第43話 実体を持たない“白影”

幻界はラプラスの『皇帝』であるトキサダが同郷人であるラプラス達を斬って棄てた、この事実を次期スゥイルヴァン女王となる私は間違えてはならない。


私は紛れもなくこの魔界の出身だ、だから魔界出身の者には少々“甘い”処がある。 例えば―――同じ犯罪を犯したとしても異世界出身者よりかは魔界出身者の方を同情的に見てしまったり…とか、けれどこの時トキサダは自分の同郷人を―――それは私達の為でもあり、彼ら…ラプラスの為だとして。 そう、ラプラスの『皇帝』であるトキサダ自身の手によって、『これから自分達ラプラスは如何なる理由があったとしても魔界には害を為さない』と言う決意を表明あらわしたのだ。

その時私は思ったものだ……いくらか口ではそうったとしても、辛い事なのだろうと―――私が魔界の者達をいたわる様に、彼自身も同郷人をいたわらない理由なんてどこにもない、しかしこの度彼らのした事とは、また魔界との関係を険悪にさせてしまう方向にしかならない為、『皇帝』であるトキサダ自身が“けじめ”をつけた形を取ったのだ。


          * * * * * * * * * *


それにこの事はあまねく魔王様の耳にも入り―――

「よくやってくれた、この魔界を代表して感謝を申し述べる。」 「いえ……此度は拙者の不始末により噴出してしまった懸案、拙者のけじめを見届けて下されて感謝せねばならぬのは寧ろ拙者の方でござる。」

「そうか―――それより何も君自身の『不始末』とは、そう自責を重く感じなくてもいいのではないか。 そう言う言い方だと私は“ある存在”を疑ってしまう。」 「魔王様、お言葉ではございますが拙者もいち幻界人としての沽券こけんがございます、それに拙者の実父には『例えかぶけども我を美しうする事を貫けばおのずと恥ずかしうない事ぞ』…と。」

「“我”を“美しう”―――なるほど、義のココロを忘れてはならないと…。 君は父君より厳しい矜持を躾けられたようだね。 では、この度の勲功として幾らかの褒美を―――」 「お待ちください、魔王様。 拙者は何も褒められる事を前提で事を為したのではありません、ですから…」

「いや、これは是が非でも受け取ってもらいたい、こうした形でしか感謝の意を表せられないのは恥ずかしくはあるが、私からの心遣いなのだ。」


ま…まああーーー魔王様が今回の事に対し幾らかの褒美を…と言うのはある程度予想できたことだけどさ、それにトキサダもこれを固辞するのは判ってた事だけどさあーーーナニ、コレ!トキサダが魔王様に対抗しちゃってるぅ~?それよりナニナニ―――トキサダの矜持ってカッコイイ~~~!なんだか聞いてて“キュンキュン♡”しちゃうじゃなあーい!

それにしても『“我”を“美しう”する』―――それが『義』と言う言葉の謂れだと言う事を初めて知ったけど、思えばトキサダは出会いの最初からそれを貫いていたなあと私はさながらにして思ったものでした。


            ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


それからと言うものは幻界―――ラプラスとの関係を見直し、全部…とはいかないまでも出来る部分から修復をしていこうと言う事となり、そのモデルケースとなる為に私達が率先してギルドの依頼をこなしていた―――そんな矢先の出来事でした。


「これで最後のようだな。」 「うん―――それにしても敵性亜人達がこうも活発になるなんてね。」 「周囲の索敵終わりましたッ!もうこの辺は安全ではないかと。」 「それにしてもゴブリンやレッドキャップがのーう、ラ・ゼッタはちと物足りぬぞよぉ。」


「―――…。」 「どうしたの?トキサダ。」

「いや、なにもない気の所為だろう。」


今回私達は“敵性亜人”―――ゴブリンやレッドキャップ、オークにオーガと言った様な私達の日常生活を脅かすようになった者達を退治して回っている。 とは言え元々この者達も魔界出身…いわば私達と同じだ、けれど何かしらの理由―――それが現状に対しての不満であったり、そうした事が理由で民衆達を襲うようになる、“敵性”を顕わにしてしまう。

私個人から見ると魔王様やお母様のまつりごとは民衆に寄り添っていて不満なんてないものと思えるのに―――彼らは一体何が不満で“敵性”を顕わにしてしまえるのだろうか。

そうした疑問もそこそこに再び調査を開始する私達、すると道すがらで出会ってしまったのだ。


一人の冒険者が辺りを警戒するように佇んでいる―――神経を張り巡らし、この警戒の網の糸に触れようものなら即応できる雰囲気を漂わせながら…

片手には得物である100人張りの弓、特徴ある長耳は蟻の足音さえも聞き逃さないまでに緊張をしていた、その冒険者はエルフ……


「―――つて、お母様あ?!」


その、私が発した不用意な発言で静寂は破られる。 現スゥイルヴァン女王であるお母様は国家元首である以前に現役の冒険者、それにお母様が警戒を払っていたのは、今回私達が相手をしてきたようなゴブリンやレッドキャップ小物などではなく―――…

「ふハハハハ!油断をしたヨウだな―――そレトも可愛い娘が来た事に気が取られデモしたかあ?」 「そう思いたいんならそう思ってな―――けれど…何が哀しくて私が憧れてた英雄様と同じ種属を狩らなくちゃならないのか、まあ―――そこんところは踏ん捕まえてササラ辺りに取り調べてみる必要がありそうだよね。」


「何と言うか…母さまにかかったらオーガと言えど赤子同然だな。」 「て言うより女王様オーガよりも“鬼”強いですぅ~。」 「バルバリシアよ、そちは巧い事を言うのう。」


「そーれよりあんた達こんな処でなにしてんの?」


「あーまあ私達も“敵性亜人”の討伐を、ね。 それよりお母様はどうして?」 「ん゛ーーーまあ皆からの陳情やら聞くのって面倒だしさあ……」

「(ん゛っ、ん゛ん゛っ!)お母様―――」 「おおっといけねえ、ちょっと本音が漏れちった。」


「(ほ…本音って。)」 「(せめてオブラートに包みましょう…母さま。)」 「(いやまあけど、私も似たようなもんだしなあ…お母様の事言えやしないし。)」


その冒険者とは私のお母様であるシェラザードだった、そしてお母様が警戒をしていたのが“敵性亜人”の中でも危険ランクが上位であるオーガ…まあ、私達がこれまで相手してきたゴブリンやレッドキャップみたいな小物ではなく―――これはお母様も皮肉として言っていた事なのだが、この魔界で英雄にまで祀り上げられている人がオーガ出身で、その英雄と種属を同じにする今回の“敵性亜人”の上位者を自らの≪神意アルカナム≫によって行動不能に陥らせた……これによって少しは“敵性亜人”達も大人しくなるだろう―――そう思っていた時に…


「(ん?)―――どうしたのトキサダ。」 「(……)いや、何でもない。」


―――またトキサダはどこか虚空を見つめていた…それを彼は『何でもない』とは言うけれど、本当にそんな行動は取らないハズ―――けれどそこはトキサダの顔を立てて何でもないように振舞ったのだ。


          * * * * * * * * * *


それからまたしばらくして私とトキサダはマナカクリムの街を歩いていた。(ザンネンながら“おデート”じゃありません!)

ま…まあーーー私としたら“男女関係一人の男と女”としてそうしたい気持ちはヤマヤマなんだけど、私達も冒険者の端くれとしては準備やらなんやら欠かせないわけでして―――

「あと―――残っていると言ったらポーション作る時の器材の補充だよね。」 「ふむ…ならばあちらから行こう。」

「(え…)いやでも、この大通りを突き進んで交叉路を右に進んだ方が…」 「いや、今回はあちらからの方が良い。」

その時彼の目には明らかな警戒の色が濃く出ていた。 そうトキサダはある危険を感じ取っていたのだ、本来の道程ではなくわざと遠回りに向かおうとした…けれど相手もる者、私達が器材を売る店舗から出たのを見計らうかのように。

「すみませんが、そこ、道を空けてくれません?」 「(…)いや、無駄だろうな。 この者達は以前より拙者達の事をうかがっていた―――」

「『以前から』…って何時いつからの事?」 「拙者達が“敵性亜人”共を討伐するようになってから―――…」

「それじゃから―――」 「だが、拙者は飽くまで『拙者達』とした、或いはアルテイシア殿か或いはラ・ゼッタ殿か果てまたはこの拙者か―――そして…」

「“私”―――か…それで?」 「最早言うべくもない、こやつらの標的はどうやらリルフィ殿のようだ。」

私達の帰途かえりみちを塞ぐかのように遮る集団―――それにこの者達の気配は私でも気付いていたものだった、けれど“今”までは行動を明らかにはしてこなかったのに、それがなぜ“今”になって顕わにしてきたのか……


その答えは単純にして明解―――私が王女だから…


この国スゥイルヴァンの前身であるエヴァグリムに哀しい話しがある、それは私のお母様―――シェラザードのお母様でもある『ヒルデガルド』と言う方が当時の貴族達…『獅子身中の虫』の策略によって生命を落とされた事、まだ産まれて間もなかったお母様もその哀しみを胸に刻み、自分のお母様であるヒルデガルドの仇を討ったと言っていた。

けれどそれで『獅子身中の虫』達はいなくなったわけでもなかった。 以前の者達がいなくなればまた新たな者達が台頭して来る…そう言ったわけでスゥイルヴァンを建国しても黒い害虫の如くに増殖して来る者達に辟易へきえきしながらもお母様は彼らの相手をしていた。

そしてそれは当然次期女王となる私の身にも降りかかって来た―――今現在ではオフィーリアを私の影武者として見立てているけれども、私もむざむざとあの子を死なせたりなど思ったりはしていない。(そこはズルいと思われるかもだけれど、お母様の親衛隊の力を借らさせてもらっている)

スゥイルヴァン城ではお母様の影武者であるシルフィさんと共に私の影武者としていろんな人達と接見をしてもらっている。 けれどもオフィーリアやシルフィさんが私達の影武者だと言う事は『獅子身中の虫』達にはとうに判り切った事―――だから私達本人を見張り、隙を見計らって…と言う事なのだろうけれども、私はこの時でも隙を見せた覚えもないし敢えて呼び込もうとしたわけでもない、と―――言う事は彼らに雇われたこの者達も焦っていると言う事か…

「さぁて洗いざらい話してもらいましょうか―――とは言っても、素直に話してくれるものかなあ。」 「何、腕の一本―――肘から下を落とせばその舌も滑らかとなるだろう。 それにこやつらも任務に失敗した折には自分がどうなるかも判っているはず…」

「うわーーー厳しい…けど止めといてトキサダ、こんな奴らの血でこの街の景観を損ないたくない。」 「…しかし―――」

「『甘い』って言うのは判るよ。 けれどさ、こんなにも事で気分下げたくないじゃない―――それは私もそうだけれどこの街に住む皆が…ね。 それに、さっさとご主人様に伝えときな、私に何か言いたいなら直接私に言いに来い―――ってね。」

こうして刺客達をうの体で追い返した―――のはいいのだけれど、それでもまだトキサダは警戒を払わないでいた。 そう…を―――誰もいないはずの建物の片隅に、“じっ”…と眼を凝らして。


それからは特別何もなかった。 日頃は冒険者として冒険を―――そして時々王族としての公務をこなしていった。

けれど日常は突如として破綻する―――それは、以前あったことが私達の“様子見”であるかのように…


現スゥイルヴァン女王シェラザード致命の一撃を受け重体に陥る……


それはこの魔界を揺るがす一大事件として取り扱われたのでした。


           ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


この事を現政権は重く受け止めた―――何よりスゥイルヴァン女王は魔王の業務を肩代わりしている事もあり、女王が動けなくなれば魔界の行政も滞って来ることになる。 それは現政権下の中枢にしてみても面白い話しではなく、殊の外“三柱みつはしら”は重体となった女王の容態をうかがうばかりだったのです。

{おおこれは公主様、女王のお加減はいかがでしたか。} {それがどうもかんばしくない、典医も『今晩が山場』じゃと言うておった…}

そこ、かしこで“噂”される話し―――しかもその“噂”は女王の命脈はそう長くないのだとか。

けれどその“噂”を耳にし、『ぬたり』と北叟笑ほくそえむ者がいました。


「(ふっふっふ―――我等の事を蔑ろにし、軽んじてきた事の“ツケ”だ、思いの様知るがいい…スゥイルヴァン女王。)」


獅子身中の虫こうした者達』は、“時代”、“世代”を越えてどこにでも存在する…お母様がスゥイルヴァンを建国するに先立っての『獅子身中の虫彼ら』を一掃した…とは聞いていたけれども、あの時代から500年以上も経った今日こんにちでも“彼ら”は存在する…けれどそれはあの当時とは面子を違わせて。

全くもっ辟易へきえきとしてしまう、一部の特権階級を得た者達はその初心を忘れ、今では真逆の行動を取って来る。 そうした時にトキサダと魔王様が交わした会話が耳に残る…『我を美しうする』と言う“義”の心―――耳の痛い話しだなと私は思った。


そして早晩―――ある『訃報』が流れる…


          『スゥイルヴァン女王シェラザード崩御』


建国以来500年以上に亘って君臨してきた超大国の女王が急逝したのだ。 これほど衝撃的なニュースは即座に魔界中に知れ渡り、偉大なる為政者の死を悼むと同時に、やはり自分達を弾圧し続けてきた為政者の死はやましい考えを胸に秘める者達の鎌首をもたげさせる要因ともなり得―――

「ああ~~お母様ぁーーーお母様ぁぁ~~~。」

棺に納められた女王であり実の母親のむくろを前に王太子は声を上げてきました。 優れた王にして優しい母―――その急な死は喩え王太子でなくとも哀しみ悼むべきだったでしょう。 そしてなにより、『スゥイルヴァン女王』として頼りにしていた魔王が、その哀悼の意を表明あきらかにした…これによって女王の死は確実なものとなり―――

「ふふふふ…ようやくこの時が来たようだな。 王太子とは言えどリルフィーヤは未だ政治の経験も浅い、そこに我等が付け入る隙も出て来ようと言うもの。 偉大なる為政者にして母が死んだ衝撃は収まらずにはおれまい。 こうした時にぬらりと側に近づき甘言を以て誑し込めば我等の良き傀儡と成ってくれよう…。」

その者達は、いわば女王が選りすぐって特権階級貴族に取り立てた者達でした。 それに当初女王はそうした特権階級貴族と言った者達を毛嫌いしていた…言うなれば単身たった一人でそうした者達と敵対してきた実の母の体制を維持してきたのです。


……なのですが―――?


ならばなぜ女王は新たに貴族に取り立てたのか。 それは自分の夫でもある宰相の助言もあって―――

確かに貴族と言った者達は自らの事を“特権階級”だと思い違ってしまえば厄介なものでしたが、上手く付き合って行けば王国の担い手になる事もある。 例えば自分の夫でもある宰相の家柄は『侯爵』でした、けれど当時王女だった女王の『粛清』から免れ、あまつさえ伴侶と成れた例もあるのです。 だから―――今回もまた、慾にまみれ臣下としての矜持を忘れた不心得者の所業でもあるのです。


そしてここに、今回の事の発端となった存在性が―――


「それにしてもよくぞやってくれた“ミゾレ”。 お前の一族が忍の系譜だと判った時には我等の計画の八割方が成就したと思ったものぞ。」


そう―――その『獅子身中の虫』の傍らにいたのが忍…それもある忍の一族の系譜の者だと言う。

獣の耳に獣の尻尾、その所々には“豹紋”が確認された―――しかしながらその獣人は、前評判通りならば“黒”くなければならない。 けれどその一族の系譜の者は“白”かった…『黒豹人』なのに、黒はあまね夜陰やいんの闇に溶け込みさながら“影”の如く探り動き回る、伝承によればさある英雄の集団の中にそうした特徴を生かし英雄達を勝利に導いた英雄ものがいたと言う…されどその者は白い―――と、するならばその不正貴族の傍らにいた白き豹の忍は落伍者であったのだろうか。


           * * * * * * * * * *


それはそれとして、不正貴族達の魔の手は他の者にも伸びる。 次なる標的は王太子―――では、なく…女王崩御の時までその“影”として支えてきた影武者、その名を『シルフィ』と言いました。

彼女の存在は女王がまだ王女だった頃、自分の母の死に様を知っていた事から自身の身を護る為に打ち出した“苦肉の策”と呼べるもの。 ある日王女の主催によって催された晩餐会でシルフィを見つけた…それから彼女の人生は一変しました。 元々シルフィはさある冒険者が組んでいたPTメンバーの一員であり、冒険者としての実績もあった…そこへ、王女の目に(不幸にも)止まってしまい無理矢理王女としての役割を―――その後はご存知の通り、シルフィが元々所属していた冒険者PTで縦横無尽の活躍を果たす(本当の)王女―――の反面、エルフの王国の城にて王女の公務(各国・各勢力の要人との接見や貧困者に対しての援助等々…)をこなしていく(本当の)冒険者…けれど“慣れ”と言うものは怖いもので、経験や実績、年数を重ねる毎に本当の王女とさして変わらない能力スキル(主に内政面)の習得まで至ってしまった…。{*この当時のPTの一員から『もう彼女を王女としてしまったらどうか』と皮肉られたのもこの頃の話し}


そう―――今やシルフィは女王となんら変わりはない能力スキルを持っている、それはいわば『もう一人の女王』がいると思われても仕方のない事だったのです。

だから―――だから不正貴族達は放ってはおかなかった…放ってはおなかったのです。

それにシルフィにしてもようやく長年の肩の荷が下ろせた…女王崩御の機会にスゥイルヴァン宰相から(秘密裡に)長年の功績を讃えられ、その職から辞したシルフィ。 まだ若い者達には負けない処はあるとはしながらも、最盛期は当に過ぎた冒険者にとってはEランクの依頼であっても難しいものがありました。 と―――生まれ故郷へと戻って隠居をしよう…と思っていた矢先に。

「だ―――誰です?!」 「長らく女王としての“影”を務めあげたシルフィ―――で、相違ないか。」

「(…)確か―――あなた…陛下の死の前後に現れていたという“白影はくえい”。」 「(…)―――それを判ったとて誰も私が“私”である事を認識できない…なぜならあなたも死ぬからだ。」

「だ―――誰か…助けて!」 「往生際の悪い、だがもうその“顔”に“声”、“仕草”までも覚えた。 この先どこへと逃げようがその命―――頂く。」

不正貴族に雇われた黒くない白い黒豹人族の忍が、元冒険者にして元女王の影武者をしていたシルフィの下に現れた。 その目的は言わずもがな…今は隠居を大人しくしていようとも、それはスゥイルヴァンが認めない話し…前述したようにシルフィは女王とほぼ互角の能力スキル(内政面)を修得している。 しかも女王の夫である宰相は、一部でも『腹黒宰相』として知られた人物。 ほとぼりが冷めた頃に『実は女王陛下はご健在である』ことをほのめかせ、シルフィを女王として祭り上げてこないとも限らない…。 だったらその前に―――“影”にもいなくなって貰えればいいまでの話し。

シルフィの前に立つ黒くない白い黒豹人の忍……我が身可愛さ―――生命が惜しいとでも言うように逃げるシルフィを追いました。 しかしながら『昔取った杵柄』―――と言うべきか…それとも森と共存してきたエルフならではと言うべきか…逃げ“上手”だった。 けれど“ミゾレ”はシルフィの“顔”を…“声”を…そして“仕草”までも覚えていた―――相対距離を離された時は焦ったものでしたが、焦るあまりか…それとも最盛期の様に思うように身体が動かせないでいたか―――丁度大木の根元辺りでうずくまっているを確認した…。 よく見てみれば標的ターゲットの左足の爪先には血が付着していた、そう……今は足を怪我して満足に動けない、逃げる事はかなわない――――


だと、するならば―――?


元女王の影武者シルフィの命脈もここに断たれたか―――そしてそれはスゥイルヴァン再興の道程も険しくなるか…に、思われるのですが。


この時大木の根元にうずくまっていたは、本当にシルフィだったのでしょうか?





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