53ページ目.文化祭か出し物
高校最後の文化祭、我がクラスも何をやるか話し合いになった。
中には行ったこともないくせにキャバクラとか言い出した猛者もいたが、単にクラスメイトにドン引きされただけで、笑いも起きず、彼は見事、自分の黒歴史に今日の発言を記す羽目になってしまった。
結局、みんなの話し合いの結果、メイドカフェに決まった。
メイド服はコスプレ用にすでに持ってる女子が用意してくれる分と、不足分はみんなでお金を出し合ってネットで何着か買うことにした。
オレはクラスの分に加えて、部長として漫画部の出し物の方も準備しなくてはならない。
漫画部はすでにラノベ部の部長、
ラノベ部の書いた短編ホラーに、我ら漫画部が絵を描いて、お客さんには順路に従って回ってもらい、最後に仕掛けをして驚かすという、ちょっとしたお化け屋敷みたいなものに決めた。
その為に今日からしばらくは、
「ふわりちゃん、うまっ!」
美南美が手を止め声を上げた。
オレもふわりちゃんの方へ目を向ける。
ふわりちゃんはゾンビとなったナースの絵を描いているが、確かにゾンビに迫力がある。
「いえ。そんなことないです」
ふわりちゃんは謙遜した。
「でも読んで想像だけでここまで描けないぜ?」
嵯峨も感心する。
「わたし、実はホラー映画が好きで、スプラッター系とかもよく観るので」
なるほど、確かに血の描写とかリアルだ。
とはいうものの高校の文化祭なので、あまりR18に引っかかるようなグロいものは先生からストップがかけられそうだ。
その辺はふわりちゃんにも注意してもらおう。
そんな感じで、その日も順調に部活が終わり、学園生活の一日を終えた。
美南美と嵯峨が帰った後、部室に施錠をしてから職員室に鍵を返却したオレが、エントランスで上履きから靴に履き替えていると、柱の陰からふわりちゃんが、物音立てず名前のとおりふわりと静かに現れた。
「あれ、ふわりちゃん、まだ残ってたんだ」
オレは言った。
「あ、はい……」
ふわりちゃんが何やら言いたそうにモジモジしている。
オレがその怪しげなふわりちゃんの動きを見て首を傾げていると、彼女が口を開いた。
「あの、先輩、少しだけ一緒に帰りませんか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます