第23話 それは捨てろ
メグのせいで一波乱起きたが、セレサ自身が満足そうにスヤスヤ眠っているので、ケントは一旦そのままにしておく事にした。
「そういえばこの間メグが言っていた、ランキングって何なのですか?」
「あれ、先生からまだ聞いてない?ランキングはね、校内のスゴい人ランキングだよ!」
「ジョン、詳細を聞いても宜しいですか?」
「ああ。」
「あ、あれ?ケントが離れていくような気がする…」
ケントは要領を得ないメグの説明では埒があかないと判断し、早々にジョンへ説明を依頼した。
「ランキングとは、正式名称は校内ランキング。定期テストや各種イベント、部活動や課外活動での成果をポイント化し、序列をつけて明示したものだ。」
「序列が高いと何か良い事が?」
「ランキングは随時更新されるが、学期が終わる際の序列上位者は学院長やその他ゲストの特別補講を受ける事ができる。」
これを聞いてケントは俄然やる気が増した。
通常この世代であれば、補講と聞くと面倒に感じる事が多いが、社会人を経験したケントにとっては違う。
企業においては補講ではなく研修になるが、年次を重ねた後の研修は選抜されたエリートにのみ機会が与えられる。
勝ち取るものなのだ。
今回の特別補講も同様の仕組みだった為、ケントは大いに熱意を燃やし始めた。
「もう少し聞いても?各種イベントというのは具体的にどんなものですか?」
「例えば体育祭や文化祭、ヤネン対抗戦などがそれに当たる。」
また聞き慣れない単語が出てきた為、ケントはさらにジョンに問い掛ける。
「ヤネン対抗戦というのはなんですか?」
「ヤネン対抗戦はヤネンにある学院が代表者を決め、魔法や運動、知力を競うものだ。ここで活躍するとランキングポイントが大きく加算される。」
メグからランキングという単語を聞いてから気になっていた事が聞けたケントは、思案に耽った。
(なかなか面白そうな話を聞けましたね。とはいえ対抗戦は学院の代表者が出場する。となると高学年からの選出になるでしょうから、私の場合は体育祭や文化祭、生徒会活動でポイントを稼ぐのが良さそうです。)
「ポイントやランキングはどのように確認するのですか?」
「校舎内の魔法掲示板で確認できる。ケントも魔法掲示板はクラス分けの時に見ただろう。」
ケントが聞きたい事も聞け満足していると、複数の足音が聞こえてきた。
そちらに目を向けると、ガチャっと生徒会室の扉が開く。
「戻りました。あら、お客さまかしら?」
すらっとした綺麗な人だ。言葉遣いも丁寧で、育ちの良さが窺える。
「ああ、弟のケントとそっちで寝てるのがセレサだ。」
ジョンがそう説明すると、後ろから出てきた前世で言う大和撫子の典型のような女子がケントに近づいてきた。
「貴方が噂のケントくんですか。とても新入生とは思えませんね。」
「ありがとうございます。」
ケントが少し戸惑っているところに、メグが飛んできた。
「マルちゃん、トモヨちゃん、おかえり!!」
「メグちゃん、ただいま。」
「はい、戻りました。」
「お茶でもどうぞ!」
「「それは捨てろ!!」」
「はい…」
ジョンとケントの剣幕に、入ってきたばかりの2人は目を見合わせる。
「な、何があったのかしら…」
「さあ…」
————————————————
落ち着いたところで全員が席についた。
セレサもようやく起きてきたが、目覚めると人が増えていたので戸惑っているようだ。
「ケント、セレサ、改めて紹介する。
まずこちらが副会長のマールだ。」
「マールです。2人とも、宜しくお願いしますね。」
「「よろしくお願いします。」」
マールは金髪ですらっとした美人だ。
丁寧な物腰で歳上という事もあり、お姉さんという形容が一番しっくりくる。
「次に、こちらが書記のトモヨだ。」
「初めまして、ケントくん、セレサさん。トモヨと申します。以後宜しくお願い致します。」
「「よろしくお願いします。」」
トモヨは黒髪長髪でこちらも整った顔立ちをしている。
名前の響きもあり、ケントには日本人にしか見えなかった。
「マール、トモヨ。ケントとセレサは生徒会に入る。」
「そうでしたか。2人とも、何か分からない事があったら聞いてね?」
「お二人とも歓迎します!一緒に頑張りましょうね!」
思いの外好意的な反応だったのでケントとセレサは安堵していた。
「へへ、2人とも私が連れてきたんだよ!」
「そうだったのですか。メグちゃんは偉いわね。」
マールは褒めて伸ばすタイプのようだ。
ケントは無意識にジトッとした目で見つめてしまっていたが、それを他所にジョンがまとめた。
「この2人の他に、会計のスティーブと生徒会役員のゲレラがいる。
お前達2人を含めて8人が今年の生徒会メンバーだ。」
こうして晴れて、ケントはジョンとメグが所属している生徒会のメンバーとなった。
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