77ページ目.猛スピードで時は
少し立ち止まって欲しい。
そう願っても時間は猛スピードで走り去ってゆく。
今日は、とうとう
「ヤッバ! 今から超緊張してきたんですけど!」
オレは
二人の鞄にはふわりちゃんからもらったお守り。
「大丈夫だよ、ふわりちゃんも応援してくれてるし」
オレは阿舞野さんに言った。
だけど実は不安だ。
なんせ受験勉強に集中しなきゃいけない時期にバイトもしてたんだから。
でも生まれてから十八回繰り返してきた冬だけど、この冬がなんだか一番充実した冬だった。
「そうだよね! ふわりちゃんからお守りもらったし、ゆらっちと初詣行ってお願いしたし!」
そう言って笑う阿舞野さんからオレは告白を受けた。
やっぱり試験に合格できないようじゃ、自分の中で彼女の告白を受け入れる気になれない。
待てよ、両方落ちた場合は?
……その場合は付き合ってもいいか。
オレと阿舞野さん二人とも合格した場合は、余裕で付き合う決定。
オレが合格して阿舞野さんが落ちた場合も平気で付き合う。
オレが落ちて阿舞野さんが合格した場合、自分に自信を失くすので付き合わない。
二人仲良く落ちた場合は付き合う。
そう考えると阿舞野さんの付き合えないのは四分の一の確率だな。
「ゆらっち、さっきから無言で思い詰めたような顔して何考えてんの?」
阿舞野さんがオレの顔を覗き込んできた。
「いや、なんでもない、なんでもない!」
ハッと、我に返されたオレは思わず焦る。
小首を傾げた可愛い阿舞野さん。
そうか、この可愛い人が自分の初めての彼女になるのか。
これは四分の一なんて言ってられない。
何がなんでも誇れる彼氏にならなきゃ。
やがて、大学に着き、阿舞野さんとそれぞれの受験票に記されてある番号の教室へ向かった。
「あっ、アタシこの教室だ。じゃ、ゆらっち、いっちょやってやりますか! お互い頑張ろ!」
そう言って、阿舞野さんは腕まくりをしてガッツポーズを作り、オレにウインクした。
「うん!」
オレもガッツポーズをして返す。
いよいよ、オレ達の高校生活最後の試練が始まった。
◇ ◇ ◇
試験の日の晩。
阿舞野さんが久しぶりに配信をした。
『アタシももうすぐ
阿舞野さんが約束どおり、オレ達漫画部の漫画を紹介してくれた。
コメント欄は『面白そう!』『買う買う!』『うーめろの紹介なら読んでみるね!』と肯定的な意見が流れまくる。
うーん、やっぱりインフルエンサーのちからは凄い。
これだけ大勢の人に読むって言ってもらえるとやっぱり有難いな。
実際にどれだけの売上に繋がるかわからないけど、でも漫画を紹介してくれたことは、阿舞野さんの誠実さな人柄が伝わってきたようで嬉しかった。
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