12ページ目.欠陥アリ
「昨日、話したやつ、いつやる?」
阿舞野さんはニヤつきながらオレに話しかけてきた。
「来週の月曜に体育の授業あるからその時なら……」
オレは答える。
「男子の体操服着て体育の授業にでるなんて、なんかドキドキしない? これってさ、相手の体操服に汗が染み込んじゃうってことだよね? キャー、超恥ずいんですけど!」
阿舞野さんはひとりキャピキャピしていた。
もしかして彼女はオレの漫画のフェチプレイにハマってしまったとか……??
それとも阿舞野さんの中に眠っていた変態性をオレが呼び起こしてしまったのだろうか??
「でもゆらっちの体操服はアタシ着れるけど、アタシの体操服はゆらっち着れなくない? サイズが小さいだろうしなぁ」
……しまった!
そうか、オレの漫画には欠陥があった。
確かに男子の体操服は女子は着れるだろうけど、女子の体操服を男子が着ようとしたら、小さくて着れないか、あるいはピチピチでかなり窮屈になりそうだ。
体を動かすどころではない。
「……ごめん。そこまで考えてなかった」
オレは阿舞野さんに詫びた。
「へっ? 別に謝んなくてもいいよ。ってかゆらっちウケる! そんな漫画のネタにマジになんなくてもよくない?」
阿舞野さんはケラケラ笑った。
「でも、漫画通りの二人の体操服交換ができないわけだし、これ止めようか?」
「えー、なんでなんで? アタシがゆらっちの体操服着るのはできるじゃん。月曜は体操服二着持ってきなよ」
「それだけでいいの?」
「その代わりゆらっちには別のことやってもらうから」
そう言って阿舞野さんはニカッと笑う。
何か企んでそうだ。
「……う、うん」
それでもオレは自分の詰めの甘さが後ろめたくて了承した。
「ところでさ、あの漫画のキスシーン、実際に体験したんで描き直すんでしょ? できたら読ませてよ」
「それは、もちろん……」
オレと阿舞野さんは二人で教室に入った。
みんなの視線を感じる。
隠キャのオレと人気者の阿舞野さん。
この組み合わせが一緒だったことにみんな驚いているように見えた。
阿舞野さんはほかの友達に朝の挨拶をしている。
オレは一人、窓際の席に無言で座る。
窓から校舎の下を見ると、登校中の生徒がぞろぞろと蟻のように動いている。
それにしても作品を楽しみにしてくれてる阿舞野さんのためにも、あの漫画は完結させたいな。
でももうこの先の話のストックが俺の中に無いのも事実。
だから放課後、ラノベ部にコラボの話を持ちかけるつもりだ。
阿舞野さんの期待に応えるだけでなく、漫画部の部長としても。
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