第22話 ケントの生徒会初仕事

ケントが生徒会に入る事が決まり、ジョンもメグも嬉しそうな顔をしていたが、ケントにとってはむしろここからが本題だ。


「では、こちらからも二、三質問をしてもよろしいですか?」


「ああ、構わない。なんだ?」


ジョンの顔が生徒会長のそれになった。


「一つ目はこの学院での生徒会の役割です。普段どんな事をされているのですか?」


「全てだ。この学院のイベント、経費管理、果ては授業の形態にまで関与できる。決定権は学院長にあるが、生徒会の意見には耳を傾けて下さる。」


ジョンの返答にケントは顔を綻ばせる。


「それは素晴らしい。では二つ目は、私の肩書きです。役職といっても良いでしょうか。」


「肩書きとしては、生徒会役員とだけつけておくつもりでいる。他の役職は埋まっているからな。ただ、新しい役職をケントが望むなら新設を検討する。」


「わかりました。ひとまずそれで構いません。それでは最後、3つ目は…」


そう言うと、ケントは隣で固唾を飲んで見守っていたセレサの方を見やる。


「彼女も生徒会役員にする事は可能ですか?」


「…!!」


セレサが目を見開いた。急な指名に驚いているように見える。


「それは…まだ分からん。俺は彼女の事をよく知らない。」


ジョンの言葉に、セレサがしゅんとして俯く。分かりやすい子だ。


「だが、仕組みとしては生徒会役員2名以上の推薦があれば入会は可能だ。ケントは俺とメグで推薦した形をとっている。」


「私が推薦しちゃうよー!」


これまで水場で何やらガチャガチャやっていたメグが、戻ってくるなりそう言った。


「メグ、良いのですか?あなたも今日初めてセレサと会ったばかりなのでは?」


「ケントが一緒にいる子なんだから、大丈夫でしょ!それに可愛いし!!」


「メグ様…」


隣でまた信仰が発動している気配がするが、ケントは話を進める。


「ではジョン。私とメグでセレサの生徒会入りを推薦します。」


「わかった。セレサ、これから宜しく頼む。」


「は、はい!精一杯命を懸けて力の限り仕える事を誓います!!」


「そこまでは…まあ良い。で、ケント、お前の質問は以上か?」


「はい。お時間を割いて頂きありがとうございます。


「はいはーい!そろそろみんなお茶のおかわり欲しいよね!ね!

私作ってきたよ!どうぞどうぞ!」


メグが明るくみんなのティーカップに紅茶のおかわりを注いでいく。


ジョンもケントももちろんメグも、微笑を顔に浮かべていたが、ティーカップを手に取った瞬間固まった。


色がおかしい。


先程ジョンが入れてくれた紅茶を見ているからこそ余計に、異変が目につく。


「メグ、何を入れた?」


「お!さすがお兄ちゃんは違いが分かるお兄ちゃんだね!メグちゃん特製ブランドティーだよ!」


「それはブレンドティーですね。色々な香りがして楽しいですが、何が入っているんですか?」


「ケントも嬉しい事言ってくれるね!えっとね、まず紅茶の葉っぱと、ミルクとレモンと入れて、ハーブとミントとそれから…」


やはり最初、メグにお茶を淹れさせなかったのはジョンの英断だったようだ。


話に夢中になってメグを放置した事が仇となっていた。


ジョンとケントが目配せしあって膠着状態に陥っているところに、セレサの気合の入った声が響いた。


「っし…!い、いただきます!!」


「待て、セレサ!」

「セレサ、ダメです!」


珍しく焦ったようなジョンとケントの静止も聞かず、セレサは目を瞑ってティーカップをぐいっと煽った。


ゆっくりとティーカップを置いたセレサは、顔を真っ赤にしてメグに声を掛ける。


「と、とても美味しかったですぅ、メグ様ぁ…」


バタン!


メグに感想を伝えて満足したのか、セレサはそのままソファの背もたれへとゆっくり倒れていった。


「「セレサ!!!!」」


ジョンとケントが慌てて様子を見るが、顔が赤いものの他には症状は無く、むしろメグの作った紅茶を飲めた事で満足げだ。


「メグ、先程はなにか言いかけていましたね。他には何を入れたのですか?」


「ケ、ケント…なんか怖いよ…あとは…あ、そうそう!これ!この瓶のやつ!こないだマルちゃんがケーキに入れてたの!」


そう言ってメグがドヤ顔で示したのは、どう見ても酒だった。


それを見たケントは何も言わず、ジョンの方へと真剣な顔で向き直った。


「ジョン、生徒会に新たな議題を提供します。」


「良いだろう。なんだ。」


「メグのキッチン出入り禁止を提案します。」


「採用しよう。」


2人のテンポの良い会話に、メグは頭を抱えた。


「そんなあ〜!!!」


そんな中、セレサは幸せそうに眠り続けるのであった。

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