13ページ目.怒りの部長

 放課後。


 オレの足はラノベ部へと向かっている。


 オレの漫画の続き、つまりこの後の展開を作ってもらうためだ。


 第一声はなんて言えば良いだろう? やっぱり相手に原作を頼むわけだから……。


「たのもー!」


 いや、だめだ、これじゃ。まるで道場破りだ。


「すみません、いまお時間よろしいでしょうか。わたくしこういう者でして。本日は御部にもお得な情報を持って参りまして……」


 これもだめだ。まるで怪しいセールスだ。それにオレは名刺を持ってない。


 そんな挨拶も定まらないうちに、ラノベ部の部室についてしまった。


 第一声も決めてないにもかかわらず、オレの手は自然と部室をノックする。


 返事がない。


 部員全員、留守かな?


 もう一度、ノックする。


 すると少し引き戸が開き、中からジトッとした目つきの背の低い眼鏡女子がこちらを覗いてきた。


 胸のリボンが青色なので、2年生だ。


「あっ、こんにちは。あのさ、部長いる?」


 オレはその子に尋ねた。


 その女子部員は「はぁ〜」とため息を吐くと、ヤレヤレといった感じで首をゆっくり左右に振った。


「わたしが部長ですが? まずはそちらから名乗ったらどうですか?」


 まるでゴミを見るような目つきだ。


「そうでしたか。それはすみません、ごめんなさい! オレ、漫画部の部長の由良命ゆらみことという者で、あの2年生なものですっかり先入観から、部長とは思わず……」


 2年生の衣川美南美きぬかわみなみを漫画部の部長にしようとした男がよく言うもんだと自分自身でも思った。


「年齢なんか関係ありません。優秀な者がリーダーになるのは当然のことですから。先輩は未だに年功序列にこだわってるのですか? 考えが古いですね」


 眼鏡の部長様はムッとした表情でオレに説教をする。


 しまったな、ラノベ部の部長を早々に怒らせてしまった。


「いやっ、そんなことは……。二年生でも立派なことだと思います……」


 まるで相手の方が先輩みたいな感じだ。


 いや、お願いに来てる立場だから、この方が良いかな?


「それで、ご用件はなんですか? わたし執筆中で忙しいのですが」


「あのお願いがあってきたんですけど、その良かったら漫画部とコラボしてもらえないかと……」


 オレは頭を下げる。


「コラボ……ですか。さしずめ自分達ではストーリーが思い浮かばないから、うちに頼もうという魂胆でしょう。安易ですね」


 眼鏡っ子はまたため息を吐き、頭を左右に振る。


 全て見透かされているようだ。


「はい……、仰せの通りで……」


 オレの身が縮む。


「ま、一応先輩のお願いですし、とりあえず、中にお入りください」


 ツンとした態度の部長様はオレを部室の中へと招き入れてくれた。


 とりあえず、入り口で追い返されなくてよかった。

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