にミレーネ先生、生徒会のマールさんとトモヨさんに加えてまだお会いしていない2人の先輩方。この辺りは地盤固めの為に今後関係性を強化する必要があります。
そして各方面で活躍し、ポイントを貯めて特別補講を勝ち取る。これが当面の目標です。
全校生徒約1200人の内、何番目くらいまでが特別補講を勝ち取れるのか。
夏前にはどれだけポイントを得るチャンスがあるのか。
そのチャンスを逃さない為にどう動くか。
この辺りが今後の焦点になりそうです。)
ノートへの記入をそう締めくくったケントはランプの灯りを消し、寝床に入っていった。
————————————————
ケントが生徒会に加入してから数日が経過した。
ランキングの事を知り俄然やる気に満ち溢れているケントは、日々の授業や生徒会の活動を精力的にこなしていった。
しかし裏目に出てしまった授業もある。
「ハイ、授業を始めますよ〜!
皆さん集合してください!」
広い魔法グラウンドの端で、ミレーネ先生が生徒達を集める。
「今日は魔法実技の授業です。
皆さんが得意な魔法を伸ばし、苦手な魔法をフォローするのがこの授業の目的ですよ〜!
まずは順番に、得意な魔法から見せてもらいたいと思います!
1番はケントくんお願いします!」
「ミレーネ先生、授業の趣旨は分かりましたが、得意な魔法ならなんでも良いのですか?」
「お?なにやら余裕の口振りですねぇ。なんでも構いませんよ!」
「そうですか。では…」
と言ってケントはフワッと空に浮かんだ。
そしていつも通り障壁を張り、グラウンドの上空を自由に飛び回る。
頃合いを見計らって降りてきたケントだったが、その時にはもうミレーネ先生がやさぐれていた。
そんな筈は無いのだが、妙に煤けて見える。
「…あたしもできない飛行魔法に、魔法の同時使用でしかも無詠唱……………
どないせえっちゅうんじゃああああああ!!!!!!」
そしてキレた。
「先生が暴れ出した!みんな押さえろ!」
「先生、落ち着いてください!!」
「誰が何をどう教えられるんじゃあああ!!!!!」
「うわ、ちっこいのに意外と力強いぞ!」
「今ちっこいっつったのはどいつじゃ!おおん!?」
「うわ、こっち来た!逃げろおお!!」
ケントが呆然と騒動を眺めていると、ファムが近寄ってきた。
「アンタ、魔法も規格外だったのね。先生がああなるのも無理ないわ。」
「小さな頃から使っていた、一番得意な組み合わせだったのですが…」
「小さな頃って…まあいいわ。しかしアンタも随分偏った知識よね。無詠唱とか魔法の同時使用って、それできるだけでもう学院の教員になれるレベルよ。知らなかった?」
幼い頃からメグと当たり前にやっていた事が異常だったと知り、さらにケントは衝撃を受けた。
「メグの扱いはどうなんでしょう。私の魔法はメグと一緒に訓練をした結果なのですが…」
「メグさんは魔法の神童扱いされてるわよ。あの明るさとルックスも相まって、他校にまで広がるファンクラブがあるわ。」
「…」
(魔法を使用する時は少し抑える事にしましょう。)
特別補講の為に熱意に燃えていたケントだったが、未だ暴れているミレーネ先生とクラスメイト達を見てそう心に決めたのだった。
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