第6話 突入!④
残りの敵も、机やカウンターテーブルに身を潜めているようだった。戦意があるかも怪しい。
「これなら、今のうちに進めるんじゃ――」
そう言いながら、目指す扉を見て言葉を詰まらせた。
「随分と派手に楽しんでるじゃない」
「勝手な真似は、迷惑極まりないのだが……」
現れたのは、シェミーとゴウだった。あたし達を襲ったバイオソルジャーだ。
「手応えがない奴らばかりで、少々退屈していたんだ。手ごろな相手が来てくれて嬉しいよ」
挑発するように、カレンさんはニヤリと笑ってみせる。しかし、シェミーは鼻で笑うだけだった。
「今相手にしてたのは、ロケットに乗り込めなかった落ちこぼれ連中よ。この程度の相手に調子に乗るようじゃ、まだまだって感じね。お嬢ちゃん」
そんな……。今まで戦っていたバイオソルジャーは、作戦参加に選ばれなかった者達だったなんて。
「じゃあなんだい。君達二人も、落ちこぼれって事かい?」
「残念だが、違う。自分達の部隊『テトラポット』は、バイオソルジャーの先行量産の試験タイプだ。少数精鋭で、実験データを収集している。他とは違う、規格外のオリジナルだ」
「そういう事。だから、わたくし達はお偉いさん直属の別部隊なのよ」
作戦を行う部隊とは、別の指令系統にあるという事だろうか。少なくとも、テトラポットと呼ばれるあの四人は、この基地内にいるという事。つまり。
「なら、デイビッド・スラングもここにいるんだね?」
カレンさんの宿敵であるスラングも、この基地にいる事になる。この復讐の機会、カレンさんなら逃すはずが無いだろう。
「そんなにデビィに会いたいの? とても情熱的な瞳ですこと。でも、それは叶わないわ。あなた達は、ここに骨を埋めることになるんだからね!」
シェミーとゴウは、持っていたマシンガンを構えた。カレンさんはすかさず横に飛ぶ。
次の瞬間、カレンさんが立っていた場所は穴だらけに変わった。
「いい動きをする。だが、いつまで逃げられるか?」
カレンさんの逃げた先に、ゴウは銃口を向ける。
「やらせない!」
あたしも素早くゴウに狙いを定める。そして、すぐさまトリガーを引く。銃弾は相手の左腕に命中した。
しかし、相手はバイオソルジャー。しかも、銃弾が効かなかった人物だ。この程度の攻撃で倒れることはなかった。それでも、あたしの攻撃で照準がずれたらしい。ゴウの放った銃弾は、カレンさんの足元から数十センチ離れた所に着弾した。
「あの娘、やるな」
「関心している場合じゃないでしょ!」
シェミーはイラっとしたらしく、ゴウの
勿論、ヒールで蹴られたところでバイオソルジャーのゴウに大した痛みはない。しかし、蹴られて嬉しいと思うのは一部の人間だけだ。ゴウも、その一部には含まれていないらしい。不満気にシェミーを睨みつける。
その様子に、カレンさんはニタニタと笑みを浮かべながら口を開いた。
「もしかして、そちらのおば様はいつもヒステリック気味で?」
「誰がおば様ですって⁉ この小娘探偵がっ!」
耳がキーンとするような高い声がフロアに響いた。カレンさんの挑発に、シェミーは乗ってしまったのだ。あまりの単純さに、ゴウも呆れた顔をしている。
「ゴウ、この小娘はわたくしが仕留めるわ! 絶対に手を出すんじゃないわよ!」
そう言うと、シェミーはカレンさんに向かって走り出した。しかも、マシンガンを撃ちながらだ。
普通の人間なら、反動で撃ちながら走るなんて不可能だろう。しかし、バイオソルジャーの驚異的な身体能力により、なんとかマシンガンを制御しながら走っている。恐ろしい話だ。
カレンさんもこれは予想だにしていなかったらしい。驚きの表情で、慌てて回避行動に入った。
「その口が二度と動かないようにしてあげるわ!」
キンキンと耳障りな声を上げながら、シェミーはマシンガンを撃ち続ける。しかし、流石に走りながらでは上手く狙えないようだ。あらぬ方向に銃弾が飛び交っている。
「ふん、好きにすればいい。なら自分は、あの娘を仕留める」
カレンさんとシェミーの戦闘ばかり見ていられない。ゴウが、今度はあたしに狙って銃口を向けてきた。
不味い、そう思ってすぐさまソファの影に隠れる。次の瞬間、けたたましい銃声が連続で鳴り響いた。
「なんとか反撃しないと……」
銃を構えようと視線を動かしたとき、ふとソファに目線が行った。
「ヒィッ⁉」
ソファを貫通し、目の前を銃弾が通り抜けた。あと数センチずれていたら、間違いなく銃弾はあたしの頭に命中していた。
「そんなところに隠れても、長くは持たないぞ」
こちらの様子など手に取るようにわかるのか、ゴウは得意気にそう言う。
確かに、このまま隠れてもいつかは銃弾が命中してしまう。でも、この状況からどうやって脱出すればいいのだろう。
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