14ページ目.文士道セブンティーン
「お茶もなにもだせませんが、ま、お座りください」
相変わらず、ツンとした感じの部長に促され、オレはパイプ椅子へと座る。
「わたし、執筆の続きをしたいので早く用件を済ませましょう」
室内ではオレに似た数人の隠キャ風の部員が無言でパソコンに向かい、ひたすら文字を打っていた。
「それでは、お願いします……」
身を縮ませながらオレは頭を下げる。
「まずはあなた方、漫画部の実力を見せてもらいましょうか」
部長は手を差し出す。
「は?」
「原稿ですよ、原稿。わたし、将来は小説家になりたく、部活動であっても真剣に創作に向きあってますので。つまり時間と精神を削って書いた小説を下手な絵で表現されたくない、ということです」
上から目線で高飛車な態度だが、まあ言っていることもわからないでもない。
オレはとりあえず鞄の中に入れてある自分の原稿を渡した。
部長様はつまらなそうな顔で受け取る。
彼女は脚を組んで怠そうにしばらく眺めていたが、徐々に姿勢が前のめりになってきた。
「う、上手い……」
部長様が呟く。
え? いま上手いって言った?
「お、面白い……」
またボソッと呟く。
まさか、今度は面白いって言ってくれた?
「なにか?」
オレは聞き返す。
部長様は暫く原稿を眺めた後、
「あっ、いえ。ま、とりあえず拝見させていただきました」
と言って、オレに原稿を突き返した。
「あのぅ、どうでした?」
オレは部長様に尋ねる。
「しかたありませんね。本来は余計な時間は無いのですが、こういった新しい取り組みは、わたしにとっても成長にもなりますし、お望み通りコラボさせていただきたいと思います」
部長様はコラボの件、了承してくれた。
よし、目的達成。
「それでは詳しい打ち合わせでもしましょうか。そう言えば、自己紹介がまだでしたね。わたし、2年2組の
彼女は眼鏡を指でクイッと上げて、頭を下げた。
「じゃあオレも改めて自己紹介を……。漫画部部長の
「それにしても微妙に変態的な漫画ですね」
部長にはっきりと変態的と言われてしまった。
「はい、すみません……」
オレは否定ができない。
「でもこういった官能的なものにチャレンジしてみるのも、私の創作の幅を広げるにも大事ですので。とりあえず条件とかありますか?」
オレは18禁の官能小説のように直接的な性交渉を表現するのではなく、青春の恥じらいがあってフェチズムを追求するようなものでお願いしたいと伝えた。
「まあ、わたし達高校生ですので、学校で表立って18禁の物を創作するわけにもいきませんしね。それではご依頼の件、とりあえず執筆してみます。出来たら連絡したいので、SNSの連絡先教えてください」
そう言ってくれた雨宮部長と、オレは連絡先を交換した。
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