第13話 新たなる“絆”
『二大軍師』の一人である『魔王軍総参謀』ベサリウスが率いる一団に所属するリルフィのPTの頭脳は現在このPTには“火力”が足らない事を認識していました。
だからと言って手を抜くわけにはいかない……そう言う事もあり、闇の司祭クローディアは自分の考えをPTのリーダーであるリルフィに申し出ました。
「リルフィさん、少しお話しをよろしいでしょうか。」 「えっ?あっ、はい。」
「率直に聞きたいと思います。 今現在私達のPTの火力でラプラス達が撃破出来る―――と、そうお思いですか。」 「えっ……ああ~~ちょっと厳しいんじゃないかな。」
「そこで―――です。 もしよろしければヴェルドラリオンに行ってみませんか。」 「(ヴェルドラリオン…)あの、そこ―――って…」
リルフィのPT内で一番火力があるのはリルフィの弓―――更に言えばリルフィに備わる『ある権能』でした。
とは言え、その権能はおいそれと表立たせてはいけない、恐らくはラプラス側もその事までは把握しきれていない……
500
そしてリルフィ(リルフィーヤ)には、産まれた時に母から受け継がれた権能を持っていた―――そう、つまり今現在魔界側にはラプラス達を壊滅させた恐るべき権能の持ち主が2人もいる……と言う事になるのです。
しかしリルフィの存在は今の処表立っては取り上げられていない……とするならば、今ラプラスが警戒しているのはシェラザードのみでしかないのです。
だからこそリルフィの事は秘蔵としておかなければならない……とここで戦力増強の為にと動き出したのがクローディアだったのです。
そしてクローディアの意見こそが、
「お久しぶりに存じ上げます、ク・オシム将軍。」 「クローディア……それにしても
「いえ、これと言っては―――ただ、こちらの方を…」(チラ) 「あ―――あの私、リルフィと言います。」
「ほう―――リルフィ……(よく、似ておいでだな、あの方と……)」
クローディアがこの街に駐留しているク・オシムという将軍にリルフィ達を目通りさせたのにはある目的がありました、それにク・オシムもリルフィを一目見ただけで気が付いた…500年前、自分達の名誉回復の為にと奔走してくれた、あの当時の『エルフの王女』―――その恩人によく似ている事を。
そして“元”ラプラスではありながらも自分達の恩人に協力をしてきた『“闇”の
「実はこちらの方の更なる向上の為に、あなた方の力を貸して頂きたいのです。 ただ、その事に事前の予約のお取次ぎをしないままに、こうして交渉に訪れた私の事をどうかお許しになられて下さい。」
「ふむ…まあ理由の如何は問わずにおこう。 それよりも私達に力を貸してもらいたい―――とは?具体的には何をすればいいのだ。」
「それでしたらば、まずはあなた方の主上―――竜皇様にお目通しを……」
「(……は? は?? はああああ~~~??? りゅ、竜皇様―――って、
事態は急転直下、この“闇”の司祭の申し出により成行きのままに
だからこそ不安になり―――……
「ね、ねえ、ちょっと、クローディアさん!」 「はい、何でしょう。」
「私聞いていないよ?この国の王様に会うだなんて……。」 「はあ……」
「(『はあ』って…)あの、これ外交上の問題にまで発展する―――って言うような事には……」 「いえいえ、私と彼女とは
「そうなんでしたか―――……って、それより、『彼女と
今回クローディアが、
ところがこれまで政治の世界には足を踏み入れてこなかったリルフィーヤにしてみれば、この国一番のお偉方に『接見』すると言うのは外交の“それ”にあたらないかと危惧してしまったのです。
それにしても……一介の田舎の司祭だった者が、どうして一国の王と
その謎を紐解く為、玉座の間へと通されるリルフィーヤとクローディア……簡素な造りながらも“皇”の“座”に坐する者に―――
「クローディア殿、我が
「この私に敬称か……淋しくなったものだな。」 「友としての
「まあ―――よい……それで、ただ旧友を温め直しに来ただけではないのだろう。」 「流石でございます、その事をもうお分かりになられているとは。」
「それより、そなたに付き従っているのは?」
一族の―――いや、一国の王に収まると言うのはその言葉の“魔力”の上だけの話しではない……小国でも『王』に収まればその国の民の安寧を、その国自体の繁栄を約束されたのも同然、そして時にはその命を賭して国と国との争いをしなければならない―――今現在に於いて
しかし500年前、異世界からの侵略者との戦争に於いて戦功を立てた事に鑑み、魔界の王から
その当時としては身に余る栄光とはしながらも、度重なる援助や支援を受けどうにか現在に至るまでにこぎつけた、それにプ・レイズにしても機会を見てまた以前の役職に戻ろうとはしたものでしたが、どうやらそこは、なし崩し的に……
それにプ・レイズにしてみれば、クローディアと接している間にも、その当初から気にはなっていた事が。
魔王から許可・下命により一国を
すると―――
「私は付き従えているのではありません、私が付き従っているのです。」 「(う・ん?)クローディア殿……」
「私が今回こちらを
「(へっ?ク、クローディアさん??な…何言い出しちゃったりするの???)」
それは、知恵ある者だからなのか―――それとも知恵ある者だからこそなのか、そこは定かではありませんでしたが、もしこれが彼女の構想に描いていた事ならば……しかしながら自国とは比較ならないくらいの大国―――それも次代を担う『王太子』のご来訪ともなると、さすがにそのままにしておくわけにはいかず……
「これはご無礼を。
「ああああ~~~いやいやいや、そんな気遣いご無用ですってえ~~。 ちょ、ちょっとお?クローディアさぁん!」
「まあ今回は非公式―――
「はっ―――ならばこの上はここを我が家の様にお使いくださいませ。」
{(うっわあ~~この人やっちゃってくれたわはぁ~~私ってば、まだそんな偉そーーーな事が出来る立場じゃないってのに……)}
以前リルフィーヤは「冒険者リルフィ」として、自国の都マナカクリムにいた事がありました。
この魔界でもかなりな有名人―――であるがゆえか、自分の国の都ともなると誰もが知る“超”有名人……だからこそ、すぐにでも自国を飛び出したかったものでしたが、今また同じ状況がリルフィーヤの周りを取り巻こうとしていたのです。
魔界の超大国スゥイルヴァンの次期国王(女王)―――実質魔界の王に次ぐ権威、権力を有する者の“次代”のおでましと言う事もあり、リルフィーヤは
「(えええ~~~っ、なんでこうなっちゃったかなあ……それにしてもクローディアさん一体何を考えて……)」
急に“しくしく”と痛み出した胃を
「(リルフィーヤ様なんとお
彼女と彼女の従者からしてみれば想定外―――ではありましたが、それもこれも既に彼の者が描いていた想定内、こうした祝いの席ですらも利用し“
* * * * * * * * * * *
「さすが―――と言った処ですかな、クローディア殿。」 「さすが……とは?」
「彼の超大国の王太子殿下ですらも利用し、我等となにかしらの“
「こうした“騒ぎ”では、
「(!)しかし、ラプラスは陛下の奮励のお蔭もあり―――…」 「ええ、確かに滅びました。 この私を無実の罪に
「なんと?!ではこ度のはまた別の??」「―――で、あると言われています。 私も聞いた上での話しでしかありません、この眼で直接確かめていませんので…」
地方の田舎で隠棲していたラプラスの司祭は、自分が再び表立つことはないだろうと思っていました。 ……が、しかし、全くそうであるか―――と言えばそうではなかった、『もし』『万が一』ラプラス共が復讐の鎌首をもたげてこないとも限らない、だからこそ戦友達との去り際に……
『またこのような騒ぎがあった時には、遠慮なさらず頼って下さい。』
あの言葉は、『賢者』が―――邪神アンゴルモアが滅び逝くなか、彼女がラプラスだったからこそ気付けたのかもしれない…そして想定内通りまたもやラプラスはその
「あなた方の育ち盛りの若い芽を、殿下の為に役立てたいとは思いませんか。」
「なるほど、そう言う事でしたか。 ならばこちらとしてもそのお話しは願ったりもない事、今の内に若い世代でのコネクション作り―――と、こういう事ですな。」
「それでは明朝出立いたしますので、それまでに準備を整えておられて下さい。」
次の超大国の王となるべき者と、その方を支える確かな実力を有する者、この事は現女王が歩んできた道であり、その繋がりで魔界を侵そうとする者達を滅ぼすまでに至った。 クローディアはその事象をその両の
あれから500年―――ラプラスの“人間”と言う種属でありながらも、500年前の容姿を変えずにいられたのは、彼女が既に“人間”を辞めたから。
今のクローディアは“闇”の眷属、『黒衣の
* * * * * * * * * * *
それはそれとして―――翌朝、リルフィ達とこれから行動を共にする竜人族の“若い芽”……とは?
「のっほん!このラ・ゼッタめがお前達に協力してやるぞよ~?その厚意ありがたく受け取るのだぞよ~。」
「(えっ、あっ?)は、はい―――こ、これからよろしくね。 私の名はリルフィて言うの。」
「うむ!苦しゅうない、してそちらのしょぼくれた奴はなんだぞよ。」
「(しょぼくれた奴…)あの、私はハルピュイアのバルバリシアと申します。 以後お見知りおきを。」
「なぬ?!ハルピュイアとな、卑しい獣人と口を交わすのではなかったのだぞよ。
よいかバルバリシアとやら、ラ・ゼッタはいずれお母上の次に
背丈は従者のハルピュイアと同じ、それに聞く処によれば350の
けれど当の本人(バルバリシア)はこれまでにも他人からそんな態度で接せられていたこともあり、過分に気にするような事はなかったのでしたが、実はその態度が気に入らない人物が……
「そもそもじゃな、卑しい獣人であるそちが、このラ・ゼッタといっ―――
「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、。」(←まるでゴミを見るような目)
「(ぴょえっ!?)ク……クローディアさん??」
そう、“闇”の司祭であるクローディアが、まるで汚物を見るような目で見下し、自分の杖でラ・ゼッタを“ぐりぐり”と突いていたのです。
それにしてもなぜまたクローディアはそんな事を?
「あなた、一体誰に向かってその様な事を?」(ず・ずいっ)
「(ピョエッ!)へ……?だ―――“誰”……って?」(←今にも泣きそう)
「あ、あ、あの~クローディアさん、私はそんなに気にしてないから……(アハハ…)」
「う、うむうむ、そうであろー良きに計らうのがよ―――
表情を一切変えず、眸をギラつかせ―――ながら、無言のままで杖を押し当てて来る、それはそれで怖い印象を与え
{*尚その時のクローディアは、その表情も相俟って迫力満点であったことは言うまでもないだろう。}
こうした紆余曲折を経たとしても、生まれながらにしての土地を離れる……と言う事はやはり―――
「ラ・ゼッタよ、もうお前も子供ではないのだからな、この方々の好き指標をなるよう振舞うのだぞ。」
「判っておりまする母上。 それで母上は……」
「私は、ついては行かない。 ラ・ゼッタ、これからはお前のその足で大地を捉え、その歩みを進めるのだ。」
「は、母上ぇ~~~。」
「皆皆様にもよろしくお願いします。 どうか我が子を……次代の
「それは判っています、プ・レイズ様。 いま私達がやらなければいけない事……それは私自身が良く判っている事ですから。」
愛すべき肉親と一時的ながら離れなければならない―――リルフィも一介の冒険者となるべく母の下から飛び立った時、
しかしそうしたモノを振り払い、大きな空の下、大いなる大地に自由を求めたのは彼女の内に流れる“血”がそうしたから……
500年以上も前―――“鳥籠”のような城から飛び立った一羽の
それはその“血”がそうさせたから―――その彼女にも、同じ血が流れているから。
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