第27話 魔人―――降臨 ~“人”にして“魔”より魔なる者達~
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“とある世界”の――― “とある場所”にて…………
「―――以上がワレからの頼みとなる……宜しいか、『リッチー』。」
「久しぶりだと言うのに、我に会いに来たという動機がソレとは―――哀しい限りだ【
「ワレもなるべくならこうした手は使いたくはなかったのだがな、この老い先短いワレの目の黒い内に何とかしてやらればと思うのは、ワレの単なる老婆心に過ぎん。」
「我より永き時間を紡いでいる汝がそう言うのは皮肉と言うものではないか。 しかしその想いこの『リッチー』にも判るぞ、それに憎まれ役を買うのも、もう慣れた。」
「この“借り”……いずれ
それは―――この事案が発生したほんのちょっと前の出来事、『リッチー』と【
* * * * * * * * * * *
そんな事とはつゆ知らず、或いは『幻界』に於いて―――或いは『魔界』に於いて“
その突端は幻界―――かつて魔界の逆襲の前に壊滅してしまったグリザイヤとはまた別の一都市に本拠を構えた、今となっては残存勢力に“
「今までは手応えの無い者達を寄越してくれて何と感謝したら良いのか―――言葉が見つかりませんが……それもまあ良しとしましょう。 あなたは、この私の“敵”となりさらばえるものか―――精々持ち堪えて下さいね……」
「ぐ……ぬううっ―――まさかこの『剣聖』を圧倒するとは……貴様は何者だ!」
「自己紹介が―――必要ですか?これからお亡くなりになるのだと言うのに……」
「ぐ……くうううっ!ふ、不遜な!!一介の武人でもない尼の貴様がーーー」
「ふっ……ふふふ―――あなた、私の事が“
「おっ―――おのれワシを嬲るか!!」
「その程度の腕前で―――『剣聖』などとは片腹痛い……せめて『門前の小僧』くらいなら判らなくはないのですが―――」
「ワシの一太刀、貴様に届きさえすればあ―――!」
ラプラス達の新たなる主要都市『カイゼラムタウン』……その西方面に於いて戦端の一つは
『白魔導師』は定石通り一番先に狙われたものでしたも“回復”や“治癒”或いは“蘇生”と言ったものは後に手を
「なっ―――なんだっ?!かっ……身体が思うように動かないッ!!?」
「い、一体私達は何をされているの?まるでっ……見えない重りが身体のあちこちにぶら下げられているよう……にっ!!」
『狙撃手』や『軽装剣士』と言った者の
「あらあら、この世界の英雄足りえるあなた達でさえも私の『神域』は突破なりませんか、ひとつ参考までに―――この私の『神域』は、もともと私を中心とするある一定の範囲の生物の動きを緩和させるためのモノでした、されども血の滲むような努力の果てに、私は更なる力を手に入れた―――そう…“緩和”ではなく“停滞”、今やこの『神域』は重力すらも操るこの私……『静御前』を代表する“
『静御前』を名乗る者の仕業―――しかしその者の真の恐ろしさを彼らは理解できていなかった。 なぜなら、彼らも理解できるようになってしまったのは、その事後だったから……
『静御前』が自らの能力を口にする前に、死に物狂いで放たれた『剣聖』の一太刀が『静御前』の両眼を覆っていた革製の両眼眼帯を切ってしまった……そして現れた『静御前』の両眼こそは……
「(『鬼』の……『眼』?)貴様は『鬼』の血が連なる系譜の者と申すかぁ!!」
「ふっふっふっふっふ……見られてしまいましたか―――この眼を、しかしそれでもようやくと申しておきましょう。 一体何者がこの眼帯を切れるものか待ち侘びたものでしたが……中々に切れる者なぞ現れなくてね?だから敢えて今回切れるように仕向けて差し上げたのです。 そしてこれからが本題―――あなた達には私の“
私の“
“舞う”は死神の刃か……だとしても『剣聖』が、『狙撃手』が、『軽装剣士』が見た者とは『死神』と言う例えすらも生易しいものだったと感じさせずにはいられませんでした。 それもそのばす、その場にいたのは『黄泉』の支配者にして女王―――だったのだから…
* * * * * * * * * * *
かくしてカイゼラムタウンの西方面で展開されていた戦闘は収まりました。 そして今度はカイゼラムタウンの正面―――南方面に於いて……その地区は正面玄関口と言う事も
「(あれは―――…)私達の『司祭』や『神官』『僧侶』に値する者では?」
「そのようで……しかし『勇者』様、ご油断召さるるな―――このカイゼラムタウンを三方より襲撃して来ている者を思えば…」
「あら―――――――、あら―――、あら…このわたくしをお出迎えであるとは、気が利いていますわね。 では、手っ取り早く済ませると致しましょう…『勇者』とはどちら様?取り敢えずその者一人を差し出せば、お前ども全員の生命を奪うような事は致しません、えええ……致しませんとも。 このわたくしめが信奉する“我が神”の名の下に於いて。」
「くそうっ……バカにしてくれるじゃないか、私一人の生命で……だと?そんなお前の様な者の口から―――」
「おい……口の利き方に気を付けろ―――ですわ。」
攻撃力最低、防御力も最低の回復役である者から耳を疑いたくなるような言葉……いつも戦闘になると自分達に保護されながら傷付いた仲間達を癒す立場にあり、いつも後方で震えているだけの存在が……その世界で最強と謳われている『勇者』達を向うに回し、こう
しかし、己の武に勇を馳せさせた者は想う―――ようやく苦しい修錬の果てに掴んだものを、そうおいそれと手離していいものか……と。
そして―――その想いは“後”で“悔”いる事となる。 『この自分一人の生命で…』…と。
その『勇者』が口にした、不当な物言いの所為で聖職者(?)の周辺の空気が歪んだ―――かと思った次の瞬間
「ぐぶぉあはあっ!」
「『聖騎士』殿ぉ!!?」
信じ……られなかった―――私の仲間の中では守備力/防御力共に高い『聖騎士』殿が……その盾と共に貫かれた?!一体……“何”で??あの聖職者の装備は杖―――だったはずなのだが……その杖はあの聖職者が立っていた場所に捨て置かれたまま……いやだとしたら、一体“何”でオリハルコン製の盾を……??
「ふっふっふっふ……貧弱―――貧弱―――貧弱ぅうう!! こんなものか?こぉんなものなのですかぁあ?音に聞く『聖騎士』とやらの守備力/防御力というものはあぁぁ…まぁるでラワン合板の試し割りをしているようですわ、お前共……このわたくしと正面切って立ち向かうからには全身全霊を以て当たりなさい、それがお前共に課せられた使命……こちらへと赴く前、抑制しておかねばならなかったこの想い……お前共に理解できますか?ええ出来ませんでしょうとも、ですからこの話しに乗ったのです―――わたくし達の監視の目が行き届かない場所で、わたくしたちがどう立ち振る舞おうとも問題はない―――と……ですから―――さあ―――お前共も捧げるのです、わたくしが唯一信奉して已まない『人中の魔王』様へその魂を!!」
「おっ―――おのれえぇぇっ!そなたは聖職者でありながら魔王信奉者であったかあぁっ!!」
「黙れ―――老いぼれ…お前の、その腐ったような魂など要らない……この『
「ひ、ひいぃぃ……お、お助けをぉーーーっ!!」
「見苦しい……やはり見るに堪えませんわ。 うふふふふふ、ではあいつから粉微塵にしてくれましょう―――」
「させるかっ―――『守護騎士』殿、『神殿騎士』殿、『枢機卿』殿の保護を! そして『付与術師』殿、『
たった一人の異常なる者への対処として、その考え方は間違いではありませんでした。 『聖騎士』には劣るとは言え、その次点で守備力/防御力の高さに定評のある2名を対象に張り付かせ、ただでさえ高い守備力/防御力に上乗せする能力上昇系の魔術付与、これで大概の攻撃は防げる―――そう思っていた…………のに。
「『“
「ごぼぉっ!」 「ぐがぁぁ……っ!」
「(……な?!)『守護騎士』殿ぉ―――『神殿騎士』殿ぉぉ!」
「あっははははは!ナニソレ、ケッサクぅ~~一体何をしたのか、わたくしには意味不明でしたが……ほんのちょっと触れただけで構築されていた付与魔術の術方式までふっ飛んでしまいましたわぁ~! とは言え、今のは
『狂っている』―――ひと言で片付けてしまえばそうなのでしょう……けれど、私にはまだ
あれは“人”じゃない―――“人”でなければ“魔”なのでもない……では一体何なのだ。
私達は……この世界の“神”に選ばれた者達だ、“神”に選ばれたからこそ生まれ持った名前を捧げ、“神”に忠誠を誓った―――なのに、
「ゆ……許さんーーー今まで共に闘ってきた仲間達の無念、ここで
「くす――――くす くす……あらあら、ようやく仲間を殺されて覚醒に至りましたか。 どうやらわたくし、今回ばかりは“当たりくじ”だったようです。」
「なにぃ?!」
「くす―――――――くす くす。 あらあらそんな怖い顔をなさらなくても。 けれども、お前が本気になったというならば、わたくしも本来の姿を晒すといましましょう……」
それは―――『死の舞い』と言うべき……だったか、その女の聖職者は私にそう言うと一見して不思議な舞を舞ってみせた。
しかし……私は知らなさ過ぎた―――私“達”は、知らなさ過ぎた。 その舞いこそはある武術の、“生”と“死”を賭けたものである事を。
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