第13話 到着と再会
ケントはファムが出て行った後に昼食を済ませ、カフェを出た。
(少し話すだけのつもりが長くなってしまいましたね。やはり子供は計算しにくいものです。)
元々はファムを宥め終わった後に街を少し観察してから学校へ手続きに行こうと思っていたが、もう手続きの期限が差し迫っていた。
(日にちの猶予はありますが、今日中に手続きを済ませて寮に入らないと余計なコストが掛かってしまいますね。)
ファムにケーキセットをご馳走したせいもあって、ケントの手持ちは心許ない。
そんな事情もあり、ケントはそのまま学校へと足を進めた。
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(ここがヤネン第一学院ですか。空から見た分にはここまで大きいとは想定できませんでしたね…)
ケントの目の前には、日本のマンモス大学程に広大な敷地を持つ学校が広がっていた。
(これだけ広いと、維持費用に圧迫されそうなものですが…
学費も格安なので国からの補助金が莫大なのでしょう。
教育にコストを掛ける判断が出来るとは、この国の上層部はかなり優秀なようですね。
家族の事といい、つくづく生まれる環境に恵まれました。)
ケントが校内を眺めながらそんな事を考えていると、校舎の方から声が掛かった。
「ケント、来たか。」
「ジョン、お久しぶりですね。」
「ああ。お前も元気そうで何よりだ。」
ジョンが人混みを掻き分けてケントと久しぶりの再会をしていた。
どうやら入学手続きの誘導をしていたようである。
「なぜジョンがこんな所に?」
「俺は今年の生徒会長になった。
役員としての仕事でここにいる。」
「それは素晴らしい。
おめでとうございます。」
「自分で手を挙げた訳ではないが。
指名されたからには職務を全うする。」
ジョンが生徒会長になった事をケントは知らなかったが、内心納得していた。
(やはりジョンは大人物になる器ですからね。こうして話していても更に有能に成長している事が分かりますし、体格も既に出来上がって来ている。新入生にとっては、教師よりも恐怖を覚えるかも知れませんね。)
ジョンは目測でも既に身長が170cmを超えており、全身の筋肉量も12歳のそれとは思えない。
真っ赤な髪と相まって、ケントの前世で言う赤鬼のような外見になっていた。
「ケントはこれから手続きをするのか?」
「はい。本日ヤネンに到着したばかりです。」
「受付は校舎に入って真っ直ぐ進んだ所にある体育館だ。時間もあまり猶予がない。急げよ。」
「ありがとうございます。
ではまた。」
「ああ。」
ケントは周囲から奇異の目で見られている事は気になるものの、時間も無いので言われた通り、さっさと体育館へ向かうのだった。
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ケントが体育館に着くと、先程同様に周囲の目が集まる。
(これは何なのでしょうか。先程からいやに視線を集めていますね。とはいえ分からないものは分からないので、気にしないでおきましょう。)
受付の教員に声を掛け、手続きを進める。
必要な手続きを終え、寮への道を尋ねていると、
「ケント!」
と大きな声が掛かる。
誰の声かは考えるまでも無い。
「メグ。久しぶりですね。」
「ケント!大きくなったわね!!
イケメンになっちゃった!!」
メグが久しぶりにも関わらずよく分からない声を掛けながら抱きついてきた。
メグはマリーナに似てハリウッド女優ばりの美少女だ。
この4年間で成長したメグに抱きつかれたケントは、周囲から羨望の眼差しを向けられている。
「メグは相変わらずですね。
凄い魔法使いにはなれましたか?」
「もう少しね!でもケントが来たからまたランキング下がっちゃうかも!」
「ランキング…?」
知らない単語が出てきたが、これからの学院生活で情報収集はできると判断したケントは、メグとの再会を喜びながら寮への道を歩んでいった。
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