先輩
大学八年生の先輩の家にたどり着いた頃にはエチゾラムとアルコールがすっかり回っていて、僕は正気を取り戻していた。この人はチャイムを押しても決して出てこない。ドアをノックして叫ぶ。
「入れてくださいよー。何してるか言いますよー」
重たそうに動いていると思われる物音とともに扉が開く。
「お前、人聞きの悪いことを言うな。いいから入れ」
先輩は僕の腕を引き、リビングに連れて行った。二重になっている鍵をかけて。
「またクサですか?」
クサ。大麻のことだ。
「お前もやるか?音が光に見える」
「酒だけでいいですよ。たまに幻覚も見てるようですし」
先輩は煙草に火を着けると、僕にも一本差し出した。
「何しに来たんだ?」
「酒代ください」
「一昨日貸しただろう?」
「今朝女が寝てたから、そいつひっかけるのに遣ったんでしょう」
先輩はため息をつきながら僕に一万円札を差し出した。
「何でそんなに金があるんですか?」
「農業だよ」
僕は納得した。先輩の部屋の一室には一面の農園がある。そして時折、チンピラが出入りしている。なんて大学生なんだろうか。肝硬変の僕よりたちが悪い。そうは思いながらも、大地の恵みに感謝しながら三本のジャックダニエルを買って家に帰った。
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