6ページ目.いま、家にゆきます
スマホを見ると、SNSにメッセージが届いている。
珍しいこともあるものだ。
なぜならオレは友達が少ないので、滅多にメッセージが来ることはない。
差出人は……、
《部活終わるのちょっと遅くなりそう》
《ごめん》
《校門とこで待ってて!》
三分割されてメッセージが届いていた。
そうだ。確か今日、阿舞野さんに絵を描くテクニックを教える約束してたんだ。
まさかあの話、からかってるんじゃなくて本気だったのか。
危うく、何も考えずにふだん通りに一人で帰るところだった。
約束の校門のところで足を止めスマホを眺めていたとき、背後から「ゆらっち〜!」って、オレを呼ぶ声が聞こえた。
振り向くと、ポニーテールをなびかせて走ってくる阿舞野さんの姿があった。
「ごめん、待たせた〜?」
阿舞野さんは息を切らせながら言った。
「いや、ちょうどオレも来たとこだから」
「マジ? それならよかったけど。自分から誘っといて遅刻なんて、シャレになんないし」
阿舞野さんは安心したような顔を見せた。
阿舞野さんが人気なのは、外見が良いだけじゃなく、こうやって気遣いできる性格だからって言うのもあるかも。
「ところで、どこで絵を教えよう? ファミレスとか? それに教える道具も持ってきてないし……」
オレは訊く。
突然のことだった為に、阿舞野さんの分の道具を用意していない。
自宅まで取りに行けばあるけど……。
それに、今日オレはあまりお金を持って来ていなかった。
漫画を描く為の費用にお小遣いは使いたいので、無駄遣いはしたくないのだ。
「ファミレスかー。でもいまアタシお金無いんだよねー」
「オレも」
二人の意見が一致する。
「それじゃあさ、ゆらっちの家はどう? ゆらっちがOKなら、道具もあるしお金もかからないし、そこが一番良いと思うけど?」
えっ!?
そんなに親しくなったわけでもない男子の家にいきなり来るの!?
これが阿舞野さんの世界ではあたりまえのことなんだろうか??
いや、きっと阿舞野さんが変わってるだけだ……と思う。
「か、母さんがいるけど……だ、大丈夫?」
なんかよくわからないことを聞いてしまう。
「それはアタシの質問でしょ〜? ゆらっちこそお母さんは何も言わない?」
「う、うん」
「よーし、それじゃ、レッツゴー!」
ポンと阿舞野さんに背中を叩かれ、オレは彼女と二人で自宅へと向かうことになった。
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