第3話 嫌な笑顔
ケントの覚醒から、7日が過ぎた。
相変わらず起きては寝、寝ては起きの繰り返しだが、いくつか分かった事がある。
まず、ケントは自分の名前を認識した。
顔の向きと言葉の掛けられる頻度から、自分の名がケントだという事を認識した。
なんの因果か前世の謙という名前と似ており、認識しやすかったのもある。
また、自分の上に兄と姉が1人ずついる事もわかった。
こちらは推測でしかないが、恐らく赤髪の兄がジョン、ジョンよりは少し幼い黒髪の姉がメグという名前だ。
父と母は名前はわからないものの、2人ともとても優しい人物だと分かった。
父はやはり小柄で綺麗な黒髪の若々しい人だが、仕事から帰るとまず母とケントの事を気遣ってくれる。
そして無事だと分かると、今度はジョンとメグと何かを楽しそうに話し始める。
母はというと、ケントの事をとにかく気にかけてくれている。
あまり泣かないケントを心配しているようだが、それでも惜しみない愛情を与えてくれる。
寝たり起きたりを繰り返しているケントだが、ケントは自分が起きている間に母が寝ている所を見た事がない。
前世とは異なり、今世は家族に恵まれたようだ。
また、この世界には魔法が存在する。父も母も使えるようだ。
最初に気づいたのは、母が寝室の明かりを手を振りかざしただけで消した時だ。
他にもコップに水を出したり、ベッドから動かずに窓を開けたりと、汎用性はかなり高そうである。
そして最後に、母乳の旨さだ。
元サラリーマンなだけあって超絶美人の母乳を頂くことに抵抗はあったものの、他に栄養摂取の手段もない為割り切った。
目を瞑りながら恐る恐る母乳を頂いたのだが、味自体はむしろ薄い。
もう少し甘かったりするのかと思っていたケントは内心落胆したが、次の瞬間。
身体中に何かが漲るような感覚があり、目を見張った。
とはいえ目の前に肌色が広がっていた為、またすぐに目を瞑ったのだが。
(これは、優先順位をつけて今後の計画を組むべきですね。
まずは一ヶ月を目処に言語の理解。
三ヶ月を目処に家族との意思疎通。
六ヶ月を目処に周囲の環境を把握。
といったところでしょうか。
多少の前後はあるでしょうが、当面の目標はこんなものでしょう。)
行動目標と計画を立てたケントは、赤ん坊らしくない顔でニンマリしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます