76ページ目.合格の守り人
年が明け冬休みも終わり、高校生活もあと少し。
その前に3学期が始まった初日、とりあえず漫画部のメンバーで集合した。
そして今日までの漫画の売れ行き報告をみんなにすることにした。
「……人気、薄いですね」
次期部長の
「っていうか、一人しかダウンロードしてないじゃねーか。せっかく苦労して描いたのに全然報われてない」
オレと一緒に卒業する
「みなさん、頑張ったのに」
ふわりちゃんも残念そうだ。
「ま。まあ、落ち込むのは待ってくれ。実は朗報もあって……」
オレは沈みゆくみんなの気持ちを止める。
「あの、ライバー部の阿舞野さんがさ、入試が終わった後の配信でオレ達の漫画を紹介してくれるんだって。そうしたら、たぶん売り上げも上がるとは思う」
オレはメンバーに伝えた。
「えっ!? 年末のライバーのイベントで優勝して噂になってる阿舞野先輩が!? いまや有名なインフルエンサーじゃないですか!」
美南美が目を丸くする。
「阿舞野さんって由良と同じクラスの、あの阿舞野さんだろ!? 学校で1位2位を争う可愛さって言われてる彼女が宣伝してくれるなら、確かに売れそうだな!」
嵯峨はひとりガッツポーズをした。
阿舞野さんの影響力は大きいようで、みんな少しは安心してくれたようだ。
とりあえず今日、集まった目的は果たせた。
漫画部のメンバーに用があったのはそれだけなので今日は短時間で解散し、オレは受験勉強の追い込みをすべく早く家へ帰ろうとエントランスへと向かった。
廊下を急いでいると「
この声は……、またふわりちゃんだ。
残念ながらまだふわりちゃんにクリスマスプレゼントのお返しをできる金銭状態ではない。
なんとか謝って、もうちょっと先延ばししてもらおう。
ふわりちゃんがオレに追いついたところで「ゴメン!」と、オレは謝罪から切り出した。
ふわりちゃんはキョトンとして首を傾げる。
「あの、もうちょっとクリスマスプレゼントのお返し待って。まだお金が無くて……。あの阿舞野さんが漫画を紹介して売れたら、そのお金で必ずお返しするから」
オレはふわりちゃんに両手を合わせて拝み倒した。
そんなオレを見て、ふわりちゃんはクスッと笑った。
「先輩、別に良いですよ、お返しなんて。そのことじゃないです」
そう言って、彼女は手を左右に振って否定した。
おや、プレゼントの要求じゃなかったか。
じゃあ、何の用だろう。
「あの、先輩に渡したいものがあって……」
そう言って、ふわりちゃんは鞄から何か取り出した。
「これは……」
オレはふわりちゃんから渡された物を見つめる。
「合格祈願のお守りです。受験、頑張ってください。先輩なら絶対合格できます!」
なんと、ふわりちゃんはわざわざオレのためにお守りを買いに行ってくれたようだ。
さすがのオレも嬉しさで胸が詰まる。
「ふわりちゃん……、ありがとう」
それ以外の余計な言葉は見つからなかった。
「あと、これも……」
ふわりちゃんはもう一つ同じお守りをオレに渡してきた。
「同じお守り……?」
「もう一つは阿舞野先輩に渡してください。応援してますって」
うう……、なんて良い子なんだ。
阿舞野さんの分まで、きちんと買ってくるなんて。
「ありがとう、ふわりちゃん。必ず阿舞野さんに渡しておくよ!」
オレがそう言うと、ふわりちゃんはニッコリ微笑んだ。
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