がぶがぶ/14 カメラとリング
「――――あの、クソ男先輩? もう一回言って貰って良いっすか??」
「ごめん、説明不足だったかな。でも友達から頼まれた話だからある程度は秘密にしておきたくってさぁ」
「あっ、はい、そうっすね、友達の話ですもんね」
兼嗣は今、非常に困惑していた。
恋人の親友であり、恩人である先輩、己との関係も友人と言っていいだろう。
ともすれば、親友という括りにすら入っている気もする。
(だからさ、恋愛相談だって乗るぜ? そりゃあ吉久先輩からってのは珍しいけどさ)
彼が紗楽と付き合う前は、随分と恋愛相談に乗って貰った身だ。
出来ることなら力になりたい、何せ憧れの女の子相手に間違いすぎた努力をし、全力で尽くした挙げ句の果てに。
結ばれなくても満足し、卒業していく勢いだった人物だ。
(幸せになれるのなら、なって欲しいけどさぁ……)
その聞かされた内容が内容である、どうしたら目の前の上級生は。
「ええっと、先ずはお腹に入れても不自然じゃない厚みのある雑誌は何かって話でしたっけ?」
「そうなんだよ、万が一、いや……ちょっと間違えば包丁でグサっとね、そういう可能性があるっちゃあるんだ」
「あくまで友達の話なんですよね」
「そうだね、あくまで友達の話だ」
(いや聖女様に命狙われてるとかッ!? いったい先輩何をしたんだよッ!?)
友達の話だなんて、嘘に決まっている。
第一、表情が隠せていない。
本人は平静を装っているが、視線は何処か落ち着かないし。
(いやいやいや? これってマジなのか? マジの話なのか? 先輩がマジで焦るって相当じゃねぇのか!?)
思わず兼嗣も緊張してくる、この人は何をやらかしたのだろうか。
冷静に情報を整理する為にも、深呼吸を一つ。
「――先輩、もう一度最初からお願いします。出来ればその友達と恋人さんの出会いの所から」
「うん、あくまで、そう、あくまで友達の話なんだけど」
「なるほど、先輩の話と」
「その友達はさ、ちょっと、いや、それこそ殺されても不思議じゃなぐらい恋人に酷い事をしてさ」
「それは刺されるのも当然ですね、というか聖女様と先輩は恋人になっているというか、アンタ……聖女様に何したんだ??」
「まぁ、あくまで友達の話だから詳しくは言えないけど、愛してるんだけど一緒にいると破滅しかなさそうなんだけど、……一緒に居ると殺される可能性があるのに、一緒に居ないとその恋人さんが壊れるかもしれないっていうか」
「相談って言うなら具体的に言えよ先輩? というかクズ男って見抜かれてるなら、そのまま刺されても良いんじゃねぇか??」
「そこを何とか!! その恋人さんには罪を犯して貰いたくないんだ!!」
手を合わせて懇願する吉久に、兼嗣はうーんと唸りながら思案する。
単に凶行を防ぐだけなら、防刃ベストを手配すればいい。
だがそれは、一時凌ぎにしかならず。
「聖女様は恋人でいるつもりみたいだし、もうセックスでメロメロにするとか、愛を囁いてメロメロにして満足させるしか無いと思うぜ吉久先輩」
「ああ、ごめん言い忘れてた。その友達の言うには、愛の言葉は言えないし、セックスはそもそもしたくないって」
「はいッ!? それ本当に恋人なんです先輩ッ?? どうしてそんなに捻れた恋愛してるんだッ?? あの超優しい聖女様に殺されるような恋愛って、何してるんだよ先輩ッ!? あの人って他校の女子が強引なナンパにあってるのを止めに入って、ナンパ男を改心させる様な人だぞ?? そんな立派で心優しい人を!? 休日は地域の奉仕活動や、後輩の勉強の面倒を見てるような人が?? マジで何してるんですか先輩ッ!?」
信じられない、と矢継ぎ早に出された言葉に吉久としては視線を反らすしかない。
「ノーコメントで、その友達曰く、詳しく言うと恋人さんの評判に関わるから。そんなの僕は絶対に許さないから、どんな手を使ってでも阻止するから」
「何処の誰が友達だよッ!? アンタがそう言うって事は、アンタ自身と一条寺先輩しかいねぇだろうがッ!!」
「――――頼む、シャラには卒業後の進路が君との結婚に決まってて外堀も既に埋まってる事を、絶対に喋らないから」
兼嗣は絶句した、躊躇無く脅してきたと、弱点を突いてきたと。
「脅迫してんじゃねぇか!! そういう所だぞ? そういう所が――――…………、ま、まさか吉久先輩? 一条寺先輩に変な脅迫とかしてないですよね」
「あくまで友達の話だよ、そうそう個人的に防弾チョッキみたいなの欲しいんだけどお金貸してくれる?」
「防刃ベストぐらいタダであげますよッ!! ホントにアンタ何したんです!?」
「あくまで友達の話なんだけどさぁ……警察に捕まると思ったら泥沼に沈んでる最中、みたいな??」
「もおおおおおおおおおおおおおッ、アンタって、アンタってヒトはッ!!」
頭を抱えて叫ぶ後輩に、吉久は思わず苦笑する。
申し訳ないとは思うが、優先順位としては初雪の方が上だ。
使える物なら、全てを使う。
「まぁまぁ落ち着いて、どうせその時になったらシャラの説得のアシストを僕に頼むつもりだったんでしょ?」
「そうだけどッ、そうだけどもッ!!」
「ならこうしよう、――我に秘策アリ、在学中に結婚に踏み切らせる策があると言ったら?」
「何でも言ってくれよ先輩、俺は先輩を信じてるぜ!! あくまで友達の話って事で!! あ、愛の言葉やセックス無しで、相手をメロメロにする方法あるけど聞きますかこの世で一番頼りになってこの世で一番誠実な吉久先輩!!」
掌をぐるんと回転させた後輩、しかして吉久は顔を盛大にしかめて胸のあたりを抑える。
頼りになる、誠実、今の言葉がもし初雪から出ていたなら、その場で崩れ落ちていたかもしれない。
「うぐっ、――――――む、胸が痛む……止めてくれ、今の僕にはその言葉が良く効くんだ」
「どんな犯罪したんです先輩?? いざとなったら『あの先輩ならいつかヤると思ってました』って証言しますよ俺」
「その時は、適当に余罪とか冤罪をぶちまけておいて欲しい…………」
「メンタル大丈夫かよ先輩? 気晴らしにフリーの可愛い女の子と合コンをセッティングしますよ?」
「僕を殺す気かい??」
何かを想像して青い顔で震え始めた吉久に、兼嗣は重症だとため息を一つ。
「さっきの話ですけどね」
「合コン? その単語を初雪さんの前で言ったらシャラに有ること無いこと言うからね」
「違いますよ物騒だな……、言葉もセックスも必要ない想いを伝える手段です」
「聞こうじゃないか頼れる後輩よっ!!」
「言いますから、そんなに強く手を握らんでくださいよッ!?」
血走った目で逃がすまいと迫る吉久の手を振るい払い、ドン引きした兼嗣は気を取り直して言った。
「ズバリ、プレゼントです」
「ほう、プレゼント。ちなみにエッチな物だったら殺すから」
「違いますよ、まぁプレゼントっていうか指輪です指輪」
「あー、……結婚指輪的な?」
「結婚指輪も婚約指輪も買う金ないでしょうが先輩……、まだ恋人なんですからペアリングぐらいでしょ。俺も紗楽先輩とペアリングしてるんですよ」
「そういえば、シャラって指輪してたなぁ……そうか、そういう手もあるのか……」
有意義な話を聞いた、相談した甲斐があったと言うものだ。
(これで贖罪になるとは思えないけど、うん、少しでも喜んでくれるなら)
指輪というのは女性にとって特別な存在だ、そしてそれは初雪にとっても同じ。
否、今の彼女には吉久との確かな繋がりの証として、精神安定に一役買ってくれるに違いない。
(…………僕は君に指輪をはめる権利なんて無い、けど、愛してるって伝われば少しは君も――――)
希望が見えるかもしれない、都合の良い妄想で終わるかもしれない。
でも、決して悪い事にはならないと想うのだ。
「ありがとう兼嗣、君に相談して良かったよ」
「どうも、んじゃあ今か買いに行きますか? それとも後日、紗楽先輩と一条寺先輩も呼んでダブルデートって感じで買いに行きます?」
「いや、こういうのはサプライズの方が良いと思うんだ。だから君とシャラと一緒に後日って事で」
「了解しました先輩、――じゃあそろそろ帰りますか、久々にゲーセンでも寄ります? 奢りますよ?」
「奢りならマック食べたいな、初雪さんにそんなの食べさせられないから暫く食べてなくて」
「…………先輩と一緒なら、一条寺先輩は喜びそうですけどねぇ」
男二人は、仲良く部室から出て行き。
一方、時は少しだけ遡る。
吉久が兼嗣に会いに行く少し前、学園内の教会の中には初雪と紗楽の姿があった。
他には誰も居ない、本来ならば神父とシスターが常駐しているが他の教会との交流で生憎と不在。
「うーん、誰も居ない教会ってのも雰囲気あるね。こうロマンチックな感じがするよ」
「藤原君との放課後を邪魔してしまって申し訳ありません紗楽さん、どうしても相談……というか聞きたいことがありまして」
「カネくんとは毎日一緒だから大丈夫だよ、それに聞きたいことってよっしーのコトだろう? 何でも聞いてくれよボクの新しい親友よっ!」
無理矢理に明るく振る舞ってはいるが、内心で紗楽はビクビクしていた。
放課後に部室へ行く途中、呼び止められたと思えば。
そこには笑顔ではあるが、鋭すぎるナイフのような空気を醸し出す初雪の姿があって。
(美人が怒ると迫力が違うって聞くけど、本当だねぇ……、いやはや、よっしーは何をしでかしたんだい?)
「此処の合い鍵の管理を任されているので、一人っきりになりたい時はこっそり使わせて貰っているんです、――秘密ですよ?」
「次に使う時は邪魔しないから一枚だけでも撮らせてくれないかな? 初雪嬢みたいに聖女そのものの美少女が祈ってる姿なんて幻想的で美しいと思うんだよボクは」
「ふふッ、一枚だけですよ? ……そうそう、話とは他でもありません」
来たぞ、と紗楽は身構えた。
短いつきあいではあるが、彼女とは親友だと、親友に相応しい仲になれると思っている。
しかしそれが故に理解してしまう、一条寺初雪という存在は皆が言うような聖女ではなく。
「カメラ、――貴方が没収されたカメラの話が聞きたいのです」
「正確には、没収した時の話だろう?」
「ええ、何があって紗楽さんはカメラを吉久君にカメラを没収されたか」
「…………あの時の話かぁ」
彼女は噂通りの心優しい人物だろう、それは紗楽も目撃したし。
些細なことではあるが、助けて貰った事もある。
だが心優しい人物と、危険な人物というのは両立する。
(まったく、類は友を呼ぶというかよっしーと似たいタイプだったのかな初雪嬢は)
絶対に聞き出す、強硬手段すら厭わない。
そんな気配すらする彼女に、紗楽は冷や汗を一筋。
吉久も人の良さと、ブレーキの壊れた危険さを併せ持つが。
「――――やれやれ、只の優しい女の子かと思ったら案外とよっしーとお似合いじゃあないか」
「ふふッ、嬉しい言葉ですね」
「もし話さなかったらボクはどうなるのかい?」
「さぁ、でも紗楽さんは藤原さんとご婚約されていると聞きました、卒業後はすぐに結婚式をあげるとも。……そして貴方はそれを知らないフリをしながら、どうにか大学卒業まで引き延ばそうと画策している事も」
「そのやり口、よっしーに似てるね」
「ええ、吉久君にされた事は何でも覚えていますから」
「成程ねぇ、愛の為せる業――――ん?」
その瞬間、紗楽は可愛く小首を傾げた。
今のは確かに脅迫だった筈だ、だが。
(された事は何でも覚えてるって……よっしー??)
親友は彼女に何をしたのだろうか、二人は熱愛中の恋人関係だと思っていた。
けれど、それは本当にそうなのだろうか。
確かな愛はあるかもしれない、しかし同時に、執着という言葉が紗楽の頭によぎる。
「この場から逃げ出したら、ボクは卒業を待たずに結婚かい?」
「まだ分かりません、でも……私なら大学卒業まで引き延ばせる、と言ったら?」
「残念だけど、その言葉には乗らないよ。ボクはカネくんとの駆け引きを楽しみにしているのだからね」
「――――そうですか」
「でも、ボクはキミを親友だと思っている。屈託なく親友と呼べ仲になれると思ってる。だから……その親友の恋人の過去を話すのに躊躇いは無いと思わないかい?」
余裕を崩さずそう言い切った彼女に、初雪は内心で舌を巻いた。
上流階級の娘として、跡取り娘として、相応の教育を受けている初雪にとってすれば。
その美貌も相まって、相手を威圧し交渉を上手く運ぶ事など容易い事だ。
(類は友を呼ぶ、とはこの事ですね。ええ、吉久君の親友らしい心の強さです)
だから、言わなければならない。
「申し訳ありません紗楽さん、私は貴方を心の何処か見くびっていた様です。こんな私で良ければ、貴方の親友にならせて頂けますか?」
「ああ! 勿論大歓迎さ! いやぁ、こういうの青春って感じがするよね! うん、ボクとキミは今、青春を第一歩を踏み出したのだっ!!」
「ふふッ、ええ、私達の第一歩です」
「では初雪嬢、キミのお願い通りにカメラを没収された時の事を教えてしんぜよう!」
そして紗楽は、少し困った顔をして語り出した。
「これはボクの恥にも繋がる話なんだけどね、……半年より少し前ぐらいかな、うん、それぐらいの時だ」
「成程、私と吉久君が繋がりを持つ少し前なのですね」
「おっと、そんなに前からよっしーと? もうその頃から恋人だったのかい?」
「ええ、吉久君はそれはそれは熱烈に私を口説いて来て、つい根負けしてしまいまして」
「ははぁ……あの狂信者のよっしーがねぇ」
あ、これ詳しく聞いたらヤバい事になるやつだ、と紗楽は直感した。
彼の知る吉久は、自分から初雪を口説くような男ではない。
何かある、踏み込んだらいけない何かがある。
「っと、話がそれる所だった。……実はあの頃のボクって高いカメラを買ってお金に困っててさ。その、なんだ? 怒らないで聞いてくれるかい?」
「ええ、私の耳に何も届いていないという事は未遂に終わったか些細な事だったのでしょう? 実害が無いのなら怒ることはしません」
「なら安心だ、――所でキミは自分の人気を知っているかい?」
「恥ずかしながら、聖女と呼ばれ皆の憧れになっている、という事は」
「ボクはね、キミを隠し撮りして売りさばこうとしたんだよ。ああ、勿論ヘンな写真じゃない、登校中や休み時間の姿を隠し撮りしてさ、男子をターゲットにして一儲けってね」
これだ、と初雪は直感した。
恐らくこれこそが、吉久を凶行に走らせた大きなきっかけ。
先日より興奮状態の脳は、素早く回転し答えを導き出す。
「――――もしかして、吉久君に知られてしまいましたか?」
「もっと悪い、あの頃から狂信者っぷりで有名だったからね。真っ先に声をかけてさ、そりゃあもう盛大にお説教だし、金に困ってるなら写真を全部買い取る代わりに二度とするなってね、もし他の男に売ったら処女膜とおさらばする事になるとまで言われたよ」
「………………素朴な疑問ですが、男のヒトって好きではない女の子にも勃起するのですか?」
「また直接的に言うね、ちなみにボクも同じ事を聞いたよ。そしたらさ、何て言ったと思う?」
呆れたような紗楽の表情に、初雪は若干の嫉妬を感じながら思案した。
吉久は己以外を抱くとは思えない、だから。
「ディルドーやバイブを使うと?」
「聖女様の口からそんな言葉が出るなんて、ボクはちょっと興奮してしまうよ」
「紗楽さん?」
「ははっ、ごめんごめん。正解は『君を縛り上げて紙袋を顔に被せる、そしてその紙袋には君の写真の初雪さんの顔を拡大して張る』だってさ、怖くない?」
「私は嫉妬していいのか、喜んでいいのかどちらでっしょうか?」
予想外の方法に困惑半分、喜び半分。
それはそれとして、彼が他の女を抱く可能性があった。
その事実だけで、腸が煮えくり返ってくる。
「既に怒ってるよね?? 帰ってからよっしーを一発殴ったらどうだい? ボクには無けど、キミなら浮気者って殴っても許されるさきっと、メイビー、多分……」
「ふふッ、それも良いかもしれませんね。――今日は良いお話を聞かせて貰って本当にありがとうございます。私はこれで……次の段階へ進めそうです」
「詳しくは聞かないけど、あれでよっしーはロマンチストだからお手柔らかにね」
「ふふッ、少しだけ考えておきます。……では外に出ましょうか、紗楽さんは部室に行きますか?」
初雪の質問に彼女はううむと唸り、ぽん、と態とらしく手を叩いた。
「どうだろう、これから親交を深める意味でもマックに行くのは。よっしーは連れて行かなさそうだしさ」
「ああ……、吉久君はそういう所がありますよね。私に過剰な幻想を抱いていると言いますか」
「その分だと、色々と不満もありそうだね。親友のよしみで少しぐらいは聞いてあげよう」
「そうと決まれば行きましょうか、実は私、友達と一緒に寄り道するのは初めてなのです」
朗らかに笑う初雪に、紗楽も笑い返して。
二人は仲良く手を繋ぎ、連れだって歩いていく。
(あはッ、あはははははははッ、そう、そうですかッ、やっぱり――――嗚呼、吉久君、貴方は私を……ッ!!)
あの半年間、初雪が犯されている姿を撮っていたのは紗楽のカメラだった。
そのカメラで紗楽は当初、隠し撮りをして男子に売ろうとしていた。
(繋がりました、ええ、繋がりましたね吉久君。――貴方は私の排泄姿を盗撮した、この発想は紗楽さんから着想を得たのですね)
それだけではない。
(ふふッ、貴方が狂ったのはそこから。……嫉妬、そう、吉久君は嫉妬した、いいえ自覚してしまった、――私を誰にも渡したくないと、けれど身分が、家柄が違う、そして私には政略結婚の可能性だってあった。…………他の男に私が抱かれる可能性に、耐えきれなかった)
つまりは、そういう事だったのだ。
奪われる前に、奪ってしまえばいい。
誰かに傷つけられるかもしれないなら、消えない傷をつけてしまえばいい。
(でも、貴方はそれに耐えきれなかった。私が傷つく事を、汚される事を、例えその相手が自分であっても許せなくなった)
それが。
(――――、貴方の、愛し方)
だから。
(私が傷つくのが嫌と言うなら、――私が私を傷つければいい)
その時、吉久はどんな顔をするだろうか。
想像しただけで、身震いする程の快楽が襲う。
「楽しみですね」
「そんなにマックが楽しみかい?」
「ええ、本当に――愉しみです」
初雪は大輪の毒華の様に笑い、うっかりそれを見てしまった紗楽は恐怖し。
見なかった事にして、マックへ急いだのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます