第8話 太陽は沈んでもまた登る
「イヤアアアアア!!!!!」
「こら、メグ!いい加減行きなさい!!」
ジョンの出立から1年が過ぎ、遂にメグも学校に行く事になった。
あれからケントと毎日のように魔法の練習をしてお互いかなり技術は進歩したが、精神の方の進歩は今ひとつだったようだ。
(メグも学校に行く歳になりましたか。早いものですね。)
ケントは親のような気持ちで見守っているが、まだ1歳児である。
(しかし、困りましたね。ダディのモノマネはジョンの時に使ってしまいましたし、もう使えないでしょう。もうこうして2日も経ってしまいましたし、そろそろ学校に向かわせないといけない頃合いなのですが…間に合いませんか…)
そう。ジョンの出立が記憶に新しい両親は、メグがこうして粘る事を想定して学校への到着が間に合う期限の3日前からメグを送り出そうとしていた。
しかし想定以上の粘りに根負けし、また夕方まで粘られてしまうと夜歩きが必要になってしまうため、危険性を鑑み今日までズルズルときてしまっていた。
(さすがに今日には出立しないと間に合わなくなります。なんとか送り出さなければ…。)
ケントが思考を巡らせていたその時だった。
「メグ。」
懐かしい声が聞こえてきた。
「お兄ちゃん!!」
ジョンだ。
「迎えにきた。一緒に行こう。」
「うん…」
(良かった、間に合いましたね。)
実は出立する予定初日にメグの想定以上の粘りを見たケントが、両親に提案して早馬でジョンを呼び出していたのだった。
(スケジュール的にはギリギリでしたが、流石はジョンです。間に合わせてくれましたね。)
メグもすっかり落ち着き、まだこちらをチラチラと見てはいるものの、出立の時間には間に合いそうだ。
「父上、母上。お久しぶりです。」
「ジョン!久しぶりだね。元気そうで何よりだ。」
「ジョン!ああ、アタシのジョン!
またカッコ良くなっちゃって、学校ではモテモテだろう?」
「ありがとうございます。
父上、母上の教育のお陰です。」
相変わらず冷静なジョンが、両親と再会の挨拶を交わす。
(しかし、まだ1年だというのにジョンは大きくなりましたね。もう既に150cmくらいはあるのではないでしょうか。)
そう、ジョンは外見的にも年齢にそぐわない成長を見せていた。
上級生と並んでもそこまで違和感は無いだろう。
すると、ジョンがケントに歩み寄った。
「ケントも元気そうだな。
もうすっかり一人で歩けるようだ。」
「ありがとうございます。
ジョンもお元気そうでなにより。」
「相変わらずだな、お前は。」
そう言って微笑を浮かべ、ケントの頭をぐしゃっと撫でる。
ケントは前世も含めてこんな事をされた事がなかった為、口にも表情にも出さないものの内心では兄のこのコミュニケーションが好きだった。
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「そろそろ行くか、メグ。」
「うん…」
来たばかりで名残惜しくはあるが、時間にはあまり猶予がない。
両親も少し寂しげな顔を浮かべたが、2日粘られたこともありこの機会を逃すと間に合わなくなると考えたのだろう。
言葉を飲み込んだようだ。
いよいよ出立の時になり、2人は歩き出した。
が、メグはすぐに振り返ってケントに向かって叫んだ。
「ケント!あたし凄い魔法使いになるから!ケントが言ってくれた、凄い魔法使いになって帰ってくるからね!!」
そう言って大きく手を振った。
「行ってきまーす!!!」
「「「行ってらっしゃい」」」
そして一家の太陽は足取り軽く学校へと歩み出すのであった。
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